カスタマーサクセスとは?意味・KPI・カスタマーサポートとの違いを解説

カスタマーサクセスの記事
SaaSやサブスクリプションが増えるにつれて、カスタマーサクセスが注目されるようになりました。カスタマーサクセスは「顧客の成功」と直訳されます。カスタマーサクセスとは何か?設定すべきKPIとは?カスタマーサポートとの違いとは?といった基本を解説します。
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カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセスは直訳すれば「顧客の成功」です。SaaS(Software as a Service)やサブスクリプションといった定期収益ビジネスが増えることで、カスタマーサクセスの重要性が高まっています。カスタマーサクセスの意味やSaaSとの関わりなどについて確認します。

カスタマーサクセスの意味と事例

カスタマーサクセスとは顧客の成功を目指して能動的に働きかけることを意味します。SaaSやサブスクリプションのような定期収益ビジネスでは、顧客は商品を買わずに利用します。

例えばApple Musicは、月にいくらかを払って、7,000万曲の音楽を聴き放題になるストリーミングサービスです。CDと違って音楽は手元に残らず、聴き放題の音楽を利用する権利を得られる仕組みです。Appleは消費者に対して、Apple Musicを利用し続けてもらうために、魅力的な曲を揃え、スマホでの使いやすさなど、顧客の満足度を高めるべくあらゆる施策を打っていきます。もし満足しないと顧客はApple Musicを解約してしまうのです。

つまりSaaSやサブスクリプションでは、主導権が顧客にあるわけです。商品を利用し続けるか否かは顧客に委ねられているからです。『カスタマーサクセス』(英治出版)では、定期収益ビジネスで顧客が取る行動を次の2つに分類しています。

1.あなたの顧客を続ける
2.あなたからもっとモノを買う

もっとも、企業が何らの手を打たずに、顧客が利用し続けてくれるわけでも、もっとモノを買ってくれるわけでもありません。カスタマーサクセスを行い、顧客が「使い続けたい」と思う商品やサービスを作っていくことが重要になるのです。もし「使い続けたくない」と顧客が感じたら、解約されてしまうでしょう。解約は、定期収益ビジネスにおいて最も避けたい顧客行動です。

カスタマーサクセス―サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」

心理ロイヤリティの重要性とカスタマーサクセス

SaaSやサブスクリプションといったビジネスにおいては、顧客のロイヤリティに注目することが大切です。ロイヤリティは、企業や商品に対する愛着という意味です。ロイヤリティは行動ロイヤリティと心理ロイヤリティの2つに分けられ、行動ロイヤリティは「商品を実際に購入すること」、心理ロイヤリティは「企業や商品に対して愛着を持っていること」という意味で使われています。

2つのロイヤリティの意味について、具体例を使って説明します。洋服を買おうと思ったとき「最寄り駅にA社があるので買った」場合は行動ロイヤリティが高いといいます。この場合、A社の代わりにB社があっても顧客は洋服を買うでしょう。A社に対して愛着があるわけではないからですね。カスタマーサクセスでは心理ロイヤリティが持つ愛着が重要なのです。

行動ロイヤリティも心理ロイヤリティも高いときは、A社が最寄り駅であろうとなかろうと、顧客はA社からしか洋服を買わなくなるのです。カスタマーサクセスで心理ロイヤリティが重視されるのも、愛着を抱いた顧客に買い続けて欲しいからです。定期収益ビジネスでは顧客はいつでも解約できます。心理ロイヤリティを高めて、購入してもらうカスタマーサクセスが必要になるのです。

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カスタマーサクセスが注目された背景

カスタマーサクセスの意味や心理ロイヤリティの重要性が分かってきました。続いてカスタマーサクセスが注目された背景について確認していきます。

顧客のチャーン(解約)を防ぎたい

定期収益ビジネスでは、顧客はいつでも解約できます。カスタマーサクセスでは解約のことをチャーンと呼びます。動画配信サービスを利用していた顧客が「思ったほど面白いコンテンツがないな」と思ったら解約してしまうのです。ですから、企業が顧客の成功を目指して行動し(カスタマーサクセス)、チャーンを防ぐことが重要な意味を持つわけですね。

LTV(生涯顧客価値)が重視された

SaaSやサブスクリプションでは LTV(生涯顧客価値)を重視する必要があります。LTVとはLife Time Valueの略で、顧客が企業と契約している間に使った金額の合計です。顧客が自社の動画配信サービスを利用し続けてくれれば、企業の利益に繋がりますよね。LTVを高めるために、顧客が利用し続けるカスタマーサクセスが注目されていきました。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスとよく似た言葉にカスタマーサポートがあります。両者の違いを確認します。

目的の違い

カスタマーサクセスとカスタマーサポートでは目的が違います。カスタマーサポートには顧客満足度を向上させるという目的があります。カスタマーサポートでは、顧客から問い合わせがあったとき、操作方法や不具合などの問題に対処することで顧客満足度を高めます。企業の視点で考えると、顧客から問い合わせがあるのを企業は待っているのでカスタマーサポートは受動的です。

一方、カスタマーサクセスの目的は、顧客の成功のために行動することです。定期収益ビジネスではいつでも顧客が解約できるので、企業が能動的に動いて顧客が「利用し続けたい」「もっと別の商品も利用したい」と思わせることが大切です。企業視点で考えると、カスタマーサクセスは能動的です。

指標の違い

カスタマーサクセスとカスタマーサポートでは指標にも違いがあります。カスタマーサポートの指標は対応回数、対応速度です。顧客からの問い合わせにどれだけの数で対応したか、早く対応できたかが問われます。

一方、カスタマーサクセスの指標にはチャーンレート、アップセル、クロスセル率などがあります。顧客に解約させないか、アップセル・クロスセルによりLTVを高めたかが問われます。

カスタマーサクセスで設定すべきKPI

カスタマーサクセスの指標として、チャーンレート、アップセル・クロスセル率、オンボーディング完了率などがあります。カスタマーサクセスのKPIとしてはこれらを設定することになります。

チャーンレート

チャーンレートは解約率のことです。顧客がいつでも解約できるSaaSやサブスクリプションにおいては、いかに解約させないかが重要です。チャーンレートにはカスタマーチャーンレートとレベニューチャーンレートの2つがあります。

・カスタマーチャーンレート:顧客数で考える解約率
・レベニューチャーンレート:収益で考える解約率

カスタマーチャーンレートの計算式は「一定期間に解約した顧客数÷期間前の顧客数×100」です。また、レベニューチャーンレートの計算式は「(サービス単価×解約数)÷売上×100」となります。カスタマーサクセスのKPIでは、なぜ2つのチャーンレートが必要なのでしょうか?具体例を元に考えます。

自動車のサブスクリプションサービス手掛けるT社は、30,000円/月と50,000円/月の2つでサービスを展開していました。単純化するために、顧客数は2人で、30,000円を利用している人と、50,000円を利用している人が1人ずついるとします。売上は80,000円です。あるとき、50,000円を利用している人が解約してしまいました。チャーンレートはどのようになるでしょうか?

カスタマーチャーンレートは1÷2×100=50%です。一方、レベニューチャーンレートは(50,000×1)÷80,000×100=62.5%となります。解約したという事実だけを見ると単純ですが、カスタマーチャーンレートとレベニューチャーンレートを比較すると解約率が大きく違うことが分かると思います。顧客の解約率だけを見るか、収益と解約率の関わりを見るかで、チャーンレートが2つある意味が出てくるのです。

アップセル、クロスセル率

高価な商品への乗り換えをアップセル、別の商品を追加で購入することをクロスセルといいます。いずれもLTV(生涯顧客価値)を高めるのに重要な指標です。適切なタイミングで顧客にアップセルやクロスセルを提案することで、企業の収益を高めることができるのです。ただし、顧客が自社の商品に魅力を感じ満足していないときに提案するとチャーンを高めることに繋がるので要注意です。

オンボーディング完了率

オンボーディングとは、商品を利用した顧客を軌道に乗せることをいいます。オンボーディング完了率とは、オンボーディングを完了した顧客がどの程度かを示すものです。商品を利用したばかりの顧客は、操作ややり方に慣れておらず、商品の魅力を感じるまでに時間がかかります。商品が軌道に乗るまでに手間取ってしまうと顧客が解約してしまうので、オンボーディング完了率はカスタマーサクセスのKPIとなっているのです。

まとめ

カスタマーサクセスは、SaaSやサブスクリプションなどの定期収益ビジネスにおいて、顧客に対する重要なアプローチとなりました。顧客はいつでも解約できるので、チャーン(解約)を防ぎ、LTV(生涯顧客価値)を高めるべく、企業はカスタマーサクセスを活用する必要があります。名称が似ているカスタマーサポートとの違いも押さえておきましょう。

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