子ども・子育て拠出金は、かつて児童手当拠出金と呼ばれていた税金です。
子育て支援事業や児童手当等の財源として使われる貴重な税金であり、年々引き上がっているので、ニュースや報道で耳にした人もいると思います。
この記事では、子ども・子育て拠出金の負担者、子ども・子育て拠出金の仕組み、拠出金率、計算方法などについて解説します。
子ども・子育て拠出金とは?
子ども・子育て拠出金の意味や拠出金率について解説します。
旧名称は児童手当拠出金
子ども・子育て拠出金は、子育て支援事業や児童手当に充てられる税金のことをいいます。
子ども・子育て拠出金の旧名称は、児童手当拠出金。2015年に現在の名称に変わっています。
社会保険料ではなく税金である
子ども・子育て拠出金を負担するのは、企業と個人事業主です。
名前から社会保障や特別手当のように勘違いしてしまう人がいますが、健康保険料や厚生年金保険料と共に徴収される税金の一種です。
拠出金率上限の引き上げ
子ども・子育て拠出金の拠出金率は、年々引き上げられています。
名称が変わった2015年の拠出金率は0.15%でしたが、2020年度には、0.36%にまで引き上げられています。
子ども・子育て拠出金の基本的な仕組み
子ども・子育て拠出金の基本的な仕組みを解説します。
まず、子ども・子育て拠出金は毎月徴収されます。社会保険料ではないため、従業員の給与天引きは不要で、企業が拠出金の全額を負担して厚生年金保険料などと共に納めます。
拠出金が徴収される企業とは
子ども・子育て拠出金を負担するのは企業と説明しましたが、従業員に子どもがいない企業にも負担があるのでしょうか?
実は、子ども・子育て拠出金の負担者は、子どもがいる・いないにかかわらず、厚生年金に加入する従業員がいれば、全企業が徴収されるものです。
国は、子ども・子育て拠出金の負担にあたって、企業の従業員に子どもがいるかいないかを問わずに一律的に徴収するのです。
拠出金はどのように使われる?
子ども・子育て拠出金はどんなことに使われているのでしょうか?
子ども・子育て拠出金の使用先として最も代表的なものが児童手当です。
児童手当とは、0歳から中学生までの子どもを養育している人に、国から支給される手当のことです。
毎月の支給額は年齢層によって以下の通りになります。
- 3歳未満:15,000円
- 3歳以上小学校卒業まで:10,000円(※第3子以降は15,000円)
- 中学生:10,000円
ただし養育者の所得が所得制限限度額以上の場合は、年齢層にかかわらず一律に5,000円が支給されます。児童手当の支給時期は、2月・6月・10月に前月分までが支給されます。
子どもを養育している人が支給される児童手当の財源に使われていることを知ると、子ども・子育て拠出金が身近に感じられますよね。
子ども・子育て拠出金の拠出金率とは?
子ども・子育て拠出金の拠出金率は、企業の拠出額を算出するために必要な計算です。
従業員の標準報酬月額に拠出金率をかけることで、拠出額が出てくるのです。
なお、子ども・子育て拠出金の拠出金率は、国が決めたあとに日本年金機構が公表する仕組みになっています。
拠出金率の推移
子ども・子育て拠出金の拠出金率は年々、引き上げられています。
拠出金率の推移を2012年から見てみると、次の通りになっています。
- 2012~2015年度:0.15%
- 2016年度:0.2%
- 2017年度:0.23%
- 2018年度:0.29%
- 2019年度:0.34%
- 2020年度:0.36%
これからも引き上げられる可能性がある
子ども支援事業や児童手当のニーズが高まるにつれて、毎年のように上がる子ども・子育て拠出金の拠出金率。
拠出金率の上限は0.45%とされていますので、2021年度以降も拠出金率が引き上げられる可能性はあります。
また、今後の法律改定によっては、拠出金率の上限が引き上げられる可能性もあります。
子ども・子育て拠出金の計算方法
子ども・子育て拠出金の計算方法について、具体例を用いて解説しましょう。
計算方法
子ども・子育て拠出金の計算方法は、従業員の標準報酬月額×子ども・子育て拠出金の拠出金率によって表されます。
子ども・子育て拠出金の計算で使う従業員の標準報酬月額とは、全従業員の標準報酬月額の平均値ではありません。個々の従業員の標準報酬月額に基づくものです。
個々の従業員の標準報酬月額の求め方を見てみましょう。以下の図表をご参照下さい。給料が190,000~290,000円の従業員の例を抜粋したものです。
- 報酬月額190,000~210,000円→標準報酬月額200,000円
- 報酬月額210,000 〜 230,000円 →標準報酬月額220,000円
- 報酬月額230,000 〜 250,000円 →標準報酬月額240,000円
- 報酬月額250,000 〜 270,000円 →標準報酬月額260,000円
- 報酬月額270,000 ~ 290,000円 →標準報酬月額280,000円
報酬月額とは毎月の給料のことで、毎月の給料がどれくらいの範囲であるかによって標準報酬月額が定められます。
つまり毎月の給料が275,000円であれば、その従業員の標準報酬月額は280,000円となります。
続いて、子ども・子育て拠出金の計算方法の具体例を見てみましょう。
具体例による計算方法
毎月の給料が275,000円の従業員Xの計算方法を見ていきます。
従業員の標準報酬月額は280,000円ということが分かっていますので、「従業員の標準報酬月額×子ども・子育て拠出金の拠出金率」にあてはめて計算します。
2020年度の拠出金率は0.36%ですから、「280,000×0.0036=1,008円」ということになります。
その他の従業員の例も確認します。
まずは従業員Yさんの拠出金の計算です。
- 従業員Y
- 毎月の給料:510,000円
- 標準報酬月額:500,000円
- 拠出金:1,800円
従業員Zさんの拠出金を計算します。
- 従業員Z
- 毎月の給料:200,000円
- 標準報酬月額:200,000円
- 拠出金:720円
従業員X、Y、Zさんの3人の拠出金は1,008+1,800+720=3,528円となります。
他の従業員の拠出金も個人ごとに算出して、企業が負担する拠出金の総額を求めて納めることになります。
繰り返しになりますが、子ども・子育て拠出金には従業員の負担はありませんので、企業が3,528円を全額負担することになります。
まとめ
子ども・子育て拠出金は、児童手当や子育て支援事業の財源のための税金です。
拠出金は厚生年金の加入者がいる企業が全額負担し、従業員の負担はありません。
子ども・子育て拠出金の拠出金率は年々上がっており、2020年度は0.36%でした。2021年以降も拠出金率が引き上がる可能性はあり、上限が0.45%といわれています。
子ども・子育て拠出金の計算方法は、個々の従業員の標準報酬月額に拠出金率を乗じることで求められます。全従業員の標準報酬月額の平均値ではないので、注意が必要です。