カスタマー・エクスペリエンスとは?
カスタマー・エクスペリエンスは、顧客が体験する価値を表すビジネス用語。金銭や物理的な価値に留まらず、心理的・感覚的な体験価値を重視しています。例えば、長居できるカフェに入ってスペシャリティコーヒーを飲むことは、おしゃれな空間をゆったりと味わい、洗練されたBGMを聞きながらコーヒーを飲めることによる心理的・感覚的な経験価値を得られます。
カスタマー・エクスペリエンスの重要性
カスタマー・エクスペリエンスの重要性が高まる理由は、製品・サービスの差別化が難しくなったことにより、顧客が製品・サービスの機能性だけでなく消費したことによる体験を重視するようになったためです。
カフェの例で言えば、コーヒーが顧客にとって妥当な価格であるだけでなく、コーヒーを飲む空間、コーヒーを提供するスタッフの対応、店の居心地の良さ等、コーヒーを消費することに伴うあらゆる体験を顧客が重視するようになったのですね。それゆえ、企業はカスタマー・エクスペリエンスに対応する必要が出てきているのです。
カスタマー・エクスペリエンスが求められる背景
カスタマー・エクスペリエンスが求められる背景としては、以下の2つがあります。
・顧客の情報発信力が高まったこと
製品・サービスの差別化の困難さは、企業が競争優位性を確保することが難しくなったことも意味します。機能性を向上させたところで、直ぐに他社に模倣されてしまうでしょう。しかしカスタマー・エクスペリエンスはトータル的な顧客経験価値ですから、企業の独自性を出すことができ、企業が競争優位性を確保することに繋がるのです。独自のカスタマー・エクスペリエンスを提供することができれば、ブランド戦略にも役立ちます。
もう1つは顧客の情報発信力の向上が挙げられます。顧客がTwitterで「あのお店、良いね」と発信することによって優良顧客やリピーターを獲得することができるようになります。
カスタマー・エクスペリエンス活用のメリット
カスタマー・エクスペリエンス活用のメリットを4点、紹介します。
顧客満足度が高まる
カスタマー・エクスペリエンスを活用すれば、顧客満足度が高まります。カスタマー・エクスペリエンスを活用している企業の製品・サービスは、機能性だけでなく体験を重視していますから、消費することで心理的・感覚的な喜びを伴うため、顧客満足度の向上に繋がるのです。顧客満足度はアンケートや顧客満足度調査によって把握することが可能です。
顧客ロイヤリティを高められる
カスタマー・エクスペリエンスの活用は、顧客ロイヤリティの向上に繋がります。ロイヤリティとは信頼を意味する言葉。顧客が企業を信頼することで顧客ロイヤリティが向上し、企業の製品・サービスを継続的に消費してくれるようになります。顧客ロイヤリティは、製品・サービスの質が良いだけでは高まりません。例えば「メールでやり取りした時の対応が良かった」「カスタマーセンターにクレームを言った時の応対が誠実だった」ということも含めて向上させることができるのです。
市場価値を高められる
カスタマー・エクスペリエンスを活用していけば、市場価値が高まります。類似の製品・サービスがあった時に自社を選んでもらえるメリットがあります。
口コミマーケティングがうまくいく
カスタマー・エクスペリエンスが高い製品・サービスに対して、顧客は口コミで良さをアピールしてくれます。特にインフルエンサーのような顧客の消費に影響を与える人が口コミをしてくれると、自社の製品・サービスの需要が一気に高まります。
カスタマー・エクスペリエンスの5分類
カスタマー・エクスペリエンスには5分類があると言われています。
創造的・認知的価値
創造的・認知的価値は、顧客の創造力や知的好奇心に訴える価値を言います。先端的な技術を使った製品を見ると、顧客はワクワクし、「この製品を使うとどんなことができるだろう?」と好奇心をくすぐられます。
情緒的価値
情緒的価値は、接客を通じて顧客の情緒に訴える価値を言います。接客によって顧客におもてなしをする行為によって、顧客は「この店は良い店だ。次も来てみたい」と思えるようになるのです。
感覚的価値
感覚的価値は、顧客の感覚に訴える価値を言います。カフェの例で言えば、居心地の良いソファに座りBGMを聞くことで感覚的価値が向上します。
ライフスタイル的経験価値
ライフスタイル的経験価値は、日常生活の中で新規性や効率性を経験することができる価値を言います。例えば、スマートフォンは多様なアプリによって消費者の利便性を高めました。
帰属意識的価値
帰属意識的価値は、帰属意識による価値を言います。ファンクラブへの加入が代表例です。
カスタマー・エクスペリエンスを高めるための方法
カスタマー・エクスペリエンスの重要性やメリットを見てきましたので、カスタマー・エクスペリエンスを高めるための方法を見ていきたいと思います。
現状分析の実施
カスタマー・エクスペリエンスを高めるための第一歩として、現状分析の実施があります。これは、消費者が自社の製品・サービスに触れる機会を洗い出して、現状の課題を抽出することです。
数値目標の設定
数値目標の設定は、業績の指標とカスタマー・エクスペリエンスの指標に数値目標を設定することです。カスタマー・エクスペリエンスの目的は業績拡大にあります。従って、カスタマー・エクスペリエンスと業績の指標を連動させることで、業績拡大を目指せるのです。カスタマー・エクスペリエンスをどれくらい向上させるかが、指標となります。カスタマー・エクスペリエンスを向上させるためのKPIとしては、購入率(コンバージョン)・顧客生涯価値(LTV)・定着率(リテンションレート)等が挙げられます。
カスタマージャーニーマップの作成
カスタマージャーニーマップは、顧客の行動特性を可視化したものです。カスタマー・エクスペリエンスは顧客の心理的・感覚的な体験価値のことですので、顧客が製品・サービスを購入する前後に、どのような体験をしてもらうかを決定する時の重要な材料となり得ます。既に現状分析をしていますから、カスタマージャーニーマップにより顧客体験のどの部分に課題があり、改善していけるか、手を打っていくことができるのです。
仮説検証と軌道修正
カスタマージャーニーマップの作成が終わったら、仮説検証を繰り返してカスタマー・エクスペリエンスの向上を目指していきましょう。仮説検証を繰り返す中で、修正すべき施策があれば軌道修正しカスタマー・エクスペリエンスの向上を目指すことを目標に、柔軟に対応して下さい。
カスタマー・エクスペリエンスの企業事例
カスタマー・エクスペリエンスに成功している企業はどんな取り組みをしているのでしょうか?事例を紹介していきます。
無印良品
無印良品は、家具や雑貨を販売している企業です。シンプルで落ち着いた店内で商品を購入できる空間を形成し、単にモノを買うだけではなく、リラックスした体験を提供しています。また、同社のカスタマー・エクスペリエンスは、顧客が商品を検討し、購入するまでの一連の流れを構築することで商品の価値を高めることです。顧客からの要望を吸い上げて商品を開発。それをモニターに使用させて意見をもらい顧客体験価値を高めているのです。
スターバックスコーヒージャパン
スターバックスコーヒージャパンは、多様で美味しく飲めるコーヒーを落ち着いていて居心地の良い空間で味わえることでカスタマー・エクスペリエンスを高めています。スタッフの丁寧な接客もあり、情緒的価値や感覚的価値を高めています。
ディレクTV
ディレクTV は、アメリカの衛星放送サービス企業です。視聴者の好みに合った番組を提供するのはもちろんのこと、クーポン等のお得情報が視聴者に確実に届くような仕組みを築き、カスタマー・エクスペリエンスを高めています。
まとめ
カスタマー・エクスペリエンスは、製品・サービスの差別化ができない現在のマーケティングにおいて、顧客の心理的・感覚的側面に訴求する顧客体験価値を高めるための施策に活用することができます。SNSやTwitterにより顧客の情報発信力が高まる中、企業が競争優位性を保つためには、カスタマー・エクスペリエンスは企業にとって重要な指標となります。