組織開発とは?目的・具体的な進め方・企業事例・おすすめ本を紹介

組織開発の記事
「社員同士のコミュニケーションが少ない」「社員の当事者意識が足りない」といった問題が起こった時、会社が組織に介入して解決していくのが組織開発です。また、組織を良くしたい場合にも組織開発が使えます。組織開発の目的、具体的な進め方について解説します。
目次

組織開発とは?

組織開発とは、組織を活性化し、または組織の問題を解決するために、行動科学の知見を活用して組織に介入することを言います。行動科学とは、組織における人間の行動に関して、心理学・経営学・社会学等の領域にまたがるアプローチのことです。

組織開発の歴史

組織開発の歴史は集団精神療法から始まります。集団精神療法とは、集団の力を利用して集団やメンバーを治療することです。集団精神療法や行動科学等の基盤の上に、アメリカの心理学者クルト・レヴィンのTグループという組織開発手法が生まれたことで組織開発が誕生したのでした。その後、組織開発は発展を遂げ、現在では診断型組織開発と対話型組織開発の2つに分かれて研究が進められています。

組織開発はアメリカで誕生しアメリカで発展したものです。日本の組織開発では、QCサークルやKI活動、組織風土改革といった名称で実践されています。

組織開発の必要性

組織開発の必要性としては、「組織を活性化したい」「組織の問題に悩んでいる」経営者や人事部の悩みを解決する手段として組織開発の手法が役に立ちます。

人材開発との違い

組織開発と人材開発の違いはどこにあるでしょうか?組織開発が対象とするのは組織と個人ですが、人材開発の対象は個人です。また、組織開発ではメンバーとファシリテーターがいます。組織開発の中心はメンバーであり、ファシリテーターは前面に出過ぎずメンバーを導き、支援する役割に留まります。

人材開発では、教育に参加するメンバーと教育者がいます。教育者はメンバーに深く関わり、メンバーの教育効果が得られるように指導していきます。人材開発では研修の講師と受講者をイメージしてもらうと分かりやすいと思います。

厳密に言えば組織開発と人材開発の違いは区別されますが、実践では組織開発と人材開発は混在します。例えば、経営者の悩みが「社員同士のコミュニケーションが少ない」とします。社員のコミュニケーションを高めるために、組織風土を変えるためにどうしたら良いか?と社員同士で討論し合う組織開発のアプローチも考えられます。一方で、研修をしたり教育制度を変えたりする人材開発のアプローチも考えられるのです。

診断型組織開発

組織開発は診断型組織開発と対話型組織開発に分かれます。診断型組織開発とは、組織開発を行う際にメンバー間で目指すべき目標を合意します。その上でデータを分析し、分析結果を元に対話を重ねて活動していきます。

対話型組織開発

対話型組織開発とは、初めに、メンバー間で目指すべき目標を設定しません。対話を通じて目標を設定し、目指すべきビジョンを合意するのが対話型組織開発です。事例として、ワールドカフェ、オープンスペーステクノロジーがあります。

組織開発の目的

組織開発の目的とは、組織の活性化や問題解決のために行われます。詳しく説明します。

社員間のコミュニケーションを活性化させる

組織開発を行う目的として、社員間のコミュニケーションの活性化があります。組織開発では対話がメインとなります。普段、顔を突き合わせることがない社員が会社の問題について話し合うことで、自然と心が解放されコミュニケーションが活性化されていくのです。

組織風土を活性化させる

組織開発の目的には組織風土の活性化もあります。「会社を変えたい」という意識を持った社員が対話し合い、組織風土に影響を与えていくことで、当事者意識の高い組織風土に生まれ変わらせることもできます。

経営者や人事の意図する通りに組織をつくる

組織風土は経営者や人事の意図する通りに組織をつくるためにも有効です。組織開発はトップダウンで行われますが、メンバーが対話することで自立性を育むことが可能。やらされ感にさいなまれることなく、メンバーが主体的に組織開発に関われるので、経営者や人事が意図する通りに組織をつくれます。

組織開発の具体的な進め方

それでは、組織開発の具体的な進め方を見ていくことにしましょう。研究者の中でも組織開発の定義には議論が分かれていますが、リチャード・ベッカードの定義はよく知られています。ベッカードは診断型組織開発の研究者です。ベッカードの定義に基づき、具体的な進め方を解説します。

計画に基づき

組織開発によって何を目指していくのか目標を立てます。組織開発のプロジェクト内で目指すべき目標を合意します。そして組織開発をどのように進めていくのか、計画を立てます。

組織全体にかかわる努力であり

組織開発がうまくいくためには、初めから組織全体でやろうとせず組織全体にかかわるために努力するプロセスが重要。つまり1~2単位の小規模の組織で行うか、多くの組織から何人かを集めて組織開発を行うのか。組織開発では対話を通じて、組織の問題や組織活性化を考えていきます。少ない人数で対話することで組織開発のやり方が分かり、またやり方の改善点が見つかるため、徐々に組織全体へと展開していけるのです。

トップ主導でマネージされ

組織開発にはトップ(経営者)が介入することが不可欠。組織開発に対してトップがメッセージを発信することで、会社全体が組織開発に注目します。

組織の有効性・健康を高め

組織開発にトップが介入していると、参加メンバーのモチベーション向上に繋がります。組織開発の取り組みにトップの裏付けがあるので、メンバーは孤立感を持つことなく活動に自信を持つことができます。トップは組織開発に介入しているため、組織開発を通じた戦略も取りやすくなります。

行動科学の知識を活用して

組織開発の運用では行動科学の知見を活用していきます。行動科学は組織における人間の行動に対する総合的なアプローチ。目標を達成するために組織開発の進め方に行動科学の知見を取り入れるのです。

組織のいろんなプロセスにおける

組織開発を進めていく中で、うまくいく部分もあればうまくいかない時もあります。うまくいかない時はなぜうまくいかないのか分析することが必要です。時には目標の再設定が必要な場合もあります。

計画的介入・計画的ゆさぶり

組織開発では現状がどうなっているのかメンバー間で共有しておく必要があります。目標を再設定した場合は、共有しておかないと道筋が分からなくなります。

組織開発の企業事例

組織開発の企業事例を3社、紹介します。

ヤフー株式会社

ヤフーはトップダウン型の組織風土を変えたいと思っていました。そこでヤフーはプロジェクトチームを中心に組織開発に取り組みました。組織開発の目玉は1on1ミーティング。部下が目標を達成するために上司が支援する30分間のミーティングでした。1on1ミーティングの取り組みにより、上司・部下間のコミュニケーションが円滑になりました。

1on1ミーティングで縦の関係が活性化された一方で、横の関係が希薄化する問題も発生してきました。ヤフーはマネジャーやリーダーに組織開発の担当者を担ってもらい、各職場で組織開発が自律的にできるように変革しました。

味の素グループ

味の素はASV(Ajinomoto Group Shared Value)をグループ社員に理解し実践してもらうため、ASVワークショップという組織開発を行いました。ASVとは創業以来一貫した、事業を通じて社会価値と経済価値を共創する取り組みを意味します。2020年までに「グローバル食品企業トップ10クラス入りを実現する」ことを目標にするため、グループ社員に対してASVの理解と実践が不可欠だと考えたのでした。

ASVワークショップでは味の素グループが開発したマットに、味の素の過去・現在・未来を書き込み、社員間でのディスカッションを通じて共有し、社員個人なりの意味を追求することで自律的な行動の促進に繋げていきました。

トヨタ自動車株式会社

トヨタ自動車は、コーチアプローチファシリテーション(CAF)研修と組織開発を連動させました。まず、CAF研修ではコーチングをベースに、受講者に対して「自分の価値観を脇に置き、他人の考えを素直に聴くことによる人間力をベースにしたマネジメントスキルを養いました。部下をコントロールするためのマネジメントではなく、部下の可能性を信じて部下と共に組織目標の達成に向かって行動していけるマネジメントを学習します。

CAF研修後の組織開発では、受講者は職場のメンバーとの1対1の関係づくりに望みます。挨拶や日常の会話を通じて信頼関係を醸成、心理的安全性を確保します。1対1の関係を多くのメンバーとの関係にも増やしていくことで、職場全体に信頼関係ができてきます。そうなれば、会議での決定や個人の役割・目標等を社員の意思で決定することに繋がります。CAF後の組織開発では、職場全体に納得感のある合意形成ができてきました。

組織開発を更に良く知るためのおすすめ本の紹介

組織開発を更に学びたい人のためのおすすめ本を紹介します。

組織開発の探求 理論に学び、実践に活かす

組織開発の探求 理論に学び、実践に活かすは、組織開発の歴史から理論まで丁寧に説明されている入門書です。ヤフー、キヤノン、豊田通商等の事例も解説されています。

学習する組織

学習する組織は、学習する組織の第一人者ピーター・センゲ氏の本。入門書ではありませんが、体系的にまとめられているため分かりやすいです。

シャイン博士が語る組織開発と人的資源管理の進め方:プロセス・コンサルテーション技法の用い方

シャイン博士が語る組織開発と人的資源管理の進め方は、アメリカの心理学者エドガー・シャイン氏による組織開発の本です。プロセス・コンサルテーションは診断型組織開発の1つ。ページ数は短いですが、プロセス・コンサルテーション入門として学ぶことができます。

まとめ

組織開発は人間的な取り組みであり、目標を達成するための手段です。組織開発と人材開発との違いはありますが、目標達成のために組織開発と人材開発を混在させても構いません。組織開発ではメンバー同士の対話が重要な観点です。対話を通じて組織の問題が解決され、組織活性化に繋がっていきます。

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