社内ベンチャーとは?制度・成功例・失敗例・向いている人の特徴を解説

社内ベンチャーの記事
社内ベンチャーとは、新規事業開発のために設けられている独立した組織のことです。新規事業開発や新製品開発が必要な大企業で採用されています。社内ベンチャーを作るには社内ベンチャー制度を設けることが一般的。記事では、社内ベンチャー制度の作り方・成功例・失敗例・向いている人の特徴を解説します。
目次

社内ベンチャーとは?

社内ベンチャーの意味や目的を解説します。

新製品や新規事業開発のための組織

社内ベンチャーとは、新製品や新規事業開発のために設けられている独立した組織のことです。

社内ベンチャーの目的

なぜ社内ベンチャーが必要とされるのでしょうか?社内ベンチャーは大企業に設けられています。大企業は過去の成功体験に囚われやすく、既存の事業に依存しがちです。しかし顧客ニーズは変わりやすく、競合企業も自社の市場を獲得しようと狙っています。社内ベンチャーは、大企業が陥りやすい成功体験の罠(サクセストラップ)を回避し新規事業・製品を開発するために必要なのです。

例えば、大手電機メーカーのソニーは、2014年よりSeed Acceleration Program(SAP)を設立。SAPは社内ベンチャーを目的に創出されました。SAPによりソニーは様々な新規事業を開発し、スマートウォッチwena wristやロボットトイプラットフォームtoio等を市場に投入しています。

社内ベンチャー制度の作り方

社内ベンチャー制度の作り方を説明します。

トップダウン型・ボトムアップ型

社内ベンチャー制度にはトップダウン型とボトムアップ型の2つがあります。トップダウン型とは、企業が新規事業部のような組織を新しく作り、新製品や新規事業開発に携わらせます。つまりトップダウン型は社内ベンチャーをトップダウンで組織化することです。新規事業部に配属された社員は、経営者から与えられた指示によってイノベーティブな製品・事業を企画・開発していきます。

新規事業部で企画・開発されるのは、既存の延長線上にない製品・事業です。しかし、既存事業や製品と全く関連性がないものでは相乗効果が得られません。企業が持っているノウハウやケイパビリティを活かして企画・開発することが求められています。トップダウン型に対するボトムアップ型とは、社員の自発的なアイディアに基づく社内ベンチャーです。具体的には次の項目で説明します。

新製品・新規事業のアイディアを公募する

社内ベンチャー制度のボトムアップ型は、新製品・新規事業のアイディアを社内に公募するやり方です。公募した後でアイディアを選定し新製品・新規事業の企画・開発に繋げていきます。アイディアを公募することで、社員の隠れた能力を発掘できます。

社内ベンチャーを通じて人材育成する

社内ベンチャー制度は人材育成に活用することができます。新規事業部に配属された人材は、社内ベンチャーでの知見を活かし大きく能力アップして、元の職場に戻ってくるのです。例えば、大手メーカーにおいて、新規事業部に配属された社員Aさんがいました。Aさんは開発でキャリアを積んできた人材です。Aさんは開発には自信がありました。

しかし新規事業部に配属されアイディアを練っていると、Aさんは自分の顧客目線の不足に気付きます。新しい事業を軌道に乗せるためには、会社が作りたいものを作るだけではなく、顧客ニーズに応えなくてはなりません。顧客ニーズは、これまで営業が考えてくれたのでAさんは考える必要がなかったのです。

Aさんは新規事業部で、顧客ニーズに応えた創造性の高い事業を創出できる人材へと成長。職場に戻った時には同僚より一歩抜きんでた人材となっていました。このように、社内ベンチャーは人材育成にも繋げられるのです。社内ベンチャーを作る時には人材育成のメリットを念頭に置いた上で、実行に移していくと良いでしょう。

社内ベンチャーの成功例

実際に、社内ベンチャーを通じて成功した例を説明します。

スポーツクラブルネサンス

スポーツクラブルネサンスは、DIC株式会社の社内ベンチャーでした。現在では独立し株式会社ルネサンスとなり、東証一部に上場しています。ルネサンスはDICのテニスサークルから始まりました。テニスサークルは新規事業として作られることが認められ、スポーツクラブルネサンスが誕生しました。

リクルートマーケティングパートナーズ

リクルートマーケティングパートナーズが運用しているスタディサプリをご存知でしょうか?「スタサプ」という聞き覚えの良いCMを聞いたことがあると思います。スタディサプリはリクルートマーケティングパートナーズの社内ベンチャーRingから生まれました。Ringはボトムアップ型の社内ベンチャー。学生の教育格差をなくしたいという思いから生まれた教育サービスの社内ベンチャーの成功例です。

サイバーエージェント

サイバーエージェントの社内ベンチャーは多くの成功例を生んでいます。社内創業することもあり、CyberSS、サイバーブル等多くの社内ベンチャーがあります。

社内ベンチャーの失敗例

社内ベンチャー制度を設けても失敗することがあります。事例を紹介します。

モチベーションが続かない

失敗例としてモチベーションが続かないというものがあります。モチベーションが続かない失敗は、ボトムアップ型の公募に見られます。公募制度が始まった頃は意気揚々と応募してきた社員も、「本業が忙しい」ことを理由に意欲が下がり応募しなくなることが考えられます。

既存事業に固執する

社内ベンチャーの目的として、大企業が陥りやすい成功体験の罠を回避し新規事業・製品を開発することがありました。しかし社内ベンチャー制度を設けても、「どこかで見たようなアイディア」に留まってしまうことも。成功体験の罠から抜け出せず既存事業に固執してしまうことで、社内ベンチャーがうまくいきません。創造性を発揮できる組織風土が育っていない土壌で、社内ベンチャーを始めてもうまくいかない訳です。

社内から理解を得られない新製品

社内ベンチャーがうまくいくためには、社内のコミュニケーションを良くする必要があります。しかし、新規事業部を閉じた組織にすると、社内から理解を得られない製品や事業を開発してしまうことも。予算を実行に移す前に第三者の指摘があって止められれば良いのですが、コストがかかった後に、社内から「これでは売れないよ」と反発を受けてしまうと社内ベンチャーが損失を生むことになりかねません。

社内ベンチャーに向いている人の特徴

企業が社内ベンチャー制度を運用するには、人材の選定も重要です。社内ベンチャーに向いている人の特徴を説明します。

起業家精神

社内ベンチャーの目的は、大企業が陥りやすい成功体験の罠を回避して新規事業・新製品を開発することです。既存のやり方に安住している人材ではなく、起業家精神を持った人を社内ベンチャーのメンバーに選定しましょう。起業家精神はアントレプレナーシップとも言い、新規事業を起こそうとする発想力、ブレない意思、ストレスや困難に打ち勝っていけるレジリエンス等の要素によって構成されます。

起業家精神を構成する要素を全て持っている必要はありません。一部でも持っていれば良いのです。起業家精神を持っている人材は、社内の中でも高いパフォーマンスを発揮する能力の高い人材となります。

挑戦意欲

挑戦意欲を持っている人材も社内ベンチャーのメンバーに選定したいところですね。困難な課題を避けずに乗り越えていきたいと思う挑戦意欲を持っている人材が社内ベンチャーには必要です。挑戦意欲を持っている人材は、人事評価でチャレンジ目標を達成した経験を持ち、あるいは難しいプロジェクトを乗り越えようと努力した経験を持っている人材です。

まとめ

企業規模が大きくなると、かつてスタートアップ、あるいはベンチャーだった企業も既存の事業の延長線上でビジネスを展開しようとします。しかし、変わりやすい顧客ニーズに応じて、競合に勝つためには新しい製品、新しい事業を創出することが求められます。企業は社内ベンチャー制度を駆使して、新製品や新規事業のアイディアを募り、新しいビジネスにチャレンジしていく必要があります。

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