御社と貴社の違いとは?
御社も貴社も相手の会社を敬って使う言葉で、意味は同じです。御社と貴社の違いは、会話で使われるか文章で使われるかという、ビジネスの使用場面での違いがあります。
会話で使われる「御社」
「私が御社を志望した理由は…」「御社の新製品は革新的ですね」などと、会話で使われるのが御社です。
尚、御社という言葉は既に会社に対する敬称ですから、御社様と使わないようにしましょう。御社様と言うと二重敬語に当たり文法的におかしな表現となります。
文章で使われる「貴社」
話し言葉で使われるのが御社ですが、貴社は文章で使われます。例えばメールで「8月5日の14:00に貴社に伺います」などという使い方をします。メールの他に文書や就職活動の履歴書・職務経歴書でも貴社は使われます。会話では御社、文章では貴社と覚えておきましょう。
御社と貴社を使い分ける理由
御社と貴社は、なぜ話し言葉と書き言葉で使い分けているのでしょうか?御社と貴社を使い分ける理由は、貴社には同音異義語が多いからです。例えば、貴社には「帰社」「記者」「汽車」などのように「きしゃ」という読み方をする言葉が多いのです。メールや文書なら漢字を読めば理解できますが、会話ではどうでしょうか?
「きしゃ」という言葉が乱発されると分かりにくくなりますよね。そこで、話し言葉では御社、書き言葉では貴社というように使い分けるようになったのです。
例文で分かる御社と貴社の使い方
御社と貴社の使い方をもっとよく知るために、ビジネスシーンごとに分けた例文を読んで使い方を学んでいきましょう。
御社の例文
話し言葉で使われる御社の例文を確認します。就職面接と商談における例文です。
就職面接
就職面接においては、面接官とのやり取りの中で御社という言葉を使います。就職面接における御社の例文は次の通りです。
2.今期から始まった御社の新しい事業に魅力を感じております。
3.御社では海外転勤へのチャンスもあるのですか?
最後の例文は、面接官から質問された時に御社を使って回答するパターンです。転職活動では応募者も社会人経験がありますから、面接官が応募者の勤務先を敬って御社と使う場合もあります。
商談
商談においては、営業、あるいは顧客側の双方において御社という言葉が使われます。例文は次の通りです。
2.今回おすすめする商品は御社のニーズに合っていると考えます。
3.御社の製品の魅力について教えて頂けますか?
4.御社の製品はキビキビと動いて助かりますよ。
1.と2.の例文では営業が顧客に対して話しています。営業は顧客を敬うために御社という言葉を使っています。また、3.と4.では顧客が営業の勤務先を敬うために御社という言葉を使っているのです。
貴社の例文
書き言葉で使われる貴社の例文を確認します。メールと履歴書における例文です。
メール
メールで使う場合の例文は次の通りです。
2.貴社からのご連絡を心よりお待ちしております。
3.〇月×日、貴社のエントランスにてお待ちしております。
初めてメールする時など、まだ信頼関係ができあがっていない時、「貴社ますますご清栄のこととお喜び申し上げます」のような挨拶文を使います。また、相手からのご連絡を待つ時、待ち合わせ時間・場所を連絡する時など、相手の会社をメールで書く際に幅広く貴社という言葉を使うことができます。
履歴書
履歴書で貴社を使う時には志望動機欄で使うことがほとんどです。
2.貴社の事業に魅力を感じております。
御社と貴社の正しい使い方
御社と貴社の正しい使い方について、事例を元に詳しく確認していきます。
面接や商談では御社を使う
面接や商談は話し言葉なので貴社ではなく御社を使います。面接で志望動機を尋ねられたら、「御社の経営理念に感銘を受け入社したいと思いました」のように、御社を使います。「相手の会社を呼びたい時は御社を使う」というように覚えておけば間違いは少なくなるでしょう。
尚、会話の中で「会社名にさん付けする」こともあります。さん付けは御社より砕けた印象を与えるため、面接や商談では使わないようにしたいところです。
メールでは御社を使わないようにしよう
御社と貴社との違いをよく知らないでいると、メールで御社を使ってしまいがちなので気を付けて下さい。御社は相手の会社に対する敬称ですから失礼ではないと思うかもしれませんよね。しかし、ビジネスルールにおいては、書き言葉であるメールでは貴社を使うことになっていますから、メールで御社を使うと失礼に値します。
また、相手との関係が親しくなると、メールでも砕けた表現で書いてしまうこともあるでしょう。しかし、いくら関係が近くなっても、ビジネスでメールを使う場合は御社を使わないようにして下さい。
ビジネス上の相手との距離が縮まることは良いことですが、ビジネスルールはしっかり守りたいものです。メールのような書き言葉では貴社を使うように徹底しましょう。
御社と弊社、当社との違い
御社と貴社の違いや使い方については、だいぶ理解が進んだことと思います。次は御社と弊社、そして当社との違いについて確認します。
弊社は自社をへりくだって呼ぶ時に使う
弊社とは、自社をへりくだって呼ぶ時に使う言葉です。御社から見ると弊社は反対語となります。
弊社は社外の人とのコミュニケーションの中で使われます。話し言葉でも書き言葉でも使えます。面接で「弊社の経理部ではこんなことをして頂きます」と面接官が応募者に向かって使ったり、商談で「弊社の新製品をご紹介します」などと使ったりします。
ただし、転職活動の面接では自分が務めている企業のことを弊社とはいいません。理由は、弊社には会社の代表という意味合いがあるためです。転職活動において、応募者は会社を代表して面接に呼ばれている訳ではありませんよね。ですから、面接では弊社ではなく、現職、現在の会社などと呼ぶようにします。
当社は社内で使われる
弊社は自社をへりくだって呼ぶ時に使いますが、当社も自社を呼ぶ時に使えます。当社は、弊社のように「へりくだる」という意味合いを持たないという違いがあります。話し言葉でも書き言葉でも使えるのは、当社も弊社も同じです。御社は相手の会社への敬称なので、弊社は御社の反対語であっても当社は反対語にはなりません。
また、当社は社内で使われることが多い言葉です。「平本さん、当社の前期の決算書を印刷しておきました」「宇内さんは当社の一番の稼ぎ頭ですね」などのように使われます。
当社と弊社は同じ意味ですが、社外の人に当社といってはいけないのでしょうか?結論からいえば、使わない方が無難ですね。理由は、当社には「へりくだる」意味が付与されないからですね。御社と貴社のように、厳密な使い分けがされているのではないですが、やはり商談において顧客に向かって当社というと強い印象を与えます。メールも同じです。社外の人には弊社を使うというように覚えておけば間違いはありません。
まとめ
御社という言葉の正しい使い方を理解して頂けたでしょうか?御社は話し言葉、そして貴社は書き言葉で使うというビジネスルールを守れば、正しく使っていけます。面接、会社説明会、商談などにおいては必ず御社を使い、メールや文書では貴社を使いましょう。