雇用調整助成金とは?
雇用調整助成金の意味や目的について説明します。
雇用調整助成金の意味
雇用調整助成金は、従業員を解雇せず休業・出向などの措置を講じた企業に対して支給される助成金をいいます。雇用調整助成金は、経営が悪化した企業に支給されるものです。
雇用調整助成金の目的
雇用調整助成金の目的は解雇を防ぎ経済の不安定化を防止することにあります。どういうことなのかを詳しく確認していきます。
経営が悪化した企業は、費用削減のために人件費を削減しようとしますよね。解雇をすれば従業員に支払う給料がなくなる訳ですから、企業にとっては費用削減のメリットがあります。
しかし、経営が悪化した企業の多くが解雇をしたらどうなるでしょうか?従業員は失業してしまいますし、仕事がある従業員も「次に解雇されるのは自分ではないか?」と雇用不安に陥ってしまうことでしょう。解雇を続ける企業が多くなればなるほど、経済全体が不安定になっていくのです。
そこで、雇用調整助成金が必要になります。雇用調整助成金を活用すれば企業の解雇を防ぐことができるので、雇用不安や経済の不安化を防ぐことに繋がります。雇用調整助成金は従業員には支払われません。しかし企業に助成金が支払われることで雇用を維持できます。
雇用調整助成金の特徴
雇用調整助成金にはどんな特徴があるのかを見ていきましょう。
誰が対象となるのか
雇用調整助成金は、雇用保険の適用事業所の事業主を対象とします。全ての従業員が助成対象となるのではありません。助成対象となる従業員は、適用事業所に雇用される人で雇用保険の被保険者です(6か月以上の加入が必要)。つまり、パートやアルバイトなどは、雇用保険の加入状況によって助成対象とならないことがあります。
受給要件
雇用調整助成金にはいくつかの受給要件があります。適用事業所の事業主である企業が以下の条件を満たした時に支給されることになります。
2.雇用保険被保険者の数について、最近3か月間の月平均の雇用指標が前年同期に比べて10%を超えており、4人以上増えていないこと
3.上記は、大企業の場合の雇用指標は、5%を超えており、6人以上増えていないこと
4.以前に雇用調整助成金を受給したことがある企業が新たに対象期間を設定する際は、直前の対象期間の満了日の翌日から起算して、1年を超えていること
助成率について
受給要件を満たした企業が雇用調整助成金を受給すると、どのくらいの助成率で助成されるでしょうか?雇用調整助成金は企業規模によって助成率が変わります。まずは中小企業の助成率について項目別に確認していきます。
・教育訓練:賃金負担額の2/3+1,200円/日
・出向:出向元企業の負担額の2/3
次に大企業の助成率について確認します。大企業よりも中小企業の方が手厚いサポートとなっていることが分かりますね。
・教育訓練:賃金負担額の1/2+1,200円/日
・出向:出向元企業の負担額の1/2
助成金には上限があり、従業員1人あたりの日額は8,335円となります。
雇用調整助成金を受給するメリット
企業が雇用調整助成金を受給することで、企業が得られるメリットを紹介します。
2.経営の安定化を図れる
雇用を維持できる
企業の経営が悪化し、事業を縮小せざるを得ない時、従業員を解雇すれば費用削減に繋がるでしょう。賞与カットや残業代削減などの人件費削減は一時的な削減にはなりますが、継続的な費用削減とはなりません。その点、従業員を解雇すれば給料を支払わなくて済むようになりますので、費用削減効果が大きくなります。
一方で、従業員を解雇すると既存の従業員のモチベーションを下げてしまいます。「彼女のような優秀な人材が解雇されてしまった。次は自分が解雇される番だろうか」と考える従業員は、仕事に打ち込みにくくなり、転職を考えるかもしれません。仕事で成果を挙げるハイパフォーマーに転職されれば、企業にとっては人材流出となるでしょう。雇用調整助成金を活用すれば、経営を続けながら雇用を維持できるのです。
雇用を維持できることのメリットは、経営の悪化から脱出し、事業を拡大しようとする時にも効果を発揮します。つまり、事業を拡大するといっても、急に人材を採用できないですよね。特に優秀な人材を流出させてしまった場合は、転職市場から人材を採用しなくてはならず、採用にかかる費用がかかってしまいます。また、採用した人材を育成する費用がかかります。雇用調整助成金を活用すれば、人材流出を防げるため採用や育成の手間が省けます。
経営の安定化を図れる
雇用調整助成金を活用すれば、経営の安定化を図ることができます。休業とは、企業の責に帰すべき事由で従業員を休ませることで、企業が従業員を休業させると賃金の60%以上の休業手当を支払う必要があります。休業手当さえも支払う余裕がない企業にとっては、休業手当を支払うくらいなら解雇したいと考えてしまいます。
雇用調整助成金を活用すれば、中小企業なら休業手当の2/3、大企業なら休業手当の1/2をサポートしてもらえるのです。休業手当のいくらかをサポートしてもらいながら雇用を維持できるので、雇用調整助成金は経営の安定化に資するといえます。
雇用調整助成金の特例
新型コロナウイルス感染症に対応する企業のため、雇用調整助成金には特例が設けられています。従来の雇用調整助成金よりもサポート内容が拡充されています。特例の概要、申請対象となる事業主、そして助成率はどう変わるのかについて解説します。
制度の概要
新型コロナウイルスの感染拡大により、経営環境が悪化する企業が出てきています。従来の雇用調整助成金で助成される支給額では、企業によっては対応しきれない場合があります。そのため、雇用調整助成金のサポート内容を拡充する特例が定められました。実施期間は2020年4月1日より9月30日までです。
対象となる休業には、新型コロナウイルスの影響で行った休業が対象です。例えば、旅館業を営む企業で宿泊客のキャンセルが続き、売上高が減少したために休業を実施した場合が該当します。
特例では、申請対象となる事業主、助成率、助成の上限額などが拡充されています。項目ごとに解説します。
助成対象者
助成対象となる従業員は、加入期間が緩和されて6か月未満の被保険者も対象となりました。また、被保険者以外の従業員についても助成対象となっています。助成対象が拡充されたことで、多くの従業員が助成対象に変わりました。
申請対象となる事業主
申請対象となる事業主も受給要件が緩和されています。雇用保険の適用事業所である企業で、以下の要件を満たすことで申請対象となります。
2.直近1か月間の売上高または生産量などの事業活動を示す指標について、前年同月に比較して5%以上減少していること
3.労使間協定に基づいて休業を実施し、休業手当を支払っていること
助成率はどう変わるか
助成率も次のように受給要件が緩和しています。
・大企業:休業手当の2/3
ただし、解雇を行わない場合の助成率はさらに拡充され、中小企業で10/10、大企業でも3/4となります。
助成金の上限についても、従業員1人あたり日額15,000円に拡大されています。
まとめ
雇用調整助成金は、企業が解雇することなく従業員を休業・出向などの調整を行った場合に支給される助成金です。経営が悪化した企業が雇用調整助成金を活用することで、経営のサポートに繋がり、雇用を維持することができるようになります。雇用調整助成金は、新型コロナウイルスの影響で事業縮小を余儀なくされた企業に対して、助成金の受給要件の緩和や上限額の引き上げなどによりサポートを拡大しています。