長時間労働とは、その名の通り労働時間が長期に及んでしまうことを指します。
残業文化が良しとされがちな日本の労働現場では、長時間労働の問題が根強く残っています。
長時間労働が続くと、長い拘束によるストレスや鬱、モチベーションの低下、労働環境の悪化、過労死…など、さまざまな問題が発生してしまいます。
長時間労働とは
長時間労働とは、通常の労働時間を大きく超えて労働することを指します。
単に残業が増えすぎていることを指す場合もありますし、労働形態自体が長時間労働になりやすい仕事を指す場合もあります。
長時間労働の定義
実は長時間労働の明確な定義は存在しません。
「どこからどこまでの範囲が長時間か?」というのは感覚的な問題であり、人によって感じ方がそれぞれ違うからです。
また、業種・働き方・給与などの条件も仕事によって大きく異なるため、絶対的な数値は存在しないのが現状です。
長時間労働と三六協定の関係
労働基準法第36条「三六協定(さぶろくきょうてい)」とは、法定時間外労働(残業)について、労働者側・雇用者側で結ぶ協定のことです。
労働基準法32条において、労働者の基本勤務時間は、1日8時間・週40時間までと決められています。この基本労働時間を超える労働がいわゆる残業にあたります。
残業時間は労働者を守るための上限が決められており、最大月45時間までと決められています。
この上限に近い残業時間がある場合は、長時間労働とみなされるケースが多くなります。
過重労働との違い
長時間労働とよく似た言葉で「過重労働」があります。
こちらも明確な定義は存在しませんが、長時間の拘束に加えて肉体的・精神的に苦痛な仕事を任されることを指す場合が多いです。
「単調な作業を任される」「人間関係が悪い部署に左遷される」「肉体的に負荷が大きい重労働が多い」など、ストレスの多い環境に長く居続ける命令を受けた場合は、過重労働にあたる可能性が高くなります。
長時間労働の問題点とは
長時間労働が常態化すると、労働者の精神に大きなストレスを与えるだけでなく、雇用側にとってもさまざまなリスクを抱えることになります。
自分の職場ですでに長時間労働が発生している場合、労務担当者は速やかに対策を講じる必要があります。
長時間労働によって発生する問題
- 労働者の肉体的・精神的なストレスが増大
- 仕事へのモチベーションや集中力が低下
- 時間当たりの生産性が下がる
- 鬱・病気・過労死などの労災リスクが増える
- 労働環境が悪化して人間関係に亀裂が入る
- 残業代の負担が増える
- 離職率が高まる
長時間労働が起きてしまう5つの原因
長時間労働はどのような原因で起きてしまうのでしょうか。
労働の現場で特によく見るパターンを5つ紹介します。
業務量が多すぎる
長時間労働が発生する原因の一つが、社員一人が抱えている業務量が多すぎることです。
大量の業務を終わらせる方法が残業をするほかなく、毎日残業を繰り返しても一向に仕事が終わらないという負のループが発生してしまいます。
特に新入社員の場合は業務量の比較がしにくいため、「仕事ってこんなものなのか…?」「自分の効率が悪いだけ?」などと感じてしまい、業務量の多さに気づかないケースが多々あります。
厳しいノルマを課せられる
営業・販売・物づくりなどの業界でよく見るのが、厳しいノルマを課せられることです。
もともとノルマの厳しいブラック企業や、競争力を刺激するためにあえて行う企業、ノルマに厳しい上司がいるチーム…など、さまざまなパターンが考えられます。
達成できるかどうかギリギリのノルマ・目標を設定されてしまうと、どんな人でも達成したいといつも以上に頑張ってしまうもの。
- 「結果を出して出世コースに乗りたい」
- 「今の地位を守りたい」
- 「上司から認められたい」
- 「周りの人をギャフンと言わせたい」
このような願望がある場合は、目的を達成するために進んで長時間労働をしてしまうケースが多く発生します。
真面目で責任感が強い人であればあるほど、自分を追い詰めるまで働いてしまうのです。
上司のマネジメント能力が低い
上司のマネジメント能力が低いことも、長時間労働を助長する原因の一つ。
本来は時間内に十分処理できるタスクを振っているはずなのに、教え方や指導方法が悪いために本人が業務を理解しておらず、余計に時間かかってしまうケースです。
上司と部下の連携が取れていないと意思の疎通がうまくいかず、現場全体に混乱を招いてしまいます。また、問題が発生しているにもかかわらず、あえて放置しているブラック上司もいます。
慢性的な人材不足
日本の少子高齢化は労働の現場でも着実に進んでいます。法律の改正によって女性の働き手が増えたとはいえ、若い働き手は年々減り続けています。
人員不足から既存のポジションや役職が空いてしまうことも珍しくないため、抜けた分の人員やタスクは必然的に一人に集中していくことになります。
労働力は足りていないのに、一人当たりの業務量・責任が大きくなっていくため、自然と全員が長時間労働をして穴を補填する働き方になってしまうのです。
残業を良しとする古い体質
日本では「残業をたくさんする人=偉い」という古い体質が今でも残っています。
最近ではかなり減ってきた印象ですが、新入社員が先輩よりも早く帰ることをよく思わない人が一定数いるのも事実。
このような会社に入ってしまった場合、自分の仕事が終わっていても上司の機嫌を損ねないために長時間労働をするケースが発生してしまいます。
また、残業が発生するのは会社の体質だけでなく、労働者の意識にも原因があることが多いです。
「残業してそれっぽく働いていれば、好印象を残せるだろう」という意識が一度根付いてしまうと、本来終わるはずの仕事をダラダラと進める悪癖に発展してしまうケースもあります。
長時間労働解消することで得られるメリット
長時間労働体制を改善することで、社内にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。
特に効果が出やすい3つのポイントに絞って解説します。
モチベーションを改善できる
長時間労働を改善すると、社員のモチベーションを高めることができます。
仕事で常に最高のパフォーマンスを発揮するには、「適度な休み」と「プライベートの充実」が必要不可欠。
ずっと仕事に明け暮れる日々が続くと、どんな人でも徐々に気持ちが萎えていきます。
適正な労働時間・仕事量になれば、疲労やストレスが溜まりにくくなり、結果的に常に高いモチベーションを維持して働くことができます。
休息時間をしっかりとることで、仕事に取り組む姿勢が目に見えて変わっていくことでしょう。
生産性が向上する
長時間労働の解消は時間短縮だけではなく、作業効率をアップさせる効果もあります。
人が1日に集中できる時間は限られているもの。日頃から長時間労働が癖になると、自然とダラダラと非効率的に働く習慣が根付いてしまいます。
労働時間や退社時間に一定のルールを設けることで、「もっと効率的に仕事を進めるにはどうすれば良いか?」…という意識が芽生え始めます。
仕事の質を高めなければ時間短縮できないので、結果的に業務時間が短くなる可能性が高いです。
代表的な長時間労働対策の例
- ノー残業デーの導入・・・週に1日残業しない日を決めて意識改革する
- 退社時間を早める・・・会社を締める時間をもっと早くする
- 仕事量の調節・・・膨大なタスクを振られている社員の仕事量を調整
- 適切なマネジメント・・・仕事の効率が悪い社員に対して指導を行う
残業代を削減できる
長時間労働が無くなれば、会社が負担する残業代を少なく抑えることができます。
残業費を節約できるのはもちろん、時間外労働時に発生する食事代・電気代・休日出勤手当など、多くの費用をカットできるようになります。
また、基本の労働時間内に仕事を終わらせる習慣が組織に浸透すれば、残業体質の職場環境を変えられる可能性もあります。
長時間労働削減に向けた対策
では、具体的にどういう対策を行えば、長時間労働が削減できるのでしょうか?
システム導入による業務の効率化
業務が効率化されておらず、それが長時間労働につながっている場合は、様々なシステムを導入し、業務を効率化すると長時間労働対策になります。
自社コストが増えれば増えるほど、クライアントが負担するコストも増えることを理解してもらうことが大切です。
非効率な業務が長時間労働に繫がるならば、自社とクライアントのいずれも効率化を図ると、長時間労働が解消されるでしょう。
裁量労働制・フレックスタイム制の導入
フレックスタイム制や裁量労働制の導入を検討することで、長時間労働は解消されます。
従業員は時間の使い方や業務の進め方を自分自身で決められるため、経験や知識を活かして、効率よく業務を進められるようになります。
厚生労働省の取り組み
長時間労働削減推進本部を設置、大臣が本部長となり、長時間労働対策について、厚生労働省全体で取り組みを行っています。
日本再興戦略は、働き過ぎ防止のための取組強化を盛り込み、長時間労働の解消に向けて力を入れています。
まとめ
長時間労働は、企業にとっても従業員にとってもマイナスになることばかりです。
企業側は経営を行っていく上でリスクやコストの増大となり、労働者側は体調不良により、パフォーマンスを発揮しきれなくなります。
まずは、自社の長時間労働の原因を突き止めて、根本的に改善するよう対策を取ることが重要です。
ぜひ、今後は企業の現状に合った長時間労働の解消策を見出していただければと思います。