「相対評価」とは、評価基準が周囲の平均によって変わる制度のことを指します。企業の人事評価においても重要な意味を持つ評価制度の一つです。この記事では「相対評価」と「絶対評価」の違いや、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
相対評価とは?
相対評価とは、周囲と相対的に比較して評価する人事考課の評価方法を言います。
人事考課に限らず、教育でも相対評価は使われています。
相対評価の方法や割合について
相対評価をするには、予め各評価に対する割合を定めておきます。そうすることで、周囲と比較して評価にあてはめていくことができるようになります。
相対評価の具体例については、教育現場における相対評価が分かりやすいです。
通常試験などは相対評価を採用しており、全員の平均点が低ければ合格ラインも低くなり、反対に平均点が高くなれば合格ラインも高くなります。
教育での相対評価
教育での相対評価は、「5・4・3・2・1」の5段階評価とした場合に、評価毎に割合を定めておくのが特徴です。
例えば「5」は10%、「4」は20%、「3」は40%、「2」は20%、「1」は10%というように具体的な割合を定めます。
教師は、試験の平均点や得点の分布などから生徒の評価を決めていきます。
会社(人事)での相対評価
人事考課における相対評価は、周囲との相対的な比較によって評価を決める制度です。
自分の部署の結果が自分よりも悪い人が多ければ、自分の評価は高くなりますし、逆に結果が自分よりも良い人が多ければ自分の評価は低くなります。
今期の自分はがんばって良い成績を挙げたと思ったとしても、周りの人間が軒並み好成績を挙げて、自分の成績が目立たないものになってしまったら、自分の評価は低くなるということです。
人事考課における相対評価でも、教育の相対評価と同様に評価基準に割合をあてはめます。例えば「A」は10%、「B」は20%、「C」は40%、「D」は20%、「E」は10%といった割合ですね。
相対評価のメリット
人事考課上の相対評価のメリットはいくつもあります。一つずつ解説していきます。
評価する人の影響を受けにくい
相対評価は、評価者の影響を受けにくいというメリットがあります。
例えば営業部であれば、1億円の全体目標があり、Aさんは5,000万円、Bさんは2,000万円、Cさんは3,000万円だとすると、B→C→Aさんの順で評価が高くなっていきます。
部下個人の行動を逐一見ない訳ではありませんが、相対評価はあくまでも周囲との相対的な比較によって評価を決める制度。比較した上でAさんが高い成果を挙げていれば、Aさんを高く評価します。
全体のバランスを考慮する評価に向いている
個人の評価を周囲との相対的な比較によって決めていくのが相対評価です。言い換えると、全体のバランスを考慮する評価に向いていると言えます。
部署全体を見て、XさんはA評価、YさんはD評価などと、比較した上で評価することができます。社員個人を厳密に見てしまうと、全体のバランスは崩れざるをえませんが、相対評価ではそうした評価の不均衡は防ぐことができますね。
競争が活発になる
相対評価は周囲との相対的な比較によって評価を決めますから、従業員の競争を活発化させるというメリットがあります。
皆が評価が低いことが予め分かっていれば自分だけ頑張れば良いですが、相対評価においてそういう行動はリスキーです。
誰か1人でも高いパフォーマンスを見せたら、その人が一番高い評価を受けます。自分が一番高く評価されるように、社員同士での競争が活発化しやすいです。
相対評価のデメリットや問題点
相対評価のメリットを見てきましたが、次にデメリット・問題点を確認しましょう。
所属する職場やチームによって結果が変わる
相対評価の特性上、所属する職場やチームによって自分の評価結果が変わります。
周囲との相対的な比較によって評価が決まるので、自分の部署が評価結果に貪欲でない場合、そこで高い評価を勝ち取るのは容易です。
ちょっとした努力でも高い評価を勝ち取れる可能性が上がります。
しかし、逆にハイパフォーマーだらけの部署では、どれだけがんばっても平均以下の評価しかもらえないかもしれません。
相対評価は個人のプロセスとか、行動よりも相対的な比較で評価を決めてしまうので、職場やチーム次第で評価が変わります。
個人の目標や成長性などが考慮されない
相対評価では、個人の目標や成長性などが考慮され難くなります。
周囲との相対的な比較で評価を決まるため、「高い目標を掲げて達成した」「前期よりも私はこれだけ成長した」といったことが考慮されずに評価結果が決まってしまいます。
評価の理由を説明しにくい
個人の目標や成長性が考慮されないということは、評価の理由を部下に説明しにくいというデメリットもあります。
人事考課のフィードバック面接を行うにしても、「なぜ私はB評価なんですか?」という部下の問いに対して明確に答えられないですよね。
「相対的な比較でBなんだ」と部下に説明しても、納得しない人も出てくるでしょう。むしろ「上司は私の行動や働きぶりをよく見ていないんだな」と思われてしまうこともあります。
人事における絶対評価と相対評価
最後に人事における絶対評価と相対評価を見比べてみましょう。どちらの評価が良いのかという判断は会社によりますが、参考にしてみてくださいね。
どちらが優れているのか
絶対評価と相対評価には、メリットとデメリットがあります。ですから、どちらが優れているのかということは言えません。
「どちらかを採用したいが悩んでいる」という人は、双方のメリット・デメリットを見比べた上で、業種や社員数に応じて柔軟に評価制度を変えていく必要があるでしょう。
2つを組み合わせて評価するケースも
絶対評価と相対評価を組み合わせて評価する仕組みもあります。
例えば、管理職層を絶対評価にして、一般社員層を相対評価にするというハイブリッドな評価の仕組みです。
こうすれば、個人のパフォーマンスが強く求められる管理職層は絶対評価にして、個人の成果が出にくい一般社員層は部署内の働きぶりを比較して相対評価で評価することができます。
ハイブリッドな評価の仕組みには、定量化しやすい営業目標を絶対評価として、能力のような数字で表しにくいものを相対評価にするという運用もあります。
それぞれの良さを活かせる評価制度を作ろう
相対評価を中心に記載してきましたが、メリットやデメリットを深く考えていくと、必ずしも相対評価で良いとも限らないことが分かったと思います。
相対評価・絶対評価それぞれの長所・短所を比較検討して、何を採用するのか、ハイブリッドにするのかの決め手にして頂ければと思います。