日本の税制は、課税の公平性を図るため、個人の事情に応じて税金を払うシステムとなっています。年収が同じ場合でも、独身・既婚、子供の学費、医療費など、生活にかかる出費額が異なるからです。所得控除には多くの種類があり、所得控除を受ける条件が決められています。今回は、所得控除の種類と税額控除の違いについて解説していきましょう。
所得控除について
所得控除とは、所得税を計算する時に特定の金額を差し引いて、課税されないようにする制度です。
所得控除について、まずは「所得税」と「控除」の意味を押さえておきましょう。
「所得税」とは、個人が1月1日~12月31日までの1
年間に得た利益に対して課税されるものです。
利益とは会社員などの給与収入ではなく、事業所得、不動産所得などの所得が該当します。
会社員の給与は所得税がすでに天引きされていますが、所得控除は考慮されていません。
年収が同じ人でも、独身・既婚、子供あり・なしによって生活にかかる出費額が異なります。
家族構成や人の状況によって税金を負担する力が異なるため、課税の公平性を図るために「所得控除」が設けられているのです。
所得控除・所得控除額とは?
所得控除とは、条件によって所得の合計金額から一定の金額を差し引く制度のことです。
所得控除額が大きくなるほど所得税額は低くなり、負担が軽くなります。
所得税額の計算
「(収入-経費-所得控除)×税率」
所得控除は個人の事情が考慮されるため、一定の要件を満たす必要があります。
例えば、扶養家族がいる、高額な医療費を払っている人は、その金額を所得から控除することで、所得税が低く抑えられます。
所得控除と住民税の関係
住民税(市町村民税・道府県民税)は地方自治体による教育や福祉、行政サービスの資金のために納める税金です。
地域と収入によって金額は異なり、前年の所得を元に課税所得に税率をかけて算出されます。
注意点としては、所得税と住民税では所得控除額が異なることです。
給与所得控除の最低額65万円と基礎控除38万円の合計額103万円は、所得税の扶養になれるか、所得税がかかるかのラインです。
合計額103万円を超えると、扶養内でも所得税が発生してしまいます。
住民税に関しては、給与所得控除が65万円、基礎控除が33万円なので合計は98万円となります。
住民税には非課税限度額35万円があるので、給与所得控除65万円が差し引かれた金額が35万円以内であれば非課税です。
給与所得控除65万円と非課税限度額35万円を合わせた100万円までは課税が免除されます。
所得控除の額の合計額は人によって異なる
所得控除は個人の事情が考慮されたシステムなので
一概に合計の所得控除額は決まっていません。
所得税額の計算によって様々な控除が設けられており、毎月の給与計算で所得控除が適用されます。
所得控除を受けるには「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出します。
所得控除と基礎控除の違いは?
所得控除には多くの種類がありますが、その中でも収入を得ている人が誰でも受けられるものが「基礎控除」です。
所得控除は申請しなければ受けられませんが、基礎控除に関しては申請なしでも受けられます。
基礎控除は会社員でも自営業者でも、所得税を計算をする時に38万円控除され、住民税を計算をする時に33万円控除すると定められています。
2020年の法改正により、金額が変わる可能性があるので随時確認するようにしてください。
ちなみに基礎控除は、給与所得控除と同様にパート・アルバイトにも適用されます。
所得控除の種類
ここからは、所得控除の種類と控除額について見ていきましょう。
配偶者控除
納税者本人に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合、最大38万円の所得控除が受けられます。
控除対象配偶者の条件は、配偶者の合計所得金額が85万円以下である場合です。
本人の給与収入1,120万円以上の場合は対象外となります。
扶養控除
納税者本人に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合に最大63万円控除されます。
扶養親族(16歳以上)の合計所得金額が38万円以下である場合に適用されます。
社会保険料控除
社会保険料控除は、納税者本人、または配偶者、親族の社会保険料を支払ったときに受けることができます。
給料から控除される健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料の合計額が控除されます。
医療費控除
医療費控除は、納税者本人、または配偶者や親族のために医療費を支払った場合に受けることができます。
1月1日から12月31日までの間に支払った医療費を最高200万円まで所得控除を受けることができます。
控除額は支払った医療費の合計額-支給された保険金-10万円です。
生命保険料控除
納税者本人が生命保険料や介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合、最大12万円の所得控除を受けることができます。
小規模企業共済等掛金控除
納税者が小規模企業共済の掛金、個人型年金加入者掛金を支払った場合、年末調整で所得控除を受けることができます。
地震保険料控除
納税者が地震保険料を支払った場合は、最高5万円の所得控除を受けることができます。
寄付金控除
納税者が国や地方公共団体、特定公益増進法人、社会福祉法人などに対して寄付をした場合は、寄付金控除を受けることができます。
寡婦・寡夫控除
納税者本人が12月31日の時点で寡婦または寡夫である場合、27万円の所得控除を受けることができます。
障害者控除
納税する本人、配偶者または扶養親族が一定の障害者に該当する場合、一定の障害者控除を受けることができます。
一般障害者の場合は27万円、特別障害者(身体障害1級または2級の方や精神障害1級の方など)の場合は40万円、同居特別障害者の場合は75万円です。
青色申告特別控除
青色申告制度に基づいて作成し、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して提出すると、65万円控除されます。
所得控除の種類は他にも色々ありますので、こちらを参考にしてみてください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/shoto320.htm
所得控除額を計算する際の注意点
確定申告をしなければその適用を受けることができない所得控除があります。
確定申告の際に医療費控除・寄付金控除・雑損控除の項目は注意してください。
医療費控除について
医療費控除の対象となる金額
実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額
(1) 保険金などで補てんされる金額(入院費給付金、健康保険などで支給される高額療養費、家族療養費、出産育児一時金など)
(2) 10万円
配偶者控除と配偶者特別控除
配偶者控除は、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられます。
配偶者特別控除は、配偶者に48万円(令和2年分以降)を超える所得があり、配偶者控除の適用が受けられない場合に所得控除が受けられます。
青色申告特別控除について
法人や個人事業主は、「青色申告」と「白色申告」のどちらかを毎年確定申告して、その年の所得を申告し、所得税を納めます。
個人事業主は「青色申告特別控除」を利用すると所得控除額65万円もしくは10万円差し引いて計算することになります。
所得控除と税額控除の違い
確定申告の控除には、「所得控除」と「税額控除」があります。
「所得控除」は税額を計算する前の所得(利益)から所得控除を差し引いた金額に税率をかけて計算します。
「税額控除」は所得控除を差し引いた後の金額に税率をかけて、直接控除されます。
税額控除とは?所得税の計算方法は?
税額控除とは、所得税からダイレクトに差し引いて
大幅な節税ができる方法です。
所得税を算出する基礎となる給与から差し引く所得控除とは計算方法が異なります。
給与計算の際の源泉所得税の計算方法には、毎年公表される「給与所得の源泉徴収税額表」を使います。
税額控除の種類
税額控除は税額から直接引かれるため、該当する場合は忘れずに活用しましょう。
配当控除
総所得金額に一定の配当所得(剰余金の配当など)がある場合、所得の10%または5%を税金から直接引くことができます。
住宅借入金等特別控除
金融機関等を利用して住宅ローンを組み、その取得年中に当該住宅を住居として利用した場合に受けられます。
認定NPO法人等寄附金特別控除
認定されているNPO法人に一定の寄付金を支払った場合、寄付金の明細書を提出すると受けられます。
まとめ
一般的な配偶者控除や扶養控除、医療費控除の他にも所得控除は多くの種類があります。
所得控除は控除ごとに適用できる条件が異なりますので、税金対策のためにも確認しておきましょう。