算定基礎届とは
算定基礎届とは労働者の標準報酬月額を決定するために必要な手続き書類です。算定基礎届を提出することで労働者の1年間の標準報酬月額が決まってくるのです。標準報酬月額が決まれば社会保険料も決まります。
算定基礎届を届け出る時期
算定基礎届を届け出る時期は、毎年7月上旬と決まっています。
算定基礎届が必要な理由とは
新しく会社に入社した労働者については、企業が標準報酬月額を求めることで社会保険料が決まっていきます。
それでは既存の労働者の社会保険料は例年、どう決まってくるでしょうか?既存の労働者の給与は生涯、同じではないですよね。だからといって毎月の給与ごとに社会保険料を決定していったら非常に煩雑で、企業は大変な手続きを強いられます。
また、定時昇給や昇格によって給与は上がっていきます。降格によって給与が下がることもあります。つまり給与は上下します。社会保険料を決める手続きを用意にして、尚且つ実際の給与と乖離することがないように標準報酬月額を設定して、年に1度、算定基礎届を提出する必要があるのです。尚、年に1度、算定基礎届を提出することにより標準報酬月額を見直すことを定時決定と言います。
対象者・非対象者
算定基礎届の対象者は7月1日時点で社会保険の被保険者の資格を有する人です。被保険者ということなので、当然、休職中や育児休業中の労働者も含まれます。算定基礎届の対象とならない労働者は以下の通りとなります。
2.6月1日以降に被保険者となった労働者
3.7月改定の月額変更届を提出する対象となる労働者
1.の【6月末までに退職した労働者】については、算定基礎届の対象者が7月1日時点で被保険者の資格を有する人なので非対象者であることはすぐに分かります。2.の【6月1日以降に被保険者となった労働者】については、被保険者になった時点で翌年までの標準報酬月額が決まっているので非対象者です。
3.の【7月改定の月額変更届を提出する対象となる労働者】は、4月に昇給がある会社をイメージして頂ければ分かりやすいです。昇給したことでこれまでの標準報酬月額と毎月の給与に大きな差異が出ることがあります。そういう労働者は随時改定を7月に実施するので算定基礎届の対象者から外れます。
算定基礎届を書く上で必要な標準報酬月額の知識
算定基礎届は標準報酬月額を決定するために必要な書類です。ここでは標準報酬月額の基礎を解説します。
報酬となるもの
標準報酬月額の報酬の範囲は、基本給・役職手当・家族手当・勤務地手当(地域手当)・通勤手当・住宅手当・残業手当・休業手当・育児休業手当・食事手当等です。以上は金銭で支給されるものです。現物支給されるものとしては、食券・社宅・通勤定期券等が報酬となります。
報酬とならないもの
逆に標準報酬月額の報酬の範囲から外れるものは、退職手当・出張旅費・慶弔手当・年金・家賃等です。以上が金銭で支給されるもので、現物支給されるものとしては、住宅・被服等があります。
算定基礎届の書き方
標準報酬月額を中心に算定基礎届の書き方を説明します。
4月・5月・6月の報酬の平均月額から決定する
算定基礎届は7月上旬に年金事務所に提出します。標準報酬月額を決定するための根拠となる給与は、4月・5月・6月の報酬です。4月・5月・6月の報酬の平均給与額を元に、算定基礎届を提出して労働者の標準報酬月額を決定することになります。4月・5月・6月の報酬とは実際にその月に支払った報酬のこと。3月の給与を4月に払えばそれは標準報酬月額を決めるための根拠にしなくてはなりません。
算定基礎届を提出することで、当年9月から1年間使われる標準報酬月額が決定されます。4月・5月・6月の報酬の平均給与額の計算は、報酬の総額を3で割って出た数字を、健康保険なら50の等級、厚生年金なら31の等級にあてはめることで求めることができます。例えば、東京都に住んでいて平均給与額が280,000円の労働者の場合、21等級にあてはまり標準報酬月額は280,000円です。
平均給与額280,000円とは、次の計算方法で求めることができます。4月:270,000円、5月:280,000円、6月:290,000円であるとすると、270,000+280,000+290,000=840,000円で、3で割った数が280,000円という計算です。ちなみに、標準報酬月額の報酬には残業手当も含まれますから、4・5・6月に残業を多くして平均給与額が上がれば最終的には社会保険料の上昇に繋がります。
支払基礎日数が17日未満の月は除外する
標準報酬月額の計算方法は上記の通りですが、労働日数が他の月よりも少ない場合もあります。給与計算の対象となる労働日数を支払基礎日数と言いますが、支払基礎日数が17日未満の月は除外します。例えば、4月の支払基礎日数が17日未満であれば4月を除外する訳です。その場合は5・6月についてのみ標準報酬月額の計算の対象とすることになります。
例外的な決定方法について
標準報酬月額の計算方法では4・5・6月の報酬の平均給与額を元に決定されますが、例外的な決定方法もあります。2パターンについて紹介していきます。
5月に入社した従業員
4月に入社した労働者については4・5・6月の報酬の平均給与額を元に、標準報酬月額を求めれば良いです。 5月に入社した労働者は5・6月の報酬の平均給与額を元にします。尚、前述した通り、6月入社の労働者について算定基礎届は不要です。
4月・5月・6月の全ての支払基礎日数が17日未満だった
4・5・6月について、支払基礎日数が17日未満については除外すると説明しました。しかし、 4・5・6月の全ての支払基礎日数が17日未満だったということも想定されます。こういうケースでは、4・5・6月のうち15日以上17日未満の月を元に標準報酬月額を求めます。4・5・6月のうち15日以上の月がない場合は、以前の標準報酬月額を使用します。
算定基礎届の提出について
算定基礎届の提出についてまとめます。
提出期間
提出期間はその年の7月1日~7月10日まで。提出先は年金事務所または健保組合となります。算定基礎届の届出用紙は毎年6月に年金事務所から送られますので、そちらを使って提出して下さい。
算定基礎届の届出用紙には労働者の個人情報が印字されていることがあります。それらに誤りがないかを確認し、個人情報に修正情報があれば訂正していくことになります。
提出方法
企業は、7月1日~7月10日までの間に、算定基礎届と共に算定基礎届総括表を提出。窓口や郵送による提出はもちろん、インターネットを通じた提出も可能です。電子政府「e-Gov」によって提出します。インターネットの他、電子媒体による提出も可能。
まとめ
算定基礎届は労働者の社会保険料を求めるための資料です。そのため重要性は高く、間違いのないように進め、7月1日~10日の間に確実に提出したいところです。記事で記述したように、算定基礎届の対象となる労働者、対象とならない労働者について、また、標準報酬月額の計算方法についても見極めておきましょう。