社会保険労務士の仕事内容
社会保険労務士の仕事内容は大きく分けると1号業務・2号業務・3号業務の3つ。どんな業務かを具体的に説明します。
【1号業務】書類手続き代行
1号業務は書類手続き代行業務です。労働・社会保険等の手続きを行う業務が該当します。労働基準監督署・年金事務所等に提出する書類を会社に代わって社会保険労務士が作成する業務を言います。
尚、1号業務は社会保険労務士の独占業務であり、もし社会保険労務士でない人が1号業務を行って報酬を得てしまえば、その人は1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科されます。ただし、弁護士は、弁護士になりさえすれば社会保険労務士資格を有していることとされますので登録すれば、1号業務を行っても罰則規定は適用されません。
【2号業務】帳簿書類作成
2号業務は帳簿書類作成業務です。就業規則・賃金台帳の作成業務等が該当します。1号業務と2号業務が社会保険労務士に対する一般的な仕事内容のイメージではないでしょうか。
1号業務同様、2号業務も社会保険労務士独占業務であり、社会保険労務士でない人が2号業務を行えば1号業務同様の罰則が科されます。弁護士の規定についても同様です。
【3号業務】人事労務コンサルティング
3号業務は、人事労務コンサルティングです。こちらは社会保険労務士の独占業務ではありません。社会保険労務士の資格を持たない人材マネジメントのコンサルタントも、人事労務コンサルティングを行うことができます。
人事労務コンサルティングで扱われる問題として、以下のようなものが挙げられます。
・労働問題
・人事制度再構築問題
・同一労働同一賃金に関する制度問題
・人材開発問題
例えば社会保険労務士が扱う賃金問題を具体的に考えてみましょう。企業は、従業員の賃金をどう設定したら良いか。どう設定すれば従業員が満足し、そして採用にも強みとなり、そして経営をうまく実行することができるのか。そういった企業の悩みに対して社会保険労務士はコンサルティングを駆使してソリューションを提供するのです。法律の知識だけではこなせない難しい仕事ですが、それだけにやりがいがあると言えます。
社会保険労務士が求められる背景
企業から社会保険労務士が求められる背景を考えてみます。求められる背景として3つが考えられます。
アウトソーシングの必要性
企業は間接部門のアウトソーシング化を求めています。その理由は、企業は、売上に直接的に貢献しない間接部門をできる限りスリム化したいと考えているからです。社会保険労務士の領域である人事労務も、企業のアウトソーシング化の例外ではありません。
企業は、単に人件費を削減したいということよりも、労働生産性を向上させるためにアウトソーシングできる業務は外に出したいと考えています。政府による働き方改革推進が間接部門のアウトソーシング化を後押ししています。
労務問題を解決するため
労務問題は複雑化し、また、解決するための難易度が高まっています。企業には、自社で労務問題を解決するというよりは、社会保険労務士のような専門家に解決を依頼した方がスムーズに解決できるというニーズがあります。頻繁に欠勤を繰り返す社員をどう扱ったら良いか、給与計算を効率化するにはどうしたら良いか等、労務にまつわる問題を社会保険労務士が解決します。
人材マネジメント領域の問題を解決するため
人材マネジメントとは、人事制度・組織開発・人材開発・採用まで、ヒトに関わる広範囲の領域をマネジメントすることを言います。この人材マネジメント領域の問題を解決することが社会保険労務士には求められています。
例えば、人手不足が叫ばれている昨今、優秀な人材は引く手あまたでどこの企業も欲しがっています。それでも採用を強化したいと考える企業の相談に乗り、処方箋を書いてあげるのが人材マネジメント領域における社会保険労務士の仕事です。
社会保険労務士の働き方
社会保険労務士はどのような働き方をしているのでしょうか。勤務社労士と独立社労士の2つに分けて説明します。
勤務社労士
勤務社労士は、社労士事務所や企業に勤める社会保険労務士のことです。企業に勤める場合は、社会保険労務士試験に合格しているだけで登録していないケースもあります。登録しないと社会保険労務士を名乗ることはできませんが、社労士に合格していることが知識を有していることの証となります。
企業の勤務社労士は人事部に配属されることで力を発揮します。社会保険労務士の知識は人事労務のスペシャリストと称されるのに十分ですから、労務問題や人材マネジメント領域の問題に対して的確なアドバイスをします。
独立社労士
独立社労士は、社会保険労務士が社会保険労務士事務所を独立開業したことを言います。自分の事務所なので営業活動や経理・財務まで自身でまかなわなくてはなりません。一国一城の主ですから自由な仕事ができるでしょう。
気になる社会保険労務士試験の難易度は?
社会保険労務士になるには、社会保険労務士試験に合格しなくてはなりません。どのくらいの難易度なのか説明します。
試験の実施時期
まず、試験の実施時期ですが、毎年8月に行われています。午前中に選択式試験、午後に択一式試験が行われます。
合格率は3~10%の難関試験
社会保険労務士試験の合格率は年によっても違いますが、3~10%程度の難関試験です。
社労士試験の試験科目
社会保険労務士試験の試験科目は以下の通りで、法律の他に一般常識等、多岐にわたります。論述式の試験はないのですが、試験科目が多く、税理士試験のように科目合格が認められませんので、一気に全科目に合格する必要があります。社会保険労務士試験は過去問から出題される傾向にあるので、勉強方法は過去問を解くことになります。
・労働者災害補償保険法
・雇用保険法
・健康保険法
・厚生年金保険法
・国民年金法
・労務管理その他の労働に関する一般常識
・社会保険に関する一般常識
独立開業の社会保険労務士の年収
社会保険労務士として独立開業した時、年収はどれくらいもらえるかを説明します。
平均年収
社会保険労務士の平均年収は約500万円です(平成30年賃金構造基本統計調査より)。年によって違いますが概ね500万円前半に収まっています。一方、民間企業の平均年収は440万円程度でした(平成30年度民間給与実態調査)ので、社会保険労務士は一般的なビジネスパーソンよりは稼げる職種と言えるでしょう。
社会保険労務士に登録するまでの流れ
社会保険労務士の資格を取ったら、全国社会保険労務士連合会に登録する必要があります。ただし、登録するためには資格を持っているだけでは足りず、2年間以上の実務経験が必要です。企業で実務経験を得られない場合は全国社会保険労務士連合会の講習を受講することで代えることもできます。
登録費用
社会保険労務士の登録には次の費用がかかります。
・手数料:30,000円
・全国社会保険労務士連合会への年会費・入会金
まとめ
社会保険労務士は人事労務のスペシャリストです。1号業務・2号業務の独占業務の他、人事労務コンサルティングの3号業務まで幅広い仕事をします。開業する社労士ばかりでなく、企業や事務所に勤務する社労士もいます。環境変化から、社労士が求められるニーズはますます増えていくものと思われます。