働き方改革が叫ばれている昨今ですが、未だに過酷な残業が発生している企業も少なくありません。また、中には深夜残業が発生している企業もあるでしょう。この記事では、深夜残業に関してその定義から賃金の計算方法、深夜残業を減らすためのポイントなどについて解説します。ぜひ参考にしてみてください。
深夜残業の定義は?
まずは、深夜残業の定義がどのようなものなのか確認していきましょう。
深夜残業が該当する時間帯
深夜残業は、時間外労働(残業)と深夜労働を組み合わせて働くことです。
時間外労働とは、1日の労働時間(一般的には8時間が定時とされる)を超えて働くことで、深夜労働とは午後10時から翌午前5時の間に働くことです。つまり、1日の労働時間超えて働いている時間が午後10時〜翌午前5時までの間だと深夜残業ということになります。
1.5倍の賃金
深夜残業は、通常の賃金の1.5倍を支払うことが労働基準法によって定められています。
この内訳は時間外労働に対する賃金が通常の1.25倍、さらに深夜労働に対する賃金が通常の1.25倍、合わせて1.5倍となっています。
管理職は手当をもらえない?深夜残業の4つの注意点
管理職というと、基本的に残業代は発生しません。では、深夜残業の場合はどうなのでしょうか?引き続き解説します。
管理職も深夜残業手当はもらえる
管理職の場合、残業代は発生しませんが、深夜労働に対する賃金は発生するため、通常よりも割増の料金が支払われることになります。
企業の担当者は「管理職だから深夜でも通常の賃金でOK」と勘違いしないように注意してください。
深夜残業は終電を逃してから発生するものではない
意外と勘違いされているのが「深夜残業=終電を逃したら発生」というものです。
深夜残業は深夜労働と時間外労働が合わさったものであり、終電の有無は一切関係ありません。
また、多くの地域でまだ電車がある午後10時以降も深夜残業になるため、やはり終電と深夜残業は関係ないのです。
さらに、労働者の中には深夜の時間帯(終電が終わった時間帯)を定時として働いている人もいます。
この人たちは深夜労働に対する賃金は発生しますが、時間外労働ではないので残業代は発生しません。
妊婦には深夜残業の拒否権がある
今では考えられないことかもしれませんが、平成11年3月までは女性の深夜労働は原則として禁止されていました。しかし、平成11年4月以降は男女に関係なく深夜労働ができるようになっています。
ただし、妊婦の方に関しては現在でも深夜労働に対する拒否権を持っています。そのため、深夜残業をしてほしいと会社から要請されても妊婦の方であれば拒否することができます。
みなし労働時間制でも深夜残業手当は出る
みなし労働時間制とは、何時間勤務しても所定の労働時間分だけ働いたことになる制度のことです。例えば「月20時間の残業代を含む」というように一定の残業時間分の賃金が月給に含まれているケースが該当します。
この場合、残業代や深夜残業手当は発生しない、と考える人もいるかもしれませんが、みなし労働時間制でも法定労働時間を超えている場合はその勤務分に関しては残業代が発生します。もちろん深夜残業手当も発生します。
深夜残業を減らすために必要なことは?
深夜残業手当が支給されるとしても、やはり深夜残業はできるだけ発生させたくないものです。そこで、ここでは深夜残業を減らすために必要なことについて解説します。
メンバーや部下に仕事を割り振る
残業時間が多い人の中には、1人でたくさんの仕事を抱えている人も多いのではないでしょうか。そのような場合は、周囲の社員や上司にサポートを求め仕事を割り振るようにしましょう。
また、社員によっては自分1人でなんとかしようとして周囲に何も言わない人もいるかもしれないので、朝礼などのタイミングで今現在どのような仕事を抱えているのか、納期はいつなのかといった点を確認するのも1つの方法です。
業務の効率化を図る
日々のルーティンワークの中には誰でもできる簡単業務であるものの絶対にやらなければいけない業務というものがあるのではないかと思います。
このような業務の効率化を図るのも残業時間を減らすために重要です。例えばエクセルのマクロやシステムなどを活用して作業を自動で行えるようにする、アウトソーシングを利用して作業を外部にお願いするといったことが挙げられます。
ルーチンワークに割いていた時間に空きができれば、その分重要な業務に注力することができ、業務効率もアップするでしょう。
PDCAサイクルを回す
残業がなかなか減らない人の中には、減らない状況をそのままにしている人も少なくないはずです。
残業は意図的に減らそうとしなければなかなか減りません。そこで、PDCAサイクルを回してみましょう。PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)Check(評価)、Action(改善)の4つの段階を何度も繰り返すことで業務の改善を行うことです。
例えば残業時間を減らすための計画を考え、実際に実行し、その結果を振り返り、改善していくといった形です。
労働基準監督署に相談する
何をやっても残業時間が減らない、会社が残業を減らそうとする姿勢を持っていない、といった場合は労働基準監督署に相談するのも1つの選択肢です。
ちなみに、労働基準監督署には長時間労働の他にも賃金や休日などに関するトラブルも相談することができます。
深夜残業の計算方法について
ここからは、深夜残業の計算方法について解説します。実際に例を挙げながら計算するので参考にしてみてください。
時間当たりの賃金の確認
計算するにあたってはまず、時間当たりの賃金を確認する必要があります。例えば、1日8時間、1ヶ月に20日働いて320,000円を給料としてもらった場合(残業なし)、時間当たりの賃金は2,000円ということになります。なお、先ほども説明しているように、時間外労働は1.25倍、深夜労働も1.25倍で支払われ、深夜残業となると1.5倍の賃金が支払われます。
事例に基づいた深夜残業の計算
実際に例を出しながら深夜残業代を計算していきましょう。ここでは、以下の条件で計算します。
勤務時間:午前10時から翌深夜2時(定時は8時間勤務)
時給:1000円
上記の条件をもとに計算をすると以下のようになります。
- 定時の労働時間の時給:1,000円
- 時間外労働の時給:1,250円
- 深夜残業の時給:1,500円
また、労働者の中には変則的なシフトで働いている人もいます。以下のような条件の場合、時給は勤務時間の中で何度か変わることになるので注意が必要です。
勤務時間:19時から翌午前6時まで(定時は8時間勤務)
時給:1,000円
上記の条件をもとに計算をすると以下のようになります。
- 19時〜22時まで:1,000円
- 22時〜4時まで:深夜労働で時給1,250円(定時なので残業手当はつかない)
- 4時〜5時まで:深夜残業で時給1,500円(4時以降は定時を過ぎていて、なおかつ深夜労働時間であるため)
- 5時〜6時まで:残業時間で1,250円(定時を過ぎているものの、深夜労働時間ではないため)
このようなケースは給与の計算が複雑になるため、事前に深夜手当が固定で支払われることがよくあります。
まとめ
今回は深夜残業について、その定義から賃金の計算方法、さらには残業を減らすためのポイントなどについて解説しました。深夜残業は深夜労働と時間外労働を組み合わせたもので、賃金も通常の1.5倍になります。管理職も賃金の割増対象となる他、妊婦の方は深夜残業を拒否できるなど様々な特徴を持ちます。企業の労務担当者の方は、今回ご紹介したポイントをぜひ覚えておくようにしてください。