年功序列のメリットは?成果主義との違いや廃止した企業の事例

年功序列の記事

日本特有の雇用制度である年功序列は、現代でも多くの企業に取り入れられています。成果主義を取る企業が増えている中で、未だに年功序列はメリットがあると考える企業は多いようです。今回は、年功序列と成果主義の違い、メリット・デメリットについて解説していきましょう。
目次

年功序列(年功序列賃金)とは?

年功序列(年功序列賃金)とは?
年功序列とは、労働者の勤続年数や年齢を重要視して、役職や賃金を決定する人事制度です。

一つの会社で勤続年数が長くなり、年齢が高くなるほど、経験や能力が上がると考えられています。

企業にとって大切な人材となるため、自動的に一定の役職を得られる安定性のある雇用制度です。

日本独特の風習である年功序列は、戦後日本の経済発展を支えてきました。

年功序列の意味

「年功」とは長年にわたる功績、積み重ねられた経験、長年の訓練で習得した技術の意味があります。

日本型雇用システムは、「年功序列」と「終身雇用」が長年日本経済を支えてきました。

終身雇用とは、解雇事由に当たるような特別な理由がない限りは社員を解雇せず、定年年齢まで雇用し続ける人事制度です。

年功序列の実態は?

戦後、日本の雇用システムとして長年にわたって採用された年功序列は現代も続いているのでしょうか?

「日本の人事部 人事白書2017」の調査によれば、年功序列を導入している企業は46.7%、成果主義を導入している企業は74.5%となっています。

年功序列が主流だった日本も、急速なグローバル化により、徐々に成果主義へ切り替わっている様子が見て取れます。

厚生労働省「若年者雇用実態調査」のデータでは、新卒と35歳未満の若手社員は半数近くが1年以内に退職しており、定着率の低さが大きな課題です。

朝日生命調べの意識調査の結果によれば、約70%の従業員は成果主義を重んじている企業を望んでいるようです。

トヨタの社長による「終身雇用は難しい」という発言

 
雇用年数が上がるにつれて賃金が上昇する年功序列は、企業にとって大きな人件費の負担となります。

安定した業績向上が見込まれない企業の場合は、年功序列・終身雇用を継続することが困難となるのです。

トヨタは「今後は年功序列・終身雇用を続けるのは難しい」と判断し、継続的な業績向上、企業成長に向けて路線を変更しています。

年功序列のメリット・デメリット

年功序列のメリット・デメリット
勤続年数や年齢による人事制度「年功序列」にはメリット・デメリットがあります。

年功序列のメリット

年功序列は従業員の会社への帰属意識が高まり、定着率アップに繋がるメリットがあります。

従業員は昇進、昇格するためには長く勤務することと明らかですから、離職率が低下します。

勤続年数や年齢に従って役職や賃金が上昇する人事評価システムですから、人事評価制度の基準や賃金体系が管理しやすいこともメリットです。

年功序列のデメリット

年功序列制度のデメリットとしては、社員が高年齢化すると人件費の負担額が大きくなることです。

向上心があり、優秀な人材は評価されず、成果主義に基づく人企業を求めて離職しやすくなります。

年功序列と成果主義

年功序列と成果主義
「年功序列」と比較される「成果主義」とは従業員の能力や会社に対する貢献度が評価される人事制度です。

成果主義では、勤続年数や年齢に関わらず、仕事の成果によって昇進や昇給などの人事が決定されます。

成果を出せない場合は降格や給与も下がり、最終的には解雇される可能性もあるシビアな世界です。

近年の急速なグローバル化やビジネスの多様化により、日本でも企業の利益に貢献できる人材を優遇する成果主義を採用する企業が増えてきています。

成果主義のメリット

仕事の成果を重視する成果主義は年齢、勤続年数、学歴は評価の対象とはなりません。

成果主義のメリットは、仕事で成果を上げることが昇格・給与アップに繋がると明確になり、若手人材の労働意欲の向上に繋がることです。

成果主義のデメリット

成果主義のデメリットとしては、客観的な評価基準の設定が難しい場合もあり、人事評価が難しくなることです。

営業部門は成果が明確な数字で現れますが、研究部門、事務、法務などの部門は成果を評価するのが難しくなります。

先行投資プロジェクトも成果が出るのは先の話になるので、現段階での評価は難しいのです。

成果主義を導入している企業の事例

トヨタ自動車は、技能職である工場労働者に対して、成果主義賃金を導入して話題になりました。

労働者を「規律性」「協調性」「積極性」「責任性」の4項目で毎月評価し、「技能発揮給」を新設しています。

つまり、評価次第で毎月賃金が変わる成果主義となりました。

年功序列を廃止した企業の事例

年功序列を廃止した企業の事例
ここからは、他にも年功序列を廃止した企業の事例を見ていきましょう。

日立製作所

日立製作所は国内の課長以上の管理職を対象に、年齢や勤続年数に応じて役職や給与を自動的に引き上げる「年功序列」を廃止しました。

仕事の成果に応じて給与を支給する成果主義の仕組みに切り替え、徐々に一般社員への導入も検討しています。

パナソニック

パナソニックは人事・賃金制度を見直し、「日本型雇用」の終身雇用と年功序列を原則廃止しました。

2016年4月から管理職クラスの社員、一般社員を対象に仕事の役割や成果を給与に反映させる成果主義を適用しています。

パナソニックの創業者である松下幸之助氏は「従業員は家族と同じ、企業は従業員とその家族の面倒を死ぬまで見る」という理念を打ち出していました。

日本型雇用である終身雇用と年功序列を初めて生み出した企業として知られています。

日本型雇用を忠実に守る社風がありましたが、時代の流れが来ているのかもしれません。

ソニー

ソニーも日本独特の雇用体系が機能しており、従業員の「愛社精神」を育み、ソニーという企業が成長したといえます。

しかし、近年の競争激化により、正社員の管理職が占める割合を従来の40%から20%に減らすと発表。

さらに、日本の雇用制度の中核の一つである年功序列をなくすと公表しました。

組織をスリム化してコストを削減し、意思決定の速度を高めることを目指していると言われいます。

まとめ

年功序列のまとめ
日本独特の人事制度である年功序列と終身雇用には多くのメリットがあり、日本の経済を支えていました。

しかし、経済のグローバル化や急速なIT化に伴い、
年功序列と終身雇用を廃止する企業が増えているのが現状です。

努力して成果を出しても評価してもらえない企業に在籍するよりは、早く実力を認めてもらいたいと考える従業員が多いようです。

従来よりも若手社員の転職回数も増えており、4人に1人は「転職したい」と考えています。

多くの企業にとって、人事制度について見直す転換期を迎えているのかもしれません。

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