最近、「人財」という表現がよく使われており、「人財採用部」「人財開発部」といった部署名も見かけるようになりました。
従来の「人材」という表記よりも「人財」の方が会社にとって有益な意味合いがあります。
今回は、企業の人財育成の取り組みやメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
人財とは
「人財」とはその字の通りに「人」の「財」という意味があり、「企業にとって有益な従業員であること」です。
人財という言葉は、投資対象として適切かというヒューマンキャピタル(人財)から産まれた表現です。
人は企業の財産になる、人は宝であるという価値を意識した使い方をします。
人財と人材の違い
「人財」と「人材」の意味は大きく変わりませんが、「人財」には「財=宝」という字が使われており、企業の思いが込められているのが特徴です。
「人財」は企業が従業員を大切に思う姿勢が込められており、今後の成長を期待できる従業員を指すこともあります。
「財」と聞くとお金や金銭的なイメージがありますが、「人財」は「価値」を表す言葉として使用さています。
一方で「人材」とは、企業にとって役に立つ能力を持った人、企業に貢献してくれる素養がある人を指します。
「人財」と「人材」の唯一の違いは、代替が利く人員であるか・ないかという点です。
「人材」は他に業務遂行能力がある人がいれば代替できますが、「人財」は代替がきかない程、会社に貢献している宝のような人をいいます。
人財開発とは
人財開発とは、企業が従業員に対して教育や研修を行い、企業の戦力となる人材を育成していくこと。
企業が従業員に対して求める能力として「知識」「スキル」「態度」の3つの要素があります。
人的資産である従業員に対して、教育や訓練などを行い、人材のパフォーマンス向上を目指します取り組みやプログラムのことをいいます。
人財開発部門では、研修や講習、演習、実習、OJT、キャリア開発といった様々な形があります。
人財育成について
ここからは、企業が人財育成を行うメリット・注意点を見ていきましょう。
人財育成とは
人財育成とは、ヒト資源を他の資源(モノ・カネ・情報)とどう組み合わせて、最大の成果を出すことです。
ヒトを資源とみて長期にわたって価値を生み出すものであり、生産のための貴重な元手と考えています。
人財育成は、社内の重要な資源である人財を育ててながら様々なリターンを期待しているのです。
人財育成を行うメリット
人財育成は、人財を企業内での適材適所に配置し、最大限に能力を発揮してもらうことが目的です。
例えば、病院には様々な技術機器が多く投入されているため、今後、「人材」は機械に取って代わられていくでしょう。
しかし、「人財」はかけがえのない価値を持つため、代わりになるものはない宝となるのがメリットです。
人財育成を行う際の注意点
人財育成の取り組みは、業種や業務内容によって大きく異なりますが、企業が人を育てるという姿勢が重要です。
まずは、人事担当者が従業員の特性や能力、経験・スキルなどを把握した上で、育成プログラムやトレーニングを計画・実行することが大切です。
各企業の人財育成の取り組み
ここからは、人財育成の取り組みにチャレンジしている企業例を見ていきましょう。
1. さくらインターネット
さくらインターネット株式会社は、インターネットへの接続サービス、サーバ設置および管理、各種情報提供サービスなどを提供しています。
半年かけて社内講師を育成する「寺子屋プロジェクト」を設置して、教え合う組織体制を整えました。
教えてほしい事柄から講師を公募し、立候補した社員は、半年かけて講義のためのスキルを高めています。
上司との1on1ミーティングでは、従業員一人ひとりがやりたいと思っていることをサポート。
多種多様な業務の中でもお互いに教え合う組織風土
を目指しています。
2. スーパーホテル
株式会社スーパーホテルは、国内124店舗、海外3店舗のホテルチェーンを展開しています。
自社の理念と行動基準をまとめたクレド「Faith(フェイス)」を作成し、従業員が自ら課題を設定しチェックする仕組みを導入しています。
本社が仕組みを制作し、「スター制度」、「アテンダント評価表」、「トレーニングログ」などのツールを活用して各店舗での育成をサポート。
実際のフロント業務を想定したロールプレイや1分間スピーチで接客を競う「スーパーホテルグランプリ」を開催し、人財育成に役立てています。
3. 松竹
松竹株式会社は実写・アニメ・特撮映画、海外製作映画の宣伝・配給、劇場・シネコンの運営などを行っています。
社内外に向けたコミュニケーション力向上のため、「笑い」を取り入れた研修「笑育(わらいく)」を導入。
お笑い芸人を講師に、ワークと理論を織り交ぜながら、心に残る自己紹介の仕方、レジリエンス、創造力を養うユニークなプログラムを実施しています。
4. ガイアックス
株式会社ガイアックスはソーシャルメディア・シェアリングサービス事業などを展開しています。
社員の提案からLGBT支援企業への出資が決まり、全社員を対象にLGBT研修を実施しています。
LGBT への理解を深め、ダイバーシティを進めるために「LGBT支援宣言」を発表。
結婚祝い金、慶弔休暇などの福利厚生規程、採用ガイドラインの見直し、エントリーシートの性別記入欄は「任意・自由記述」式に改めています。
5. SCSK
SCSK株式会社は、部長・課長を対象に、組織のリーダーとして必要なマインド・スキルを学ぶため
約1年間のプログラムを実施しました。
次世代リーダーの育成に向けて、東日本大震災の被災地への訪問、経営全般の基礎知識、リベラルアーツを学ぶ研修を行い、リーダーに必要なマインドを学びます。
「エグゼクティブ・ダイバーシティ・プログラム(EDP)」は女性管理職を対象とした教育制度。
将来の男性本部長候補と女性部長候補を対象とした「エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)」も好評です。
6. ドリコム
株式会社ドリコムは、スマートフォンコンテンツやインターネット広告などのサービスの企画・開発を展開しています。
他社と社員を交換する「社会人交換留学」を実施、
組織体制や社風の違い、業務の進め方、会議の仕方などの違いを知るきっかけとなっています。
7. ソフトバンク
ソフトバンクグループ株式会社は、国内通信事業のソフトバンク、ヤフーなどを傘下に持つ企業です。
30代のキャリア研修「30代から描くキャリアビジョンワークショップ」は、定員12人、講師2人体制できめ細かく対応しています。
企業内大学「ソフトバンクユニバーシティ」は大半を社内講師が担当しているのが特徴です。
「40代のためのキャリアデザインワークショップ」は、変化の激しい時期を乗り越えてきた自分の経験に自信を持ち、強みを再確認してもらう試みです。
まとめ
最近注目されている「人財」という言葉は「人材」よりも「かけがえのない財産、宝」といった意味合いが含まれています。
上司や後輩、取引先との良好な人間関係の構築、モチベーション向上の維持が期待できるのがメリットです。
今後は、「人財」を最大限生かしてこそ企業が成長していくことを理解しながら、人財育成のためのトレーニングを積極的に採用していきましょう。