大企業病とは
大企業病とは派閥政治や縦割りの組織のため意思決定が遅かったり、仕事の仕方が非効率なのに改善せず放置していたりする状態をいいます。大企業に多い症状といえます。
大企業病の定義
大企業病の定義は企業の体質によって様々です。派閥政治・縦割り組織のために意思決定が遅かったり、保守的で非効率な業務体質になったりしている状態は大企業病といえ、大企業に多いものの中堅・中小企業・ベンチャー企業にも見られる症状です。
大企業病の症状
大企業病の症状について具体的に解説していきます。
意思決定が遅い
縦割りのヒエラルキー組織では、意思決定が遅くなりがちでこれが大企業病の症状の1つです。例えば少額の稟議を決裁してもらうにしても多くの決裁者が絡むことがあります。あるいはアイディアをカタチにしたいと提案しても、直属の課長だけでなく部長、役員、あるいは他部署の意見を聞いてから決めることがあります。
何かを決裁したり決めたりする際に他者の多様な意見を聞くことで、自分では気付かない視点や他者の知見を得られるメリットになりますが、どうしても意思決定が遅くなりがちとなります。意思決定が遅くなれば、問題解決や、経済やビジネス環境の変化に対応できなるリスクにさらされてしまいます。
現場やお客さんの声が軽視される
大企業病は現場で働く労働者やお客さんよりも組織のルールを優先する余り、現場やお客さんの声を軽視しています。派閥政治や非効率な業務体質などは、お客さんにとっては何ら関係ありません。また、現場で働く労働者にとっては働きづらいですから、早急に改めてもらいたいことですね。それにもかかわらず症状を放置するのが大企業病の恐ろしいところです。
無駄な会議や形式的な手続きなどが多い
延々と続く無駄な会議、「これって何の意味があるの?」と思うような手続き。無駄な会議や形式的な手続きが多いのであれば、改めたり廃止したりできれば良いのですが、無駄だと分かっても放っておいたままであるのが大企業病です。
リスクを拒否する人が多い
大企業病は組織風土となって現れます。従って、その企業で働く人材も大企業病にどっぷり浸かってしまいますので、非効率な業務体質であっても疑問を持とうとしなくなります。また、派閥政治や意思決定の遅さがあるので、「この仕事は自分の担当ではない」と事なかれ主義になりがちです。事なかれ主義はリスクをとって仕事をする風土とは逆ですから、リスクを拒否する人が増えてしまいます。
大企業病の原因
大企業病の原因は大きく分けると5つあります。逐一確認していきましょう。原因を確認していくと決して大企業だけに生じる病ではないことが分かると思います。
業績の安定
業績が安定すると、業績を安定させたのは組織のルールだと感じるようになります。そうなると組織のルールは変えずに、むしろルールをより複雑なものへと再構築するようになってしまいます。ルールが複雑になればなるほど、非効率な業務体質となり、派閥政治や意思決定の遅さにつながっていきます。業績が安定したからといって手を抜くことなく組織内を変革していければ良いのですが、そうできないところに業績の安定というぬるま湯につかる人間の怠惰さであり、業績の安定が大企業病の原因を作る理由となっています。
ルールの増加
業績の安定が組織のルールを複雑化させることと関連して、ルールが複雑化するだけでなくルールが増えることもあります。業績・組織を維持するためにルールが増えていく訳ですね。ルールが増えるとそのルールを守っていくことが優先され、業務の効率化や顧客のために働くこと等は二の次になってしまいます。ルールに執着する人材が増え、結果として大企業病がまん延することになります。
評価制度への不満
仕事におけるチャレンジ精神は称賛されるべきものですが、大企業病が起こりやすい会社ではチャレンジ精神を評価してくれません。リスクを負ってまでやり遂げた業務に対してまともな評価をしてくれなければ、モチベーションが下がってしまいますよね。チャレンジして成果を確保したのに評価されなければ、評価制度への不満が起こります。そうなると「どうせやっても評価されないんだ」と思う人材ばかりの組織となり、大企業病を生み出す原因となります。
労働環境の悪化
キツいノルマが課せられる労働環境では、縄張り意識の強いセクショナリズムを生みます。ノルマ達成のために不正が起こりやすくなりますし、セクショナリズムのために派閥政治が生じたり非効率な業務体質が起こったりします。日々のノルマをこなすだけの労働はチャレンジ精神も阻みリスクを拒む人材を生み出します。労働環境の悪化が大企業病の原因を生むゆえんです。
組織の拡大によるコミュニケーション不足
組織が拡大していくと、部署間のコミュニケーションが減じられていきます。また、1人で仕事をすることができる体制が整えば、部署内でもコミュニケーションが不足していきます。他者からの知見、アイディア、あるいはフィードバックは、自分の仕事の非効率性を解消したり、改革に繋がったりします。しかし組織の拡大によりコミュニケーションが不足してしまうと、視野が狭い状態で仕事をすることになるので大企業病に繋がりやすくなります。
大企業病の事例や対策
大企業病の事例や対策にはどんなものがあるか、パナソニック、Google等の実際の企業を元に解説します。
パナソニックの事例
パナソニックは日本を代表する総合電機メーカーです。戦前から続く大手企業ですが、パナソニックにも大企業病に冒されていた時代がありました。どのように大企業病を克服したのでしょうか。
パナソニックの浜松誠氏はONE JAPANという社内組織を立ち上げました。ONE JAPANとは幹部社員と若手社員との交流会です。「どうせやっても無駄だ」「評価されない」といった悪しき大企業病を払拭するため、ONE JAPANでは挑戦する文化を作ることを目指します。単なる交流会で終わらせず挑戦できる企業文化へと変革させていきました。現在ではパナソニックの垣根を超え、年1回、ONE JAPANカンファレンスを開催し、NTT・トヨタ自動車・アステラス製薬などの企業まで活動が広がっています。
三菱自動車の事例
三菱自動車はリコール隠し問題や燃費偽装問題等、様々な問題を起こして企業生命が危ぶまれ、現在では日産のグループ企業になっています。リコール隠し・燃費偽装問題の原因は、問題が生じているのに隠ぺいし批判を許さない企業体質からきています。まさに大企業病の問題といえます。
Googleの事例
Googleは社員6万人を要する大企業。Googleが大企業病を防ぐための対策として講じたのは社内文化を育てることです。カルチャークラブと呼ばれる従業員の有志で作られたグループが世界中にあり、社内文化を育てるためにはどうしたら良いかを考え、また、働きやすい環境作りを行っています。
大企業病を改善するには
大企業病を改善するにはどうしたら良いか?その手法を紹介していきます。
経営体制や意識の刷新
大企業病をまん延させたのが経営陣と考えると、経営陣を一掃したり彼ら彼女らの意識を刷新したりすることが改善策として挙げられます。意識の刷新については、経営陣に現場を見てもらい保守的で非効率な業務体質がいかに問題かを認識させることが効果的です。
組織体制の見直し・縮小化
組織が拡大することでコミュニケーション不足になり、それが結果として大企業病を生み出します。従って、組織体制を見直しコンパクトにすることも大企業病を改善する上で対策と成り得ます。
無駄なルールや習慣をなくす
大企業病がルールの複雑化・増加によって起こることを考えれば、無駄なルールや習慣をなくすことが大企業病を改善するためには手っ取り早いです。
人事評価などの評価体制を見直す
チャレンジして、リスクを取ってでも成果を出したことを正当に評価してもらえなければ大企業病に陥りやすくなります。従って、チャレンジして成果を出したことに対しては素直に評価してもらえる評価制度になるように改善することが大企業病を改善する手段となり得るでしょう。
挑戦や失敗を許容する風土・組織をつくる
挑戦も失敗も許さない風土・組織では人材も思い切った仕事ができません。縦割りのヒエラルキー組織に安住してしまいます。そうならないために、挑戦を奨励し失敗を許容する風土・組織をつくり大企業病を改善していきます。
まとめ
大企業病は業績の安定・ルールの増加・評価制度への不満・労働環境の悪化・組織の拡大によるコミュニケーション不足から生まれています。大企業病とは言いますが、上記の事態にあてはまる企業であれば、大企業病に陥る可能性を秘めています。記事では大企業病を克服した事例、そして対策についても載せました。「自分の会社は大丈夫かな?」と診断して頂き、少しでも大企業病的な事態を掴むことができましたら改善策を講じて頂きたいと思います。