マネジメントレビューについて
マネジメントレビューに関しては、その定義と規格の両方を確認しておくことが大切です。まずは、マネジメントレビューが重要な理由とともに、定義について詳しくみていきましょう。
マネジメントレビューとは
マネジメントレビューとは、これまでのマネジメント体制による成果や問題点を考察し、現在の状況と将来の展望、反省点などを把握する手法です。対象となる分野は様々ですが、主に商品やサービス、情報セキュリティーなどにおけるマネジメント体制を見直します。
マネジメントレビューが重要な理由
マネジメントレビューが重要な理由は、現在行っているマネジメント体制が適切かどうか把握する必要があるためです。問題のあるマネジメント体制に気づくことができず、そのまま経営を続けていると、大きなトラブルが発生する恐れがあります。商品やサービス、情報セキュリティーなどの分野は、いずれも信用が非常に重要です。誤ったマネジメント体制によってトラブルが起これば、該当の商品やサービス以外のものにも影響が及び、企業の収益が大きく低下する可能性があります。
さらに、競合他社との競争に負け、じわじわと売り上げが落ちていく懸念もあるでしょう。マネジメントレビューを行うことで、このようなトラブルを未然に防ぎ、商品やサービスなどの品質、安全性の向上につながるのです。
マネジメントレビューの規格について
マネジメントレビューによってマネジメント体制を見直すにしても、どのような見直せばいいかわからない方が多いのではないでしょうか。実は、正しく見直せるように、いくつかの規格が設けられています。その規格を満たせるようにマネジメント体制を見直すことが大切です。
どのような規格があるのか詳しくみていきましょう。
ISO 9001
ISO 9001は、商品やサービスの品質を一定に保ち、継続的に顧客に利益を与えることで満足度を向上させるための国際規格です。商品やサービスそのものの品質だけではなく、一定の品質の商品やサービスを生み出せる環境が整っているかも対象となります。
ISO 9001は世界170ヵ国以上で用いられているため、日本のみならず海外にも商品やサービスを発信している場合にも役立ちます。ISO 9001の取得には、業種や業態の条件は定められていません。また、認証取得までに約1年程度と、他の規格と同程度の期間で済みます。
ISO14001
ISO 14001は、単なる商品やサービスの品質を一定に保つための規格ではなく、平成4年に開催された地球サミットで議題として挙げられた「持続可能な開発」を実現するために設けられています。持続可能な開発とは、地球環境を壊すことなく、次の世代以降まで継続的に開発できるもののことです。資源を大量に使う開発は、持続可能な開発とは言えません。
ISO 14001を取得できれば、環境目標を達成していることを証明できます。地球環境に悪い影響を与える事業は、しばしば非難の対象となるため、取得しておくことが大切です。なお、ISO 14001に業種や業態の条件は定められていません。
また、認証取得にかかる期間は約1年です。
ISO/IEC 27001
ISO/IEC 27001は、企業が持つ情報資産の適切な維持や改善、リスク予防に関する国際規格です。情報を有効活用し、情報の価値を高めるとともに、情報漏えいなどのトラブルを未然に防げる体制の構築につながります。情報管理担当者だけではなく、その企業の全従業員がセキュリティー対策に取り組み、リスクを低減させることが大切です。
近年では、コンピューターウイルスや不正アクセスだけではなく、内部の従業員による顧客情報の流出が問題となっています。このような認証取得は、全従業員の情報の取り扱いに対する意識の向上につながるでしょう。
認証取得にかかる期間は約1年です。
マネジメントレビューを行うメリットや注意点など
マネジメントレビューは、正しく行わなければ十分な改善ができず、そのまま業務を続けることでトラブルが起こる恐れがあります。正しくマネジメントレビューができれば様々なメリットを得られるでしょう。
マネジメントレビューのメリットと注意点について詳しくご紹介します。
マネジメントレビューを行うメリット
マネジメントレビューを行うメリットは次のとおりです。
・商品やサービスの品質を一定に保てる
商品やサービスの品質が時期や会社の状況によって変動すると、顧客は会社に対して不信感を抱く恐れがあります。信頼関係の構築や商品やサービスの販売において欠かせません。どれだけ素晴らしい商品やサービスでも、品質が安定しなければ、そのメリットを十分に活かすことができないのです。マネジメントレビューによって商品やサービスの質を一定に保つことができれば、企業全体の信頼につながります。また、取引市場によっては、ISO規格の取得を義務づけているため、認証取得が急務なケースもあります。
・企業全体の業績アップにつながる
マネジメントレビューによって、これまでの活動を見直すことで、さらなる品質改善につながります。さらに、技術力や営業力の向上、コミュニケーションの円滑化など、企業力の向上も期待できます。その結果、企業全体の業績アップにつながるのです。
・従業員のモチベーションアップにつながる
働きやすさは、従業員のモチベーションに深く関係しています。働き方改革が叫ばれる昨今では、働きやすさに着目した制度の導入が急務と言えます。モチベーションが上がればパフォーマンスアップにもつながるため、結果的に商品やサービスの品質向上につながるでしょう。
マネジメントレビューを行う際の注意点
マネジメントレビューを行う場合、全従業員が確認できるように、チェックシートを作成する必要があります。一部の従業員や経営者層だけが結果を知っていても、十分な改善にはつながりません。また、目的が明確にならないままマネジメントレビューをしても、正しい方向性での改善が難しいでしょう。目的を明確化し、正しく改善することが大切です。
マネジメントレビューのやり方(インプット・アウトプット)
マネジメントレビューの方法は、インプットの後にアウトプットすることです。それぞれ、具体的な方法をご紹介します。
マネジメントレビューのインプットについて
各規格に設けられている項目に関して、情報を集めます。例えば、ISO 9001では次の情報の取得が必要です。
・内部および外部監査の結果
・顧客アンケート調査結果
・企業の活動と商品やサービスの適合性
・改善行動の状況
・トラブル防止策の実施状況
・前回のマネジメントレビューの結果に対する改善状況
・改善の提案内容
・組織再編や法律の改正などによって起こりえる影響
上記の情報は、経営者層や部門長などから取得する必要があるため、早めの行動が必要です。
マネジメントレビューのアウトプットについて
マネジメントレビューのアウトプットとは、インプットで取得した情報を元に改善することを指します。例えば、顧客アンケート結果を商品やサービスに反映させたり、社内の状況を整えたりします。また、前回のマネジメントレビューの結果に対する改善ができていない場合は、まずはそちらを進めなければなりません。
改善せずに次のステップに進むと、マネジメントレビューの効果が失われます。
まとめ
マネジメントレビューは、企業が成長し続けるために必要な施策です。規格に基づいて改善を繰り返すことで、収益性や安定性が高まります。自社の商品やサービスなどに応じた規格を確認し、できるだけ早く認証取得することが大切です。マネジメントレビューを企業の定期的に行う施策に盛り込み、企業力を高めていきましょう。