事業ドメインとは、企業が市場において競争優位性を保つための重要な経営戦略です。
安定的に売上・利益を上げるには、経営資源を有効活用して、経営戦略となる事業ドメインの設定が不可欠です。
この記事では、事業ドメインの意味や設定のポイント、事例をご紹介していきます。
事業ドメインについて
企業が市場で競争優位性を獲得するためには、経営戦略の一つとして事業ドメインの設定が挙げられます。
ここからは、事業ドメインの設定が必要な理由、市場セグメンテーションとの違いについて見ていきましょう。
事業ドメインとは？設定する目的は？
事業ドメインとは、企業が主力事業となる事業領域において、継続的に成長していくための重要な経営戦略です。
事業ドメインは、具体的には企業が経済活動を行う事業領域を意味しています。
事業ドメインの設定は、事業活動の範囲を設定して、必要な経営資源を投資するために大切です。
事業ドメインを設定することは、事業の将来性や可能性、顧客・技術・機能を軸としたコア・コンピタンスを正確に把握する目的があります。
その後、競争優位性を獲得できる市場調査を行い、適切な市場の選択をすることが求められます。
事業ドメインと市場セグメンテーションとの違い
事業ドメインの設定と似た言葉に市場セグメンテーションと企業ドメインがあります。
市場セグメンテーションとは、顧客の趣味や嗜好を分類し、市場を細分化した上で商品・サービスを展開する活動領域のことです。
近年は、顧客や消費者のニーズが多様化・複雑化しており、市場を細分化することは事業の効率化に繋がります。
市場セグメンテーションは「顧客に利益をもたらす」「競合他社に真似されにくい」「複数の市場・商品に推進できる」の3つの要素を含みます。
事業ドメインの設定が重要な理由
事業ドメインの設定は、会社の主力となる事業を把握して、経営資源を集中するために必要です。
事業ドメインを適切に設定すると、過度な経営資源投入の削除、本来主力とすべき事業に特化できます。
企業の成長に貢献するよう多角化な戦略、新たな顧客の獲得や新しい分野への進出にも繋がります。
近年は、ビジネスの多様化に伴い、顧客・消費者ニーズも高度化・複雑化しています。
企業が競争優位性を意識して、継続的に成長を続けるためにも事業ドメインの設定は重要です。
事業ドメインを設定する際のポイント
ここからは、事業ドメインを設定する際のポイントを見ていきましょう。
コア・コンピタンスの把握
コア・コンピタンスとは、自社の核となる技術、適性、能力、、特質を全て満たした自社能力のことです。
コア・コンピタンスは事業ドメインの設定に欠かすことができない要素です。
コア・コンピタンスの特徴を正確に把握し、事業領域を定めることは、競争優位性を発揮する多角化戦略のために重要視されています。
コア・コンピタンスと事業ドメインは密接な関係にあるといえます。
ケイパビリティの把握
capability（ケイパビリティ）とは、能力、才能の意味を持つ単語ですが、ビジネス用語としては組織としての能力や強みを指します。
例えば、業務遂行能力、高い品質の保持能力、効率性の高い商品生産能力など、持続可能な競争優位性が挙げられます。
KSFの把握
KSF（Key Success Factor）は事業成功のカギとなる要因のことをいい、戦略の目標達成を決定づける
重要な要素です。
KSFはフレームワークを活用して外部環境や自社の内部環境を分析し、抽出を行い、戦略立案に活用されます。
多様化する顧客ニーズの変化に対応して市場の優位性を確立するためには、KSFを抽出する必要があります。
成功する可能性が高い市場を選択する
事業戦略の成功を実現するには、競合他社との差別化を行い、競争優位性を追求することが大切です。
競争優位性を発揮するためには、まずは外部環境を分析し、狙う市場セグメントを特定し、消費者ニーズを探るプロセスが求められます。
事業ドメインを選ぶ際に有効なフレームワーク
次に、事業ドメインを選ぶ際に有効なCTMフレームワーク分析について見ていきましょう。
CTMフレームワーク分析とは
CFT分析というフレームワークは「顧客（Customer）」「機能（Function）」「技術（Technology）」の3つの要素を事業ドメインの定義としています。
事業ドメインの設定は、自社の強みを活かして、「誰に（顧客）」「何を（機能）」「どんな方法で（技術）」提供するか分析します。
顧客（Customer）
顧客軸の決定は、年齢、性別、地域、嗜好性、志向性などの属性をそれぞれに分類します。
自社の商品（製品）やサービスを「誰に」対して提供して、価値を与えるか考えます。
機能（Function）
機能軸の決定は、自社の商品・サービスが顧客にどのような価値を提供できるかを決定します。
優良顧客の獲得にも繋がり、大企業が競争優位性を保つ上で重視とされています。
技術（Technology）
技術軸の決定は、競合他社にない技術を特定して、
自社が持つ差別化された技術を明確にします。
CFT分析フレームワークの中でも、技術軸はコア・コンピタンスに近い概念です。
SWOT分析とは
SWOT分析とは、企業の「内部環境」「外部環境」をそれぞれ4つの項目について分析する方法です。
「内部環境」…Strength（強み）、Weakness（弱み）
「外部環境」…Opportunity（機会）、Threat（脅威）
強み（Strength）
技術力の高さや長年の運用経験から、自社が持つ強みについて分析します。
弱み（Weakness）
競合よりも足りていない部分、自社の弱みや苦手な部分、目標達成の障害となる企業内部の特質を洗い出します。
機会（Opportunity）
自社にとってビジネスチャンスとなる環境変化が起きた時、競合他社がどのような動きをしているのか分析します。
脅威（Threat）
自社の強みを打ち消す可能性がある環境変化、競合他社の動き、目標達成の障害となる外部要因を知ることで、新たなビジネスチャンスになることも。
事業ドメインに関する企業の事例
事業ドメインに関する企業の事例を参考に見ていきましょう。
1.富士フィルムの事例
富士フイルムは写真事業消滅の危機から、技術の棚卸で発掘したスキンケア化粧品事業に参入。
競合他社より優れたベストワンを目指し、医薬品やエイジングケア化粧品を開発して、ヘルスケア1兆円達成に挑戦しています。
2.ソニーの事例
ソニーは不動産売買仲介サービスや賃貸管理事業といった不動産ビジネスに新規参入。
仲介手数料の仕組みを変えた個人間の不動産取引を可能にするサービスを発表しました。
日本の不動産市場は、取引プロセス、物件の売買価格や成約額といった全てにおいて不透明さが指摘されています。
ソニー不動産はこういった不動産市場の課題をチャンスと捉えて、顧客目線により成功した事例です。
3.武田薬品工業
武田薬品工業はかつての主力製品を新会社に移管し、強みである糖尿病領域での研究を中止。
新薬ビジネスの「がん」「消化器」「中枢神経」の3領域に経営資源を集中させ、新薬を中心に提供する方針です。
まとめ
事業ドメインは、「顧客」「技術」「機能」の3本の軸を定めて、最適な事業領域を設定することが目的です。
安定的な経営戦略のために、フレームワークや事例を参考にして、ぜひ導入を検討しましょう。
