年末調整とは
年末調整とは、会社が従業員から徴収した所得税及び復興特別所得税を再計算して、一年間に納めた所得税と復興特別所得税額と照らし合わせることで過不足金額を調整することを言います。もし納めすぎていた場合は従業員に年末調整の還付金額があります。
年末調整の対象になる人
年末調整は全ての従業員が対象になる訳ではありません。「給与所得者の扶養控除等申告書」を年末調整の日までに会社に提出している人が対象となります。尚、年末調整は12月に行いますが、年の中途で年末調整を行うことがあります。後者にあてはまるのは以下の通りです。
- 海外支店等に転勤したことにより非居住者となった人
- 死亡によって退職した人
- 著しい心身の障害のために退職した人
- 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
- パートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人
2020年度からの変更点
税制改正により、年末調整は2020年度(令和2年度)から以下の通りに変更点があります。
- 給与所得控除額が下がる
- 基礎控除額が上がる
- 所得税額調整控除が創られる
- 配偶者・扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し
給与所得控除額が下がる
所得税を計算する際、所得に応じて給与所得控除がなされていました。その控除額が2020年度の改正により一律10万円下げられることに変わりました。
基礎控除額が上がる
基礎控除は一律に38万円が控除されてきましたが、2020年度改正により所得に応じて最大48万円まで上がることとなりました。
所得税額調整控除が創られる
2020年度税制改正により年収850万円を超えると増税になり、納税者の負担を減らすために所得税額調整控除が創設されました。以下、いずれかの条件にあてはまる納税者が所得税額調整控除の対象者となります。
- 納税者本人が特別障害者である場合
- 23歳未満の扶養親族がいる場合
- 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
配偶者・扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し
配偶者、扶養親族等の所得金額が見直されることとなっています。具体的には以下の5つです。
- 同一生計配偶者の合計所得金額要件
- 扶養親族の合計所得金額要件
- 源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件
- 配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件
- 勤労学生の合計所得金額要件
年末調整と確定申告の違いについて
年末調整と確定申告の違いは、年末調整が「会社が所得税及び復興特別所得税を再計算して過不足金額を調整すること」であるのに対し、確定申告が「所得に対して納税者本人が申告・納税すること」であるという違いがあります。
年末調整する際の流れ
年末調整する際の流れを3つにまとめましたので、確認していきます。従業員に関係するのは「1:従業員による申告書の提出」のみ。他は会社による年末調整の担当分です。
1:従業員による申告書の提出
従業員が提出する申告書として、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」「給与所得者の保険料控除申告書」「給与所得者の配偶者控除等申告書」です。
2:年末調整の計算
申告書が届いたら、会社は年末調整を計算します。1年間に払った給与所得額を計算し、その金額から給与所得控除額と所得控除額を引いて所得税の課税対象額を求めます。
その額と年間の源泉徴収税額とを比較して、過不足を求め、源泉徴収税額の方が所得税の課税対象額よりも多ければ従業員に還付し、不足すれば追加で徴収します。
3:法定調書の作成と提出
各従業員の源泉徴収票の内容を法定調書にまとめて、税務署まで提出します。
年末調整をする際に必要な書類
年末調整をする際に必要な書類として、以下の8種類があります。どういう書類なのか、どんな用途に使われるのかを確認していきます。
扶養控除等申告書
扶養控除等申告書は、扶養家族に関する控除を受けるための書類です。この申告書には来年分を記入するようになっていますが、理由はその年の最初の給与をもらうまでに提出するように決められているからです。控除に応じて、必要な書類が異なります。
保険料控除申告書・控除証明書
保険料控除申告書・控除証明書は、生命保険料や地震保険料に関する控除を受けるための書類です。添付書類として、生命保険料・地震保険料の支払金額を示す書類を添付します。
配偶者控除申告書
配偶者控除申告書は、配偶者控除を受けるための書類です。配偶者控除または配偶者特別控除は、次の場合に適用となります。
- 給与所得者本人の合計所得金額の見積額が1,000万円以下の場合
- 配偶者の合計所得金額の見積額が123万円以下の場合
住宅借入金等特別控除申告書
住宅借入金等特別控除申告書は、住宅ローン控除を受ける際に必要な書類です。住宅を新築したりマイホームを購入したりした場合に必要になります。
住宅ローン控除1年目は確定申告を行いますから、年末調整で住宅ローン控除を受けるのは2年目以降。「住宅借入金等特別控除申告書」の他に「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」が必要になります。
支払調書
支払調書は、従業員に発行する源泉徴収票の個人事業主版です。
法定調書合計表
法定調書とは、源泉徴収票や支払調書のことを言います。会社が発行する法定調書は、1年間分を税務署に提出しなければなりません。
その際に法定調書のまとまりの表紙を法定調書合計表と言います。
源泉徴収票
源泉徴収票は、法定調書の1つで各従業員に支払った給与総額、社会保険料額等を記載した書類のことです。退職所得についても源泉徴収票を発行します。
給与支払い報告書
給与支払い報告書は、個人別明細書と総括表を合わせたものです。個人別明細書の記載内容は源泉徴収票と変わりませんが、提出先は税務署ではなく市町村となります。
その他の年末調整に関する知識
年末調整を行うにあたってどんなことを知っていれば良いか解説していきます。
年末調整はいつまでに必要なものか?
年末調整の期限は翌年の1月31日までです。一方、従業員が会社に年末調整を提出期限は11月であったり、遅くとも12月上旬と早い時期に指定されていることが多いですが、これは、翌年の1月31日というのはあくまで税務署への提出期限を指しているためです。
従業員から年末調整を収集した後に会社では税務署に提出するための事務手続きが必要になります。そのため、社内提出期限は、余裕をもった提出期限にしている訳ですね。
年末調整で医療費控除は受けられるのか?
年末調整では医療費控除を受けることはできません。自分で確定申告する必要があります。
医療費控除を受けるための手続きについて
医療費控除を受けるには、確定申告することになります。税務署に書類を提出して確定申告する方法もありますが、国税庁ホームページでは医療費控除のために「確定申告書等作成コーナー」を用意しています。これを使えば案内に従って金額等を入れるだけで医療費控除の手続きができます。
年末調整で受けられる控除について
年末調整で受けられる控除を以下の通りまとめてみました。これを見て頂き年末調整で受けられる控除に該当するものがあるか否かを、確認しておきましょう。
- 基礎控除
- 配偶者控除、配偶者特別控除
- 扶養控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 障碍者控除
- 寡婦控除
- 勤労学生控除
年末調整の還付金は、いつ、どのようにしてもらえるのか?
年末調整を行い、所得税等を払い過ぎたことが分かった時、納税者に対して還付金が支払われます。支払われる方法としては、給与と共に還付金が従業員の給与口座に振り込まれることが一般的です。
また、支払い時期については企業によって違いがあるものの、12月もしくは1月の給与支払い時には還付されています。
年末調整はアルバイトにも必要か
年末調整は給与を支払っていれば雇用形態に拘わらず年末調整をする必要があります。従って、アルバイトにも年末調整は必要です。
まとめ
年末調整は従業員が1年間に支払った所得税や復興特別所得税の過不足を調整し、従業員が税を払い過ぎていれば還付される仕組みです。
年末調整の流れは複雑なものではありませんが、初めて年末調整を担当する人にとっては年末調整の書類のチェックや税務署への書類の届け出等が大変に感じることでしょう。届け出の時期も明確に定められていますので、遅れずに届け出をしたいところです。