日本にはかず多くの企業があります。基本的には1つの企業が1つの業種に所属していますが、中には業種を超えた複数の業種に所属しているような企業も存在します。今回は、そんな多くの業種に事業を展開すること、コングロマリットについて解説します。
コングロマリットについて
コングロマリットとは、商品やサービスの異なる複数の事業を持つことです。コングロマリットがうまくいけば相乗効果によって企業は大きく成長することができます。
コングロマリット・ディスカウントとは?
コングロマリット・ディスカウントとは、コングロマリットの企業が所有する各事業間でシナジー効果がうまく発揮されないために、企業の価値を低下させてしまうことです。
コングロマリットによる多角化はリスク分散などのメリットがありますが、必ずしも事業間でのシナジー効果が得られる訳ではありません。そのため、場合によっては経営効率が悪くなり、企業価値が下がってしまう恐れもあります。
コングロマリットプレミアムとは?
コングロマリットプレミアムとは、複数の事業を所有することで、事業間でのシナジー効果が発揮され、企業としての価値も高まっていくことです。
例えば、売り上げや利益アップ、人材獲得、経営資源の有効活用などが具体的な効果として挙げられます。
コングロマリットのメリット・デメリット
コングロマリットにはメリットとデメリットの双方が存在します。それぞれどのようなものなのか解説していきます。
コングロマリットのメリット
コングロマリットのメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
・事業間でのシナジー効果
・リスク分散
1点目に関してはすでに触れているように、異なる事業を複数持つことで、事業間での技術や知識、ノウハウ、クライアントなどの共有が可能となり、シナジー効果が得られる可能性があります。そうなれば、企業としての価値もさらに向上していくでしょう。
また、複数の事業を持つことはリスク分散にもつながります。例えば1つの事業の調子が悪くても他の事業でカバーすれば会社へのダメージは小さくなります。
コングロマリットのデメリット
一方のデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
・企業価値低下のリスク
・コミュニケーション不足を招きやすい
・コーポレート・ガバナンスの低下
複数事業を持つことでシナジー効果が得られる可能性があるコングロマリットですが、必ずしもうまくいくとは限りません。そうなると企業にマイナスの影響を与えることになり、企業価値が低下する恐れもあります。
また、事業間での技術や知見、アイディアなどの共有ができることはコングロマリットの大きなメリットですが、事業が多いと従業員の数や部署の数が多くなるためコミュニケーション不足が起こりやすくなります。コミュニケーションがなければ、せっかくのコングロマリットでもシナジー効果が得にくくなってしまうでしょう。
さらに、コーポレート・ガバナンスが低下するリスクもあります。例えば、独立性の高い事業を買収した場合、買収した企業側にその企業を管理する専門知識を持たなければ、管理がうまく行えず、コーポレート・ガバナンスの低下につながる可能性もあるでしょう。
コングロマリット型M&Aとは?
コングロマリット型M&Aとは、異業種に新規参入することを目的としたM&Aです。コングロマリット型M&Aで買収する企業は異業種企業となります。
事業の多角化を目指したい企業にとってコングロマリット型M&Aは、経営戦略をすすめるうえで効率のいいものです。しかし、先ほども説明しているように、コングロマリットによってコーポレート・ガバナンスの低下を招く恐れもあるため、コングロマリット型M&Aを行う場合は、まず経営基盤を強化しておくことが重要です。
M&Aを行うメリット
コングロマリット型M&Aを行うメリットとしては以下のような点が挙げられます。
・事業の多角化が図れる
・既存事業の強化
M&Aを行うことで、異業種の事業を手に入れることができるため、スムーズに新規事業に進出でき、事業の多角化を測ることができます。M&Aなしで新規事業に参入しようとすると、設備や人材、ノウハウなど多くの資源が必要となりますが、M&Aであれば、その必要がありません。
また、買収した企業のノウハウや人材、スキルなどを共有できるため、既存事業の強化も可能です。さらに、取引先や仕入先の共有も可能なので、事業の拡大も十分に期待できるでしょう。
M&Aを行うデメリット
一方のデメリットとしては以下のような点が挙げられます。
・アナジー効果
・人材流出
アナジー効果とは、事業間でおこる相互のマイナス効果のことです。M&Aによってもともと異なる企業だったものが一緒になるため、企業文化や環境の違いなどが原因となり、意思決定の遅れやコーポレート・ガバナンスの低下などのアナジー効果が起こる可能性があります。
M&Aを実施することで、買収された企業に在籍していた人材が流出する恐れがあります。これは、買収先の企業の労働条件などが合わなかったり、企業の雰囲気が合わなかったりするために起こるものと考えられます。
日本のコングロマリット企業
ここからは、日本のコングロマリット企業を紹介します。意外と多くの企業がコングロマリット企業として複数の事業を展開しています。
DMM
インターネット関連の各種サービスを展開するDMMグループは、動画配信を始め、FXや証券会社、ゲームコンテンツ、商品物流など多岐にわたる事業を所有しています。また、近年では、海外のサッカークラブを買収しサッカー関連の事業にも取り組んでいます。
楽天
インターネットショッピン「楽天市場」のイメージが強い楽天ですが、コングロマリット企業として様々な事業を所有しています。具体的には、楽天銀行や楽天証券などのフィンテックグループカンパニーや東北楽天ゴールデンイーグルスなどのメディア&スポーツカンパニー、さらにはRakuten Global Market、楽天Koboなどが挙げられます。
ソフトバンク
ソフトバンクも携帯電話以外に幅広い事業を展開しています。例えば、ソフトバンク・ビジョン・ファンドで投資を行うファンド事業、アメリカで移動通信サービスなどを提供するスプリント事業、IoTプラットフォームやソリューションテクノロジーの提供を行うアーム事業、さらには福岡ソフトバンクホークスやPayPayなどもソフトバンクの事業として挙げられます。
トヨタ
日本を代表する自動車会社のトヨタは自動車の設計や製造を行う企業、部品メーカーなどを所有しており、自動車分野のコングリマリット企業となっています。
NTT
NTTは、固定電話の他に、NTTドコモやフレッツ光、ドコモ光、電報、タウンページ、など通信分野で複数の事業を展開するコングリマリット企業です。
ソニー
ソニーはウォークマンに代表される電化製品以外にも、ゲームや音楽、映画、さらには半導体や金融など、多角的な事業展開を行っています。
まとめ
今回は、コングロマリットの概要から、メリット・デメリットさらには日本のコングロマリット企業などについて解説しました。事業の数が増えればシナジー効果が得られるなどのメリットが享受できる可能性もありますが、その分コミュニケーションや各事業の管理が難しくなる可能性もあります。実際にコングロマリットを目指す場合は、まず企業としての基盤をしっかりと築き、それをベースに多角化を図るようにしましょう。