ビジネスで使うスピンオフの意味とは?3つのメリットや事例について紹介

スピンオフの記事
スピンオフと言えば、映画やドラマの登場キャラクターの前日弾や後日談などをイメージする方が多いでしょう。ビジネスにおけるスピンオフは、全く異なる意味があります。スピンオフを適切に実行できれば、企業の利益に繋がるため確認しておきましょう。ここでは、ビジネスにおけるスピンオフの意味やメリット、事例について解説します。
目次

スピンオフの意味とは?

スピンオフは、日本語で「派生する」や「副産物を生み出す」などの意味があります。映画やドラマの本編から派生した作品をスピンオフ作品といいますが、ビジネスにおけるスピンオフにはどのような意味があるのでしょうか。

ビジネスにおけるスピンオフの意味

ビジネスにおけるスピンオフには、次の意味があります。

会社からの独立

ビジネスにおけるスピンオフには、会社から独立して別会社を設立する意味があります。独立元の企業の影響を受ける形で独立するため、関連性が強い業界か同じ業界の会社になります。

技術転用

スピンオフには、技術転用の意味もあります。既存技術を別の目的に利用して新たな価値を創造します。軍隊で利用されていた技術が一般向けに転用されるのも技術転用の1つです。

スピンオフとカーブアウトとの違い

スピンオフと似ている言葉にカーブアウトがあります。スピンオフとカーブアウトの違いについて詳しくみていきましょう。

親会社との関係が強いスピンオフ

スピンオフは、独立元との関係が強い形で独立することが特徴です。例えば、独立元の会社から支援を受けて独立したり、子会社になったりします。お互いの利益になる形で資本関係を継続するのです。

外部からの融資を受けられるカーブアウト

カーブアウトとは、事業の一部を切り離し、別会社として独立させる手法です。スピンオフとスピンアウトに分けられます。カーブアウトは、競争力があり、事業拡大が期待できるものの主力事業ではない事業に適用します。ベンチャー企業として独立することで、適切な形で事業を拡大していけるため、結果的に大きな利益に繋がるのです。

なお、スピンアウトはスピンオフとは違い、独立元との資本関係が続いていません。不採算事業を切り離し、別事業に集中したいときに用いられます。

スピンオフの3つのメリット

スピンオフのメリットは次の3つです。

会社の独立性が高まる

会社の独立性が高まり、1つの事業に集中できるようになります。複数の事業を経営している場合、人材配置や集中の度合いなどの調節を誤り、収益が伸び悩むケースがあります。スピンオフによって、主力事業に集中しつつ、将来性のある事業を適切な形で成長させることが可能です。

事業の再構築ができる

関連性が薄い複数の事業を経営していると、事業同士の連携による相乗効果が期待できません。いったん、スピンオフで事業を切り離すことで独立元の会社の再構築が可能です。残した事業同士の連携を見直す機会になります。また、人材の偏りや風通しが悪いなどの問題も解消できるでしょう。

新会社の社長や各ポストに就く人材を改めて選出し、切り離した事業の成長に向けて準備を整えられることもメリットです。

株式上場におけるメリット

スピンオフで事業を独立させると、独立元と新会社のそれぞれで株式上場を目指せます。将来性を見込める事業であれば、積極的に株式上場を目指したいところでしょう。事業売却も選択肢の1つですが、スピンオフした会社が株式上場すれば、独立元の会社の知名度も上がります。相乗効果により、さらなる収益アップを見込めるのです。

スピンオフを実施する方法とは

スピンオフの実施方法には、特定事業を独立させる方法と子会社を作る方法があります。それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

特定事業を独立させる場合

特定の事業を独立させる場合は、融資や人材支援などでサポートしましょう。継続的な資本関係を結ぶことで、支え合うことができます。将来的に資本関係を切る可能性がある場合は、優秀な人材を配置しないことが大切です。ただし、会社が成長すれば独立元の会社にもメリットがあるため、適任な人材を配置してください。

子会社を作る場合

子会社を作る場合は、子会社の株式をすべて保持することで、支配下に置くことが可能です。資本関係を結ぶというよりは、独立元の会社が子会社を監督やコントロールをします。常に子会社の状況を把握することで、より強固な関係を続けられるでしょう。

子会社の状況を把握できないと、いつの間にか収益が下がっていたり問題が起きたりして、損失に繋がる恐れがあります。

スピンオフの事例について

スピンオフは、日本の名だたる大企業が実施しています。スピンオフの事例について詳しくみていきましょう。

物言う株主がソニーに求めたスピンオフ

1630億円相当の株式を保有しているローブ氏は、ソニーの半導体部品のスピンオフを求めました。理由は、エンターテインメント事業に集中しつつ、今後大きく伸びることが予想される半導体部門のさらなる成長を促すためです。半導体部門は、2019年時点で5年後には530億ドル相当の価値を持つ企業へと成長すると予測されていました。

ソニーは、ローブ氏の提案を拒否しています。半導体部門はソニーの成長をけん引する存在であり、今後長期にわたり企業価値の向上に大きく寄与する可能性があるとの見方です。

豊田自動織機とトヨタ自動車

プリウスやアクア、クラウンなど名だたる名車を生み出してきたトヨタ自動車は、実は豊田自動織機からスピンオフされた企業です。現在では、親会社を大きくしのぐ日本を代表する企業の1つになっています。このように、スピンオフによって子会社が親会社の企業価値を上回る例が少なくありません。

豊田自動織機は、フォークリフトを始めとする産業に欠かせない車両を開発しており、トヨタ自動車と同様に高いニーズを誇ります。

富士通とファナック

富士通には、NC(数値計算)装置事業がありました。高い利益率を誇るNC部門をスピンオフするかどうか議論が繰り返されましたが、最終的にスピンオフに至っています。NC部門を分離させないことで、他事業の収益を補てんすることが可能なため、非常に悩ましい決断だったと予想できます。

現在では、ファナックは親会社に匹敵する大企業へと成長を遂げているため、スピンオフは正しい判断だったと言えるでしょう。

イーベイとペイパル

インターネット競売大手のイーベイが電子決済サービス部門のペイパルをスピンオフしました。Eコマースと電子決済サービスの2本柱で支え合いながら成長を目指すことで、より良い未来の到来を予見したのです。

ペイパルは、もともとはイーベイが約15億ドルで買収した企業で、イーベイの子会社として運営されていました。イーベイのアクティブユーザーは1億4,900万人以上、出品数は常時7億点以上、ペイパルのアクティブユーザーは1億5,200万人以上です。

電子決済サービス業界の競争が激化しているため、スピンオフが正しい判断かどうか、現時点ではわかりません。しかし、豊富なアクティブユーザーを持つペイパルは、競争が激しい電子決済サービス業界でも高い収益を挙げ続けることが期待されています。

まとめ

ビジネスにおけるスピンオフは、会社から事業を切り離して独立させることを指します。スピンオフに成功すれば、会社の独立性を高めたり、事業を再構築したりできます。将来的に親会社よりも高い収益を挙げる企業へと成長するケースが少なくありません。複数の事業を経営している場合は、スピンオフでより良い未来を予見できるか考えてみましょう。

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