事例で分かるブルーオーシャン戦略|概要・メリット・成功するための方法を解説

ブルーオーシャン戦略の記事
たくさんの競合と血みどろの戦いをして、辛うじて勝っても、次の製品では他の競合と戦わなくてはならない…。競合がいる市場で戦っている限り、常に戦いのサイクルが続きます。競合のいない未知の市場を開拓して、事業戦略を推進するのがブルーオーシャン戦略です。コストを押し下げながら、買い手にとっての価値を高めるブルーオーシャンについて、概要・メリットを紹介します。
目次

ブルーオーシャン戦略とは?

ブルーオーシャン戦略とは、競争のない市場を創造して新しい事業を投入する事業戦略の考え方です。フランスの世界的なビジネススクールINSEADの教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュが『ブルーオーシャン戦略』の中で提唱しました。同書は世界で350万部のベストセラーとなったビジネス書です。また、2人の著者はThinkers50(世界で最も影響力のある経営思想家50人)で2位に選出されています。

ブルーオーシャン戦略の概要

ブルーオーシャン戦略を知るにはレッドオーシャンを知ることが必要です。チャン・キム=モボルニュは、既存市場をレッドオーシャンと名付けました。既存市場では限られたパイを巡って企業が競い合うために競争相手が増える程に利益は得られなくなっていきます。『ブルーオーシャン戦略』では、競争が激化することで既存市場は「赤い血潮に染まっていく」と表現しています。

それに対してブルーオーシャンは、未知の市場のことを指します。そこにはルールがなければ、競争相手もいません。従って、企業はブルーオーシャンの中で新たに需要を見出そうとするのです。ブルーオーシャンといっても、何も既存市場の外に市場を見つける訳ではありません。むしろ既存市場の延長にブルーオーシャンを見つけることができるのです。未知の市場を開拓し事業戦略を打ち出していくことがブルーオーシャン戦略です。

『ブルーオーシャン戦略』で紹介されている豪州のイエローテイルは、既存のワイン市場で消費者がワインに抱く「どれを選んだら良いか分からない」「とっつきにくい」といったイメージを払しょくするため、ブルーオーシャン戦略を打ち出しました。同社は飲みやすさ・選びやすさ・楽しさ等を前面に押し出して気軽に飲めるワイン市場を創造したのでした。その結果、米国における同社のシェアは輸入ワインの中で最大の輸入量を誇るまでに成長を遂げたのです。

バリューイノベーション

ブルーオーシャン戦略には、バリューイノベーションというブルーオーシャン戦略の土台となるアプローチがあります。ちなみに『ブルーオーシャン戦略』ではブルーオーシャンを創造するために「コストを押し下げながら、買い手にとっての価値を高める」バリューイノベーションが必要だと述べられています。

イエローテイルは、既存のワイン市場では重要とされてきた熟成という要素を削ることでコスト低下に成功し、ビールのように気軽に飲めるワインを売り出しました。まさにコストを押し下げながら、買い手にとっての価値を高めるバリューイノベーションを体現したのです。しかもイエローテイルのワインは、安いワインよりも価値が高いために価格上昇に成功しています。コストを下げつつ価格を上げたことで利益を拡大したのです。

アクションマトリクス

ブルーオーシャン(未知の市場)を創造するためには、分析ツールとしてアクションマトリクスが不可欠です。これは取り除く・増やす・減らす・創造するの4象限からなる分析ツールです。イエローテイルのアクションマトリクスは次の通りです。

  • 取り除く:熟成、ワイン用語や等級表示、メディアマーケティング
  • 増やす:デイリーワインに対抗できる価格
  • 減らす:ぶどう園の格と伝統、コクや味わいの深さ、種類
  • 創造する:飲みやすさ、選びやすさ、楽しさと冒険

未知の市場を開拓するには、既存のワインから取り除くものは何か、増やすもの、あるいは逆に減らすものは何か、そして何を創造すべきかを分析します。それによりバリューイノベーションが求める「コストを押し下げながら、買い手にとっての価値を高める」状態を作り出すことができ、その先にブルーオーシャンがあります。

ブルーオーシャン戦略のメリット

ブルーオーシャン戦略のメリットには2つのメリットがあります。

低いコストで差別化できる

ブルーオーシャン戦略では低いコストを重視します。バリューイノベーションでは、価値とイノベーションとは等価で扱われます。低いコストなのだからイノベーティブな商品ではない、ということにはならない訳です。アクションマトリクスで「取り除く」を追求することでコストは下がります。一方で、価値を高めるために「増やす」「創造する」を追求することで、差別化を図ることができます。イエローテイルが米国の輸入ワインの中で最大規模の輸入量を達成したことを思い浮かべれば、このメリットの大きさは企業にとって魅力的に映るはずです。

容易にシェアを獲得できる

ブルーオーシャンを開拓し、ブルーオーシャン戦略によって成功すれば、容易にシェアを獲得することができます。競争相手がいない未知の市場であり、しかもコストを押し下げて、企業と消費者双方の価値を高めているのですから、シェア獲得は難しくないのです。

ブルーオーシャン戦略のデメリット

ブルーオーシャン戦略にもデメリットがあります。

マネされやすい

デメリットの1つとしては、マネされやすいというものが挙げられます。ブルーオーシャンは、他社に発見されます。どんな企業だってレッドオーシャンよりブルーオーシャンが良いのですから、マネしてくるのです。そうすれば、ブルーオーシャンもいずれは赤い血潮で染まっていきます。ただし、ブルーオーシャン戦略については模倣の壁があり、模倣者が出てきてもブルーオーシャン戦略を創造した企業を駆逐するのは容易ではないという考えもあります。

新市場を開拓したことに安住する

未知の市場を開拓したことで安住していては、いずれはブルーオーシャンも赤い血潮で染まることでしょう。ブルーオーシャン戦略を創造した企業は、絶えず努力を重ねていかなくてはならないのです。そのプレッシャーに耐えられる企業がブルーオーシャンで生き長らえていくのです。

市場探しには慣れが必要

ブルーオーシャンは簡単に見つかるものではないので、徹底的なリサーチと勝ち筋を考えたうえで緻密に戦略を練る必要があります。「ブルーオーシャンだと思って参画したら、ガチガチのレッドオーシャンだった」「需要を見込んで市場参入したは良いものの、市場が小さすぎて利益が見込めなかった」といった失敗談はよく聞きます。ニッチな市場とは、母数は少ないが需要が大きい市場のことであり、単に規模が小さい過疎市場に参入しても苦しむだけです。勝ち筋の大きいブルーオーシャンを探せるように、経験とスキルを磨いておくのがおすすめです。

ブルーオーシャン戦略を理解するための企業事例5選

ブルーオーシャン戦略をより良く理解するために、企業事例を5つ紹介します。

シルクドゥソレイユ

シルクドゥソレイユはブルーオーシャン戦略の代表的な事例。サーカスというレッドオーシャンに、ブルーオーシャンを創造して成功を収めたのがシルクドゥソレイユなのです。シルクドゥソレイユは、スター芸人や動物ショーを取り除き、チケット代を増やして芸術性の高いダンスを創造してバリューイノベーションを構築し、ブルーオーシャン戦略の代表者として成功を収めたのです。

イケア

家具は家具屋で「完成品」を選んで買うものという常識を覆したのがイケアで、ブルーオーシャン戦略により成功しました。イケアはコスト低下を目指すため、完成品を組み立てて店頭で売ることをしません。組み立てるのは消費者自身。完成した家具を取り除き、家具を組み立てる消費者を創造したことがイケアのブルーオーシャン戦略の成功例です。

ユニクロ

ユニクロは、アパレル業界におけるブルーオーシャン戦略で成功した事例です。既存のアパレルは、品質が高いものは価格が高かったのですが、製造から販売までユニクロが手掛けることで、安い価格で質の高い衣類を売買するブルーオーシャンを創造しました。ユニクロを展開するファーストリテイリングは、売上高世界3位の世界的な企業に成長しています。

吉野家

かつての吉野家はブルーオーシャンを開拓し成功しました。今でこそ牛丼チェーンは乱立していますが、質の高い牛丼を安価で、しかも注文して直ぐに提供できる仕組みを作ったのは吉野家が最初。現在の吉野家は模倣者が何社も現れています。

QBハウス

QBハウスは、ゆったりとした時間の中で過剰なサービスを供給する理容業界にブルーオーシャン戦略を持ち込みました。「ビジネスパーソンはヘアカットに過剰なサービスを求めていないはずだ」との仮説を元に、10分1,000円でできる理容室を全国展開。アジアにも進出しブルーオーシャン戦略の体現者として成功しました。ちなみにQBハウスの事例は、チャン・キム=モボルニュの『ブルーオーシャン戦略』にも載っています。感性志向(過剰なサービス)から機能志向(短い時間のヘアカット)へ転換した好例です。

ブルーオーシャン戦略を知るためのおすすめ本

ブルーオーシャン戦略をもっとよく知るためのおすすめ本を紹介します。

ブルーオーシャン戦略~競争のない世界を創造する~

本書は、本記事でも何度か言及しているブルーオーシャン戦略のベストセラーです。豊富な事例を元に、ブルーオーシャン戦略について分かりやすく書かれています。

ブルー・オーシャン・シフト

『ブルー・オーシャン・シフト』は、W・チャン・キムとレネ・モボルニュによる、ブルーオーシャン戦略の実践的な書。ブルーオーシャンが大事だと気付けても、なかなかブルーオーシャンに移行できない企業のために、チャン・キム=モボルニュが道筋を実践的に指南します。

ブルーオーシャン戦略に成功するには

最後に、ブルーオーシャン戦略に成功するための経営者に向けたポイントを2つ紹介します。

広いビジョンを持つ

レッドオーシャンで安住している限りにおいては、競合との血みどろの戦いから抜け出ることはできません。未知の市場を開拓していくという広いビジョンを持つことが何よりも重要なのです。経営者自らが自身のやり方が絶対に正しいと思っている以上はレッドオーシャンから脱出することは不可能。自らを疑い、その上で広いビジョンを持つことがブルーオーシャンへの近道です。

既存のビジネスを強化しつつイノベーションを行う

ブルーオーシャン戦略は、新たなイノベーションを創出し、事業を軌道に乗せるために有用な事業戦略の考え方です。しかし、事業は継続しなければなりませんから新市場だけを追う訳にもいかない。そこで、既存のビジネスでしっかりと基盤を築きつつ、イノベーションを創出することがブルーオーシャン戦略で成功する秘訣です。

まとめ

既存市場で戦うだけではなく、競合のいない未知の市場を開拓することがブルーオーシャン戦略でした。ブルーオーシャン戦略には魅力的なメリットがあり、うまく進めれば事業を大きく拡大することができるのです。

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