大企業の定義とは
大企業といえば、ソニー、トヨタ自動車、ファーストリテイリング、楽天等がイメージされます。では、大企業の定義は何でしょうか?従業員が1,000人いる企業?東証一部上場企業?全国展開している企業?解説していきましょう。
法律の定めはない
実は、大企業の定義について法律の定めはないのです。一方で中小企業については法律で定められており、大企業を定義するなら「中小企業以外」とすることになります。
大企業と中小企業の違い
中小企業は、中小企業基本法により規定されています。中小企業は、中小企業基本法第2条第1項にて、「資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人であって、製造業、建設業、運輸業その他の業種に属する事業を主たる事業として営むもの」と定められています。大企業と中小企業の違いは、中小企業は上記規定であり、大企業は規定以外の企業ということです。
小売業なら50人を超えたら大企業
中小企業は、業種によっても定義が違います。例えば、卸売業なら資本金1億円以下・従業員数100人以下の企業を中小企業と言います。その他の中小企業の定義は以下の通りです。
・サービス業:資本金5,000万円以下、従業員数100人以下
・小売業:資本金5,000万円以下、従業員数50人以下
中小企業の定義以外を大企業というので、小売業であれば、資本金5,000万円以上・従業員50人の企業を大企業ということになります。ただ、従業員数50人で大企業といわれてもピンと来ないと思います。例えば厚生労働省の調査では、調査時の大企業の定義を従業員1,000人以上としており、従業員999人~100人は中企業、従業員10~99人は小企業としています。
大企業の明確な定義がないので定義に困りますが、本記事では厚生労働省にならって、従業員1,000人以上を大企業と呼ぶことにします。
知名度の高い大企業とは
大企業の中には、知名度が高い大企業もあります。また、知名度が高くても大企業ではない場合もあるので説明します。
ネットやテレビCMで見かける企業
インターネットやテレビCMで見かける企業は、知名度が高くなります。それらが全て大企業かと言うと、そうとは言えません。ベンチャー企業や従業員が少ない企業でも広告を打てば知名度が高くなるからです。その場合、企業規模に関わらず有名企業という言い方が使われます。
日本を代表する伝統企業
日本を代表する伝統企業も知名度が高い傾向があります。BtoB企業でも伝統企業なら知名度が高くなるのです。創立50年、60年と続く企業で知名度が高い企業は自然と従業員数も増えるので、大企業が多いと言えます。また、伝統企業も広告を打っていることもあるので、伝統企業=大企業=有名企業という考えも成り立ちます。
先進的なIT企業
先進的なIT企業、例えばテレビCMをしているタレントパレットを運営するプラスアルファ・コンサルティングのような企業は、先進的なIT企業かもしれませんが大企業ではありません。従業員数も140名程度と小規模です。しかし、サイバーエージェントのような企業になると、従業員数も多いし資本金も大きいので、先進的なIT企業であり、大企業と言えます。このように大企業とは「〇〇企業」という他の定義と横断的に考えることができるのです。
大企業にまつわる5つの疑問を解決
大企業の定義は少しあいまいで、法律的には中小企業以外であることが分かりました。本記事では従業員数1,000人以上を大企業と定義しています。しかし、定義されても、これは大企業か?という疑問があると思いますので解説します。
上場していれば大企業か
上場企業は大企業か?上場しているといっても東証一部上場企業もあるしジャスダックもあります。また、一部上場企業の中でも企業の規模が小さい企業もある訳です。従って、上場しているだけで大企業とは言えません。リクルートのような大企業でも、2014年10月までは非上場でしたが、中小企業ではありません。
大企業の割合はどれくらいか
日本における大企業の割合は、中小企業99%に対して、わずか1%。数にしてたったの10,000社しかないのです。
大企業と大手企業との違いは何か
大企業と大手企業の違いは、業界において知名度が高い企業を指します。自動車メーカーならトヨタやホンダが挙げられますが、これらは大手企業です。しかし、大企業の中でも業界における知名度が他社に負ける企業もあるので、それらは大手企業とは言いません。
大企業と有名企業との違いは何か
大企業と有名企業の違いは、ネットやテレビCMで見かける企業の項目で説明した通りで、業界に限定せず、巷でよく知られている企業のことを言います。
大企業が黒字リストラするのはなぜか
次の「大企業に勤めるメリット」でも説明する通り、大企業は雇用が安定していますが、リストラもします。黒字でもリストラをする大企業があります。黒字でもリストラする大企業は、組織の若返りや、歪な人員構成の解消に向けて希望退職を行うのです。
大企業なら生涯安泰?大企業に勤めるメリット
大企業といえば賃金が高くて雇用が安定している等、いくつかのメリットがあります。大企業に勤めるメリットを紹介します。
雇用が安定している
大企業は資本も大きく、財務状態が健全で、多角的な事業を展開し、優秀な人材も多いです。そのため、雇用は安定しています。中小企業に比べて、勤続年数が長いことで雇用の安定性が示されます。厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査の概況」によると、男性の企業規模別の勤続年数は、大企業15.9年、中企業13.1年、小企業11.7年となっています。概況の大企業とは従業員1,000人以上、中企業とは従業員100~999人、小企業とは10~99人を指します。
賃金が高い
大企業は賃金が高い傾向にあります。民間企業ですから景気の波の影響を受けるものの、大企業は賃金が高いです。再び厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査の概況」を参照すると、男性の大企業の賃金は387,000円、中企業は321,500円、小企業は292,000円となっています。賃金格差は、大企業を100とすると、中企業で83.1、小企業で75.5です。差があるのが分かりますね。概況の賃金は時間外手当等の各種手当を除いた金額です。
福利厚生が充実している
大企業は福利厚生が充実しています。法律で決まっている時間外手当の他、住宅手当・日当・福利厚生サービス・健診や人間ドックの利用等、福利厚生が充実しています。
リストラに遭っても転職しやすい
大企業といっても、財務状態が悪くなればリストラを行います。前述の通り黒字リストラの可能性もあり、大企業として働いたからといってリストラに遭わないとは限りません。しかし大企業ならリストラに遭っても転職しやすいです。求人を募集している企業も、中小企業よりは大企業出身者の方が「仕事ができる」と思って採用しやすくなります。大企業出身であることは、「仕事ができる人材」という目安になるのです。
大企業にもデメリットがある
大企業にもデメリットがあります。
転勤がある
大企業は従業員の人数が多いので転勤があります。もちろん企業が転勤する人材を出世させるなら、転勤することで出世できるのでむしろメリットなのですが、一方では勤務先の都合で住み慣れた住居を引っ越すことはデメリットです。家族がいれば単身赴任しないといけないこともあるでしょうし、ボランティアやサークル活動等、地域に根差した活動をしている人は転勤によってそれらから離れなくてはなりません。
また、転勤は全社員一律的に実施している企業もあれば、職種や部署によって転勤をする・しないが分かれている企業もあります。後者の企業では、転勤しなくても出世に響かない場合、転勤している人は転勤しなくても出世している人を見て不公平だと感じます。その場合、働くモチベーションが下がったり、転勤がない企業へ転職したりする等、組織風土や離職の問題が発生します。
ポスト不足で出世しづらい
大企業は従業員の数が多いため、出世しようにもポスト不足で出世しづらいことがデメリットとして挙げられます。例えば、同期が50人いても、係長に昇進できるのは50人ではありません。課長、部長というポストになればなる程、ポストを巡って出世争いが生じるのです。しかも、きちんと人材を評価してくれる企業なら良いのですが、成果を出しても評価してくれないとモチベーションが下がります。モチベーションが下がった優秀な人材が離職する可能性も出てきます。
雇用は保証されても出向がある
大企業は雇用が安定しています。中小企業のように事業が立ち行かなくなって倒産する可能性は低いです。一方で、大企業も慈善事業ではありませんから、人事評価が低い人材をいつまでも雇用しておく訳にはいきません。といっても解雇はできないのでグループ会社に出向させることがあります。
出向後に出向元である大企業に復職できるとは限りません。そのままグループ会社に長年勤めて、転籍になることもあるのです。転籍とは、この事例で言えば大企業を退職して、グループ会社と雇用契約を結ぶということです。「同期は大企業で出世しているのに自分はグループ会社の従業員になってしまった」と思い、モチベーション低下・離職する可能性も出てきます。
まとめ
大企業の定義は、法律的には決まっておらず中小企業以外と定めるしかありません。大企業にも、有名企業や大手企業等があり、大企業に勤務するメリット等も紹介してきました。一方で大企業であっても転勤や出向等のデメリットもあります。