カンパニー制とは?メリット・デメリット・導入事例5選を解説

経営戦略
カンパニー制をご存知でしょうか?ビジネス課題が高度化していく中で、企業は迅速な意思決定を求められています。社内で稟議を回していたら、いつの間にか他社に仕事を取られてしまったということはありがちなことです。日本では20年近く前に導入されたカンパニー制がこうした問いに答える解決策の1つになっています。カンパニー制導入のメリット・デメリット、導入事例を紹介します。

カンパニー制とは?

カンパニー制とは、企業内にある事業部を分離独立して分社化した組織形態を言います。大企業においては社内に複数の事業部があります。カンパニー制では製品や地域ごとに分社化し、同じグループに属しながら1つの企業として扱います。

カンパニー制がなぜ注目されるのか

カンパニー制がなぜ注目されるのでしょうか?理由はビジネスを取り巻く環境の変化の迅速化、そして問題の高度化のためです。グローバリゼーション、人手不足、AI等による環境変化は速いので、企業の出方を待ってはくれません。また、製品寿命の短命化、破壊的イノベーションを起こす企業の存在等、企業の問題は高度化しています。

そんな中で、のんびりと意思決定していたり、イノベーション創出に組織が邪魔をしたりしていれば、市場の勝者といえども安穏としていられません。製品・地域ごとに分社化したカンパニー制により、迅速かつ柔軟に経営を舵取りしていく必要があるのですね。

カンパニー制と事業部制の違い

カンパニー制とよく対比される組織形態に事業部制があります。事業部制との違いを確認することでカンパニー制への理解が深まります。事業部制とは、製品・サービスや地域ごとに事業部門を設置し、事業運営に必要な権限を与え、事業を推進させる組織形態のことです。事業部制は社内組織です。

カンパニー制は独立型である

事業部制における事業部は企業から権限を付与されているものの、独立していません。社内にある事業部が経営上重要な決定をする際には、経営者の意思決定を待つ必要があります。例えば事業部Aが重要な意思決定をしたいと思っても、事業部だけで決められないので、社内に稟議を回して経営者の決裁を仰がなくてはならないのです。一方でカンパニー制は分社化されていますから独立型です。同じグループといっても個々の会社なので、カンパニー内で迅速に判断することができます。意思決定の迅速性では、カンパニー制の方が事業部制に勝ると言えるでしょう。

カンパニー制導入のメリット

カンパニー制を導入するとどんなメリットがあるか、4つに絞って説明します。

責任の所在の明確化

カンパニー制は企業から分離独立しています。グループは同じですが、会社としては別個の会社なので、責任の所在が明確化します。例えば、テレビやパソコン等、多くの家電を製造しているメーカーがカンパニー制を導入すれば、テレビのカンパニー、パソコンのカンパニーに分かれます。そうすれば、テレビ事業についてはどこの会社に責任があるのかと責任の所在を明確にすることができるのです。

意思決定の迅速化

カンパニー制の最大の魅力は何度か言及している通り意思決定の迅速化です。自社の競合が、イノベーティブな商品を開発したと聞いたとしましょう。まだ市場に出てもいないので顧客を奪われてはいませんが、潜在的な力は存分にあります。研究開発事業部は、競合に対応し得るイノベーションを創出するため、研究開発費をつぎ込もうと考えました。しかし役員からはまだ時期尚早だと判断され、反論する余地もない。結果、競合が市場に商品を投入した時は既に手遅れで、自社は市場の多くを競合に奪われてしまう…。しかしカンパニー制であれば意思決定が迅速ですから、情報を聞いた段階で意思決定し、直ぐに動くことも可能なのです。

経営人材の確保と育成

カンパニー制は独立しているので、1つの企業です。ですから、事業部制の下では事業部長という役職を持つ者がカンパニー制では経営人材になり得ます。従って、カンパニー制では経営人材の早期の確保、そして経営人材になるための育成をすることができます。企業にとっては人材開発になり、経営人材と目された社員にとっても、自己の成長やモチベーションアップ、そして組織活性化へと繋がります。

企業内競争の強化による組織活性化

カンパニー制同士は別の会社といっても、グループとしては同じ。従って、企業内で切磋琢磨させることで組織活性化に繋がります。

カンパニー制のデメリット

カンパニー制にもデメリットがあります。2つを紹介します。

プロセスよりも結果重視

プロセスよりも結果重視である点がデメリットです。これはカンパニー制の内部というよりは、カンパニー制を統括する企業本体との関係性の中で起こるデメリットになります。カンパニー制として分社化させることにより責任の所在の明確化しますが、一方でそれは、1つの企業としての成果を強く求められることでもあります。同じ企業でありながらプロセスより結果を重視されがちである点は、次の「組織間の影響力の希薄化」にも繋がるカンパニー制の弱い部分と言えます。

組織間の影響力の希薄化

プロセスよりも結果重視のカンパニー制では、組織間の影響力は希薄化していきます。企業本体への忠誠心や愛着よりも、カンパニー制を敷いた各企業が成果を上げることに企業としての価値を置くために、お互いに別会社として接することになりかねません。また、カンパニー制の企業同士のシナジーが薄まることも懸念されます。

カンパニー制導入企業例

カンパニー制導入企業事例を5社、紹介します。

ソニー

ソニーは、日本で初めてカンパニー制を導入した企業。ソニーは元々、事業部制を敷いていましたが、1994年にカンパニー制を導入します。その背景には、1992年、創業以来、初めて最終赤字に転落した事態がありました。事業が成熟し新たなイノベーションを創出できない中で、事業部制では迅速な意思決定ができないと考え、カンパニー制を導入したのでした。その後、ソニーは1996年に第2次カンパニー制に移行し、カンパニー制を見直しました。その結果、1997年には過去最高益を更新するに至ったのです。

トヨタ自動車

トヨタ自動車がカンパニー制を導入したのは2016年。新たな価値の創出と人材開発を目指してカンパニー制を導入しました。トヨタ自動車のカンパニー制は製品群ごとに7つに分けられます。

  • 先進技術開発カンパニー
  • Toyota Compact Car Company
  • Mid-size Vehicle Company
  • CV Company
  • Lexus International Co.
  • パワートレーンカンパニー
  • コネクティッドカンパニー

それぞれのカンパニーにはトヨタ自動車本体の役員がプレジデントとして就任しており、意思決定の迅速性を可能にしています。

みずほフィナンシャルグループ

みずほフィナンシャルグループでは、2016年にカンパニー制を導入しました。次の通り、5つのカンパニーと共に、2つのユニットにより構成されています。

  • リテール・事業法人カンパニー
  • 大企業・金融・公共法人カンパニー
  • グローバルコーポレートカンパニー
  • グローバルマーケッツカンパニー
  • アセットマネジメントカンパニー
  • グローバルプロダクツユニット
  • リサーチ&コンサルティングユニット

パナソニック

パナソニックは、家電メーカーのイメージが強い企業ですが、複数の事業を展開しカンパニー制を敷いています。カンパニーとして、家電やエネルギー事業等のアプライアンス社、電設建材や住設建材等のライフソリューションズ社、流通・物流・エンターテインメント・パブリック・アビオニクス・製造等を手掛けるコネクティッドソリューションズ社、自動車関連のオートモーティブ社等があります。

楽天

楽天は、2016年にカンパニー制を導入。導入の目的は、起業家精神の醸成・活性化によるイノベーションの創出、そして顧客満足度最大化を目指すためでした。13のカンパニーが敷かれています。

まとめ

カンパニー制は、事業部制と違って企業から分離独立した組織形態です。意思決定の迅速化や責任所在の明確化等多くのメリットがある一方で、デメリットも見逃せません。カンパニー制を導入する際には、カンパニー制ありきではなく、きちんとシミュレーションを施した上で実行に移すようにしましょう。