経営管理とは?
経営管理の意味や経営管理が求められる背景、経営企画との違いを解説します。
経営管理の意味・意義
経営管理とは、企業が経済活動を進め、目標を達成するために事業や業務を管理することをいいます。経営管理を行うことで企業は適切な経営判断を下すことができるようになります。経営管理には人事・労務管理、財務管理、生産・販売管理等、様々な管理方法があり、経営管理を通じて企業は組織をコントロールすることができます。
経営管理には経営管理論という学問的根拠があります。経営管理論は米国の経営学者フレデリック・テイラーが提唱した科学的管理法に基づき、フランスの経営学者アンリ・ファヨールによって完成された経営学の分野です。経営管理論は20世紀初頭に生まれ、現在では人事・労務管理、財務管理のように幅広い分野で研究・実践が進められています。
経営管理が求められる背景
経営管理論が始まったのは20世紀初頭ですが、現在でも経営管理が求められる背景としては企業を取り巻く環境が大きく変化していることが挙げられます。グローバル化やダイバーシティ、M&Aの進展、日本企業の生産性の低下等により事業や業務ごとに管理する経営管理の手法が求められているのです。
経営管理と経営企画の違い
経営管理と似た用語に経営企画があります。経営企画とは中長期的な経営計画、経営計画に基づいた経営戦略の推進を担う業務であり、セクションのことです。それに対して経営管理は、経営企画が策定した経営戦略に基づいて事業や業務を管理していくことです。経営管理は、広い意味で経営企画に含まれる概念ということができます。経営企画と経営管理を混同しないようにしましょう。
経営管理の目的
経営管理には以下の2つの目的があります。それぞれの目的を実現するためのポイントを解説しましょう。
・企業が適切な経営判断を行うため
目的実現のポイント
企業が経済活動を進め、目標を達成するとは、企業が経営計画を元に目標を達成するということです。目標には、経営計画に基づく年間目標、5年後・10年後の目標があります。目標を達成するためには、事業や業務が適切に運営されているかを把握しておかなくてはなりません。
目標を阻害する大きな課題が見つかれば、課題を解決するために、企業は経営資源を投入して解決する必要があります。
次に、経営管理の目的の2つ目である企業が適切な経営判断を行うためについてです。経営管理を通じて潜在性を秘めた事業を発見したとします。しかし、まだ事業として利益が出ていません。その時、経営者は事業を育て、適切な時期に市場に投入しようという経営判断を行います。経営者は意思決定権を有していますから「この事業は伸びる」と思った事業を育てる判断を下すのです。
また、経営管理を通じて課題が浮き彫りになることもあります。例えば、市場規模が低く、利益が出ていない事業に多額の経営資源を投入している実態を見て、経営者は事業を打ち切る判断を下します。以上のように、経営管理の目的には適切な経営判断を下すことがあるのです。
経営管理のやり方について
経営管理の主な種類を紹介しながら、経営管理のやり方を解説します。
人事・労務管理
人事・労務管理は人事管理と労務管理を総称したもの。まずは人事管理から説明します。人事管理は人材を採用し、育成し、評価し、定着させるために人材を管理することをいいます。企業の採用活動・人材育成・人事評価・人員配置・リテンション(定着)等が人事管理の業務です。
労務管理は従業員の労働環境を管理することです。労務管理の業務には給与・社会保険・賃金制度・福利厚生・就業規則等に関するものがあります。
人事・労務管理には正確にできて当たり前の給与・社会保険もあり、こちらが経営者の目に触れる時は業務上に大きな問題が生じた時、あるいはより正確かつ迅速な業務を行うために給与・社会保険システムを導入するような時でしょう。
一方、賃金制度や評価制度の見直し、人員配置やリテンションといった人事・労務管理については、人材マネジメントの観点から経営管理の目的を果たすために、経営者が注視する経営管理といえます。
財務管理
財務管理は、企業を維持し、業績を拡大させるための経営資源である資金を管理することです。資金がどんな事業に使われているのか、資金の使途は適切か、どの事業に資金を多く投入すべきか、といったことについて、考え、判断を下すには、財務管理が適切に機能していなければできないことです。
また、海外展開や新規事業を行う時には多くの資金が流れていきます。企業は手元に資金がなくなると倒産してしまいます。多額の資金が動く時こそ、資金の流れに注意しましょう。一時的に資金がなくなったとしても、直ぐに取引先から売上金が入ってくるのであれば問題ありません。財務管理をしっかり行うことで、経営者は資金の流れを把握し、適切な経営判断を下し、経営計画に基づく目標を達成することができるのです。
生産・販売管理
生産・販売管理は生産管理と販売管理を総称したもの。生産管理は企業の生産活動が適切に行われるために行います。例えば、在庫管理、材料の調達や部品の調達、生産設備の整備や確保等が生産管理の業務です。
例えば、常に過剰在庫を抱えている工場に対しては、生産管理方法を改め、「必要なモノを必要な時に必要な量だけ」生産するジャストインタイム方式に変えるような経営判断が下されます。経営者が生産管理を活用するので下される判断といえます。
販売管理は製品の仕入れから販売まで管理し、適切な販売活動を行うことを管理します。販売管理はマーケティングの観点も含まれ、今、市場ではどんな製品が売れているのか、売れている製品を適切に投入できるのか、といった観点で販売システムを管理していきます。良い製品・サービスだからといって売れる訳ではありません。販売管理を活用することで売上・利益に繋がるのです。
生産・販売管理がセットになっているのは、生産と販売は地続きになっているからです。販売は顧客に製品を届けますが、届けたい製品が手元になければ売れません。しっかり生産管理ができていることは、しっかり販売管理ができることに繋がります。生産・販売管理の流れを注視することも経営管理の目的といえます。
経営管理の難しさとは
経営管理の3種類を見ながら経営管理のやり方を見てきました。経営管理を適切に行えば、企業経営はうまくいきます。一方で、現在は経営管理が難しくなっており、適切に経営管理を行いにくくなっているのです。2つのポイントで経営管理の難しさを解説します。
経営管理が高度化・複雑化している
経営管理が難しくなっていることの背景には、経営管理の対象が幅広く、扱うデータが増加し、対応方法が複雑になっていることが挙げられます。そのために経営管理が高度化・複雑化しているのです。
例えば、経営管理の対応方法が複雑になっていることを、人事・労務管理の観点で考えてみましょう。ダイバーシティや売り手市場による人材確保への対応は、これまでの人事・労務管理のやり方では通用しなくなっています。男性正社員中心の働き方では、多様な人材を雇用し、活躍させ、定着させる人材マネジメントが活かせません。新しい人事・労務管理のやり方を模索する必要があるのです。
売り手市場にしても、これまで採用できていた大企業でさえ人材を確保しにくくなっています。母集団を形成するだけの採用手法では人材確保に対応できなくなっているのです。対応方法の複雑さは、経営管理の高度化・複雑化へと繋がり、経営管理を難しくしています。
業績予想の精度が不正確である
経営管理が難しくなっていることの背景には、業績予想の精度が不正確であることも挙げられます。急激な市場の変化や他社のイノベーションの発生、そして主力事業が模倣され価格競争に巻き込まれる等、年間の業績予想が外れることがしばしばあります。
既存のやり方だけでは事業をうまく乗りこなせないことを自覚し、高い視点から経営管理を総合的に見る必要があります。これまで通りの近視眼的な経営管理では業績予想を正確に計ることができず、経営管理がうまく機能しなくなるでしょう。
経営管理の改善方法
経営管理の課題を見てきました。次は経営管理を改善するための方法を解説します。
経営管理システムの導入
経営管理システムの導入は、高度化・複雑化した経営管理を適切に行うために活用できる改善方法です。ERPが経営管理システムの代表例です。多くのグループ企業を有し、多数の事業部門を擁する企業は、ERPによって間接部門や生産・販売部門を一元化することで、経営判断をするために必要な情報が抽出されます。
業績予想についてもERPを活用することでより精度が高まるでしょう。ERPは、経営管理の2つの目的である目標達成と適切な経営判断を行うために、活用できるツールです。
連結経営管理基盤の構築
企業を取り巻く複雑な課題に対応するには、グループ企業間で異なる経営管理システムを使用することが足かせとなります。前述のダイバーシティや人材確保の難しさの他、多角化した事業や多数のグループ企業に対して経営方針を一貫させるには、経営管理システムを統一させ、一体感とスピード感を持つことが重要です。
企業グループとして予算管理や決算のタイミング等を統一する連結経営管理基盤の構築が求められるのです。連結経営管理基盤が構築されていれば、海外進出を行う時にもやりやすいといえます。
まとめ
経営管理は、企業が経営計画に基づいて目標を達成し、適切な経営判断を下すことを目的とした管理方法です。経営管理には人事・労務管理、財務管理等の多くの種類がありますが、ねらいとするところは、企業ないしはグループ企業が同じ方向を向いて企業経営していくことにあります。