社名変更手続きに必要な手続きとは?
社名を変更する時は、まず以下の2つの手続きを行う必要があります。
・変更登記
定款変更
株式会社が社名を変更する時、株主総会にて商号を変更する決議を行い定款変更を行います。株主総会は定時株主総会だけでなく臨時に株主総会を開くことでも足ります。なぜ社名変更時に定款変更が必要かというと、社名は定款の絶対的記載事項だからです。
変更登記
株主総会で定款変更の決議を行った後は、法務局に変更登記を申請します。これは株主総会で社名変更決議が行われてから2週間以内に行う必要があります。2週間以内に管轄の法務局に申請を行い、審査が済めば社名変更完了となります。
登記上の社名変更手続きはこれで終了ですが、株式会社は税務署、市区町村、労働基準監督署等の行政や金融機関への社名変更手続きも必要となります。次の項目では社名変更手続きリストとして、社名変更手続きの一連の流れを説明していきます。
社名変更手続きリスト
社名変更手続きの一連の流れをリストで説明します。
株主総会にて社名変更の決議
社名変更を行うには株主総会を開催し、定款変更決議を行います。定款変更決議には議決権の過半数を有する株主が総会に出席し、議決権3分の2の賛成があって決議されます。通常の株主総会では、議決権の過半数を有する株主の過半数が賛成すれば決議されるのですが、定款変更は特別決議のため、より多くの賛成を要するのです。
特別決議が必要となる重要な事項には、定款変更の他に、特定の株主からの自己株式の取得・株式併合・事業譲渡・資本金の減少等があります。
法務局への手続き
株主総会にて定款変更の手続きが済んだら、本社の住所がある管轄の法務局に変更登記を申請します。申請のタイミングは株主総会後の2週間以内となります。社名変更登記の登録免許税には3万円が必要です。
登記が済んだら登記事項全部証明書を入手しましょう。各種手続きに必要な分だけ入手して下さい。変更登記までが最低限必要な手続きとなります。
税務署への手続き
株式会社は納税をしていますので、管轄の税務署に対して「異動事項に関する届出」を届け出ます。変更登記が済んだ後、速やかに届け出て下さい。税務署への届出はe-Taxでの届出も可能です。
都道府県税事務所、市区町村への手続き
都道府県税事務所と市区町村に変更手続きを行う必要があります。「法人異動届」という変更手続き書を提出します。提出期限については行政によって違いますので公式サイトで確認して下さい。
年金事務所への手続き
年金事務所への手続きは「健康保険・厚生年金保険適用事業所名称/所在地変更(訂正)届」を届け出ます。年金事務所への提出期限は、変更登記が済んだ後、5日以内となります。e-Govを使えばオンラインで申請することも可能です。
労働基準監督署への手続き
労働基準監督署への手続きは、管轄の労働基準監督署に対して「労働保険名称、所在地等変更届」を届け出る必要があります。労基署への提出期限は、変更登記が済んだ後、10日以内となります。「労働保険名称、所在地等変更届」は労基署にて入手して下さい。登記簿謄本の提出が求められることもあるので、持参しましょう。e-Govを使えばオンラインで申請することも可能です。
尚、ハローワークにて社名変更手続きを行う際に「労働保険名称、所在地等変更届」の控えを提出するよう求められます。労働基準監督署への手続きを行った後に、ハローワークに行くようにしましょう。
ハローワークへの手続き
ハローワークへの手続きは、管轄のハローワークに「雇用保険事業主事業所各種変更届」を届け出る必要があります。ハローワークのサイトからダウンロードできる他、ハローワークの窓口でも書類を入手することが可能です。ハローワークへの提出期限は、変更登記が済んだ後、10日以内となります。e-Govを使えばオンラインで申請することも可能です。
金融機関への手続き
金融機関への手続きは、口座名義を変更するために必要です。金融機関によって必要な書類が異なりますので、事前に確認してから金融機関に向かうようにしましょう。金融機関の手続きでは、登記簿謄本の他に法人の印鑑証明書が必要な場合がほとんどなので、事前に入手しておいて下さい。
不動産管理会社への手続き
不動産管理会社への手続きは、自社ビルにオフィスを構えている場合には必要ありません。オフィスの場所を賃貸契約している場合に必要になる場合があります。対応は不動産管理会社によって変わりますので、事前に確認しておくと良いでしょう。社名変更が分かる登記簿謄本が必要な場合や、不動産管理会社によっては覚書を締結しなければならない場合もあります。また、手続きが不要な不動産管理会社もあります。
保険会社、携帯電話会社への手続き
不動産管理会社の他に、保険会社や携帯電話会社にも社名変更手続きが必要なことがあります。不動産管理会社のケースと同様で、対応は企業によってまちまちです。社名変更後に慌てなくて済むよう、企業に確認しておくと良いです。企業によっては登記簿謄本が必要なことがあります。
その他の手続き
以上がおおまかな社名変更手続きの一連の流れでした。その他にも、ガス・電気料金等の公共料金や取引先との契約関係に際して、社名変更手続きを要する場合があります。社名変更前に確認を済ませておきましょう。
社名変更における注意点
社名変更手続きの一連の流れを具体的に説明してきました。社名変更には注意点がありますので説明します。
新しい社名が使えるか調査する
注意点の最大のポイントは新しい社名が使えるか調査すること。これは「同一住所に同じ社名を使えない」というルールがあるからです。例えば自社が入っているオフィスビルに「株式会社代々木産業」という企業が入っていたら、「株式会社代々木産業」への社名変更はできないということです。登記自体ができません。
従って、新しい社名が使えるか事前に調査しておきましょう。調査の仕方はオフィスビルの確認ではなく、法務局に行くことです。法務局に行って商号調査簿を確認すれば、同一住所に株式会社代々木産業があるかどうかの確認ができるからです。オフィスビルに株式会社代々木産業があっても、本社所在地が自社と異なれば社名変更手続きができるからです。
また、インターネット登記情報提供サービスを使うことでも、新しい社名が使えるかの確認ができます。
実印の改印を忘れない
社名変更手続き後は法人実印も変更します。社名変更の登記申請の際に同時に改印手続きができます。法人実印の変更は法で定められている訳ではありませんが、法人実印は契約書や金融機関の手続きで使うもので、社名変更前の実印を使っているとまぎらわしさが残ります。まぎらわしさを防ぐためにも改印しておくと良いでしょう。
文字の制限に注意する
社名に使える文字には制限があります。漢字やカタカナ、ひらがなの他、ローマ字やアラビア数字、「&」「‘」「,」「_」「.」「・」を使うことができます。ギリシャ文字や()等は社名には使えないことになります。
まとめ
社名変更の際には様々な手続きが必要になります。社名変更は定款変更を要しますので株主総会にて社名変更決議を行います。その後、定款変更と変更登記することが社名変更手続きのスタートです。それから行政や金融機関への手続きを行うことになります。行政への手続きには提出期限がありますから、変更手続き前に確認しておくと良いでしょう。