ペルソナの意味とは?
ペルソナは、心理学用語として使われる他、ビジネスではマーケティング用語として使われます。マーケティング・心理学における使い方の違い、マーケティングではどんな使い方をするのかなどについて確認していきましょう。
ペルソナの語源
ペルソナはpersonaと表し、ラテン語が語源です。英語でいえばpersonです。古典劇においては役者がかぶる仮面を表します。
マーケティングと心理学における使い方の違い
ペルソナは、マーケティングと心理学で使われます。それぞれの違いを確認しましょう。
マーケティング
マーケティングにおけるペルソナは、自社の製品・サービスを利用してくれる理想的な顧客像として使われます。顧客像といっても、20~30代の女性、40~50代の女性などのようなおおまかなイメージではありません。理想的な顧客像としてのペルソナは、具体的な数値や場所、嗜好などを盛り込んで設定されます。
心理学
心理学におけるペルソナは、人間の外的側面のことを表す言葉です。外的側面とは、人間が役割を演じているという意味で使われます。例えば、IT企業で50歳の既婚女性は、会社ではITコンサルタントであり、管理職であり、役員から見れば部下といった役割を演じています。一方、プライベートにおいては、夫の前では妻、子の前では母、そして年老いた両親の前では娘を演じているという訳です。
ターゲットとの違い
マーケティングで使われるペルソナには、ターゲットという類似の言葉があります。ターゲットとペルソナの違いは、設定の細かさです。ペルソナの方がターゲットよりも設定が細かいですね。50歳の既婚女性はターゲットですが、ペルソナはもっとプロフィールを細かく描いて顧客像を設定するのです。
マーケティングで使うペルソナの事例
マーケティングで使うペルソナについて、具体的な事例を見ていきましょう。30代後半の男性に向けた不動産会社のマーケティングに使うペルソナです。
森田陸斗さんは、都内の製造業に勤める技術者。年齢は38歳で、妻と2人の男児に囲まれている。子どもの年齢は6歳と5歳。自宅は横浜にある鉄筋コンクリートのマンションを借りている。妻は働いていないが、次男が就学したらパートを始める予定である。森田さんの年収は750万円。
森田さんは新卒から同じ会社で働いている。会社の業績はわりと安定していて、これからも転職するつもりはない。勤務先は大企業なので人事異動がある。人事異動になると年収が多少下がることもあるが、転居を伴う異動にはならない。結婚して7年経ち、長男が来年進学するため、そろそろ自宅を購入しようと考えていた。
貯蓄は1,000万円あるが、全てを住宅ローンに回したくはない。万が一に備えて500万円は貯蓄に残しておきたいと考えている。
森田さんは、妻と一緒に子どもをのびのびと育てたいと思っているため、東京や神奈川の郊外に広めの戸建てを買いたいと考えている。騒音が気になるので鉄筋コンクリート造の戸建てを希望している。2人の子どもには平等に部屋を与えたい。
いかがでしょうか。不動産会社がペルソナを設定し、詳細なプロフィールを構築していくと、以上のようになります。既婚者で、30代後半、貯蓄があって、大企業で働いているビジネスマンの自宅購入に対するイメージが湧いてきます。「4LDKの間取りで、鉄筋コンクリート造の戸建て。外で子どもを遊ばせるために庭にはウッドデッキを設置する」などといったマーケティングの方向性を打ち出せるでしょう。
ペルソナを設定するメリット
ペルソナを設定するメリットを3つ紹介します。
顧客の人物像を絞り込める
ペルソナを設定すると、顧客の人物像を絞り込むことができます。ペルソナの事例で見てきた通り、自社の製品・サービスを利用してくれる顧客像を設定することができるのです。
顧客の人物像を絞り込めれば、マーケティングの方向性が定まるのでマーケティングの施策を打ち出しやすくなります。
顧客のニーズに合った商品を作れる
ペルソナを設定することで、顧客のニーズに合った商品を開発することができるようになります。ニーズにも色々な種類があります。30代男性会社員の事例では、「自宅を買いたい」という要望がニーズになりました。
また、顧客が困りごと・悩みを抱えていて、解決したいと思っていれば、それもニーズとなります。例えば、化粧品メーカーがペルソナを設定します。メーカーがペルソナで設定したのは、既婚の30代の専業主婦・上杉文香さん。上杉さんは、夫の給料だけなのでなかなか高級化粧品に手が出ませんでした。また、彼女には子どもが3人いて、ママ友など人に会う機会が多いため、年を取ってもキレイでいたいと考えています。
上杉さんに対して、メーカーは困りごと・悩みを解決できる商品を企画することができるでしょう。高級化粧品よりも安価で、美しさを保つことができるアンチエイジングな化粧品を開発すれば顧客に受け入れられる可能性が高まります。
メンバー間のコミュニケーションが深まる
ペルソナを設定すると、メンバー間でのコミュニケーションが深まります。マーケティング部のメンバー、マーケティングと営業など、部署の垣根を超えてコミュニケーションが深まっていきます。
既存の製品・サービスを新しい市場に投入したり、訴求力のある広告を打ち出したりする際にも、コミュニケーションが深まっていれば、的確な市場に投入し、質の高い広告を打ち出すことができます。
ペルソナを設定するデメリット
ペルソナ設定にはデメリットもあります。
ペルソナ設定を間違えてしまう
ペルソナ設定には時間と費用がかかります。感覚的にペルソナを設定してもうまくいきません。ペルソナにおける理想的な顧客像はイメージですが、綿密な調査やリサーチを元に作り上げたペルソナが顧客像になる訳です。ですから、ペルソナにはリサーチに基づく合理的な根拠があります。
しかし、調査やリサーチには時間と費用がかかります。時間と費用をかけられる会社ばかりではありませんよね。そうなると調査やリサーチができず、どうしても感覚によってペルソナを設定し、結果的にペルソナ設定を間違えてしまうことになります。間違ったペルソナ設定によってマーケティング施策を講じても、顧客像が実態と乖離しているため誤った施策になってしまうリスクが生じます。
クリエイティブな発想が出づらくなる
ペルソナは顧客目線に沿ったマーケティング施策を講じることができます。一方で、細かな顧客像の設定に縛られ過ぎて、製品開発においてクリエイティブな発想が出づらくなることがあります。
リサーチに基づく理想的な顧客像を設定すれば、顧客のニーズには応えやすくなるでしょう。しかし、クリエイティブな発想をするには、顧客のニーズを先取りするような考えに基づく必要があります。顧客の要求通りの製品を作るだけでなく、顧客のニーズを創造するような製品を開発することがクリエイティブな発想には求められています。しかしペルソナ設定だけでは、顧客のニーズを創造できないためクリエイティブな発想が出づらいのです。
ビジネスでのペルソナ設定はなぜ重要なのか
ペルソナ設定にはメリットとデメリットがありますが、ビジネスでのペルソナ設定の重要性は高いです。ビジネスでのペルソナ設定はなぜ重要なのか、解説していきます。
新規事業開発で役立つ
企業は既存事業だけでは生き残っていけません。やはり新しく事業を作っていく必要があるのです。新規事業を開発していくにあたって、ペルソナ設定は役立ちます。
新規事業開発にはリスクが伴います。新しい市場、新しいビジネスモデル、新しい製品・サービス。新しいことに挑戦するには、既存事業とは違ってこれまでのやり方が通じないリスクがあるのです。しかし、ペルソナ設定を行うことで顧客のニーズをつかんでおけば、新規事業開発が成功しやすいです。
ペルソナ設定のデメリットである「クリエイティブな発想が出づらくなる」ことについては、リサーチ結果に思考の枠組みをとらわれ過ぎることなく、開発者のクリエイティビティを重視することで対処する必要があるでしょう。
選択と集中で役立つ
ペルソナ設定すれば理想的な顧客像が定めるので、事業の方向性が明確になります。結果として、事業の選択と集中に役立つようになります。
まとめ
ペルソナは、心理学とビジネスで使われる言葉です。ビジネスにおいては、理想的な顧客像というマーケティング用語で使われました。メリット・デメリットや事例を参考にしながら、マーケティング戦略に役立てていきましょう。