ビジネスに課題が増えて複雑化すると、会社経営側には迅速な意思決定が求められます。MBO(マネジメント・バイアウト)は、企業が重要な成長戦略をする手法として知られています。今回は、MBOの意味やメリット、企業事例を合わせてご紹介しましょう。
MBOとは
MBO(マネジメント・バイアウト)とは経営思想家ピーター・ドラッカーが提唱したM&Aの一つです。
MBOの目的は大企業の事業拡大、中小企業の事業承継にも用いられています。
ここからは、MBOの意味と近年注目されている背景、上場廃止との関連を見ていきましょう。
MBOと目標管理制度とは別のもの
MBO(マネジメント・バイアウト)とは、オーナー経営者、会社経営陣が自社の事業部門、または全てを買収し、独立した経営権を手にする手法です。
長期的な成長戦略として経営権を強化し、中小企業の事業承継や事業譲渡などの目的のために実践されます。
一方で、目標管理制度とは、グループまたは個人で目標を設定して、その達成度によって評価を定める手法です。
社員一人ひとりの目標を、経営目標や部門目標と連動させ、その達成度で評価を行う人事制度です。
マネジメント・バイアウトが注目される背景
近年、MBO(マネジメント・バイアウト)が話題になっている背景は何があるのでしょうか?
大きなポイントとしては、経営体制の見直しや株式公開(株式上場)の価値が下がっていることが挙げられます。
日本は少子高齢化の真っ只中にあり、IT技術の急速な成長と異業種の参入により、市場は縮小しています。
多くの企業は海外市場への進出を検討するなど、経営戦略の変更が求められているのです。
MBO(マネジメント・バイアウト)を実行すると、経営陣と銀行や投資ファンドといった株主の意思決定権が強化され、迅速で柔軟な経営を実現します。
従来、多くの日本の企業は、個人に期待される職務遂行能力が重要視されていましたが、近年の成果主義の普及により、目標管理が導入されています。
MBOと上場廃止との関連性
株式公開(株式上場)は、主に製造業にとっては、
設備投資資金を調達するための最適な手段でした。
しかし、IT企業(情報・通信業)の場合は、株式公開前からSNSにて知名度があるケースも増えており、株式公開する価値がなくなっているのです。
中長期的な成長戦略をするため、MBOによる上場廃止となった非公開企業は増えています。
ただし、上場廃止は既存株主との間で利益相反が起こる可能性があるので注意が必要です。
各取引所グループが制定する上場廃止基準に従って
実行する必要があります。
マネジメントバイアウトを行うメリット
MBO(マネジメント・バイアウト)を実行するメリットは、経営の建て直し、事業拡大、事業承継などを享受できることです。
意思決定のスピードをUPさせる
MBOを実行することにより、経営陣による意思決定のスピード化が可能となります。
経営環境・市場環境の変化に合わせて、経営陣の自社株占有率を増やし、会社の経営権を強化するのです。
組織内の結束力を高める
経営陣による自社企業買収は雇用の継続に繋がり、
組織内の結束力を強化します。
経営陣と従業員との間に一体感が生まれて、組織内の結束力の強化に期待できます。
新たな挑戦をする機会となり、従業員のモチベーションアップにもなるでしょう。
後継者不足の打開策にもなる
日本の中小企業は後継者がいない問題に直面しており、M&Aによる事業承継が活発化しています。
中小企業の後継者不足の打開策として、MBOは事業承継の促進となると注目されています。
MBOは信頼のおける役員や従業員に事業承継することができるM&Aだからです。
mboの事例
上場企業にとって、MBOは経営危機に対する経営再建や事業拡大のチャンスとなります。
ここからは、日本でMBOをを実施した企業の事例を見ていきましょう。
タワーレコード株式会社
2002年10月、アメリカ本社の経営不振により、日本法人の経営陣によってMBOを実行し、別会社として独立。
「日興プリンシパル・インベストメンツ」が全株式を取得し、「タワーレコード」の商標権も取得。
その後の筆頭株主は「NTTドコモ」となり、50.3%を保有する子会社となっています。
すかいらーく
「すかいらーく」は創業家一族の経営陣がMBOを決断し、経営再建のために非上場化を果たしました。
しかし、MBO後の業績回復は見られず、大株主の投資ファンドが社長解任要求し、経営陣と投資ファンドが対立しています。
アデランス
株式会社アデランスと株式会社インテグラルと共同は競争激化に対抗するためMBOを実施し、上場廃止に至りました。
多様化する市場に対応し、グローバル市場でのシェア拡大を目指した経営に取り組んでいます。
アクトコール
アクトコールは連結子会社であるAI事業の株式会社ジーエルシーの全株式を現取締役副社長である金子裕輔氏へ譲渡しました。
株式会社東栄リーファーライン
マグロ運搬会社、株式会社東栄リーファーラインはMBOに大株主が反発し、不成立になった事例があります。
株式会社U-NEXT
株式会社USENは、親会社である株式会社U-NEXTの代表取締役社長及び支配株主である株式会社UNO-HOLDINGSのMBOにより、株式の非公開化を実施しました。
安定的な収益に繋がっている音楽配信事業に注力し、企業価値の向上を目指しています。
MBOを行う際のポイント
多くの日本企業も経営戦略のひとつとしてMBOを
活用しています。
ここからは、MBOをを成功させるためのポイントを見ていきましょう。
買取価格の算出
MBOに向けた買取価格を出すために、企業の全体的な価値を算出します。
創業者や会社経営陣の意思を排除して、自社企業の業績、財務状況、時価総額を参考に適性価値を算出するのがポイントです。
不足分の資金を準備する方法について検討する
MBOは現株主から自社株を買い取るため、多額の資金が必要となります。
不足分の資金調達は、銀行・投資ファンドなどの金融機関から出資金を募り、借入金を検討しましょう。
金融機関に事業計画書を提出して融資可否を審査されます。
金融機関からの借入が難しい中小企業や個人事業主には、日本政府100%出資の政策金融機関である日本政策金融公庫の利用がおすすめです。
MBOを行う際の注意点
上場会社によるMBOは、現株主との利益相反が発生しやすいので注意が必要です。
買取に応じない少数株主が株主として残ってしまうことも少なくありません。
買収者であるオーナーや経営陣の見解を排除し、客観的な財務データに基づき適切な買取価格を設定することが大切です。
まとめ
市場環境の急速な変化において、MBOは重要な経営戦略として有効な手段です。
事業再編に向けた意思決定のスピード化、組織内の結束力強化に効果的です。
最近では、中小企業の事業承継にも活用されておりさらに注目されるでしょう。