スケールメリットとは、企業規模の拡大によって得られる様々な効果を意味しています。今回は、企業規模を拡大するカギとなる情報やノウハウ、業種別の具体例を解説していきます。
スケールメリットとは?
スケールメリットとは、企業の規模や利益拡大から生まれる様々なメリットの総称です。
例えば、生産性向上、効率性上昇、知名度向上などの効果が挙げられます。
経営規模が大きくなる程、生産性や経済効率が上がっていきます。
スケールメリットの反対語は?
スケールメリットは経済学や経営学の用語であり、反対語は、損失やデメリットになります。
スケールメリットの規模が小さくなる程、価格交渉力が下がる、仕入れコストがかかる、ブランド力が下がるデメリットがあります。
スケールメリットの効果
スケールメリットは以下のような様々な効果が期待できます。
- 経営効率化
- 作業速度や精度の向上
- 生産量の増加
- 固定費率の減少
- 仕入れコストの削減
- 運送、物流コストの削減
- 販売エリアの拡大
- 売上高の増加
- 知名度向上によるブランド力
- 集客力の向上
- 広告コスト、採用コストの削減
- 競合他社の優位性
スケールメリットの使い方
スケールメリットを使った例文は下記のようなものになります。
- 飲食チェーンの多くは店舗数増加、エリア拡大の施策によりスケールメリットを追求している
- 大手企業のスケールメリットを享受するためにフランチャイズに加盟する
- 競争優位性を高めるためにスケールメリットを活かしたコスト・リーダーシップ戦略が必要である
「ある企業が別の事業と共同化することで、スケールメリットの恩恵が期待できる…」といった使い方が一般的になります。
スケールメリットの具体例
企業の将来ビジョンを明確にして、課題解決や目標達成に向けた一貫性のある戦略が求められます。
ここからは、業種別にスケールメリットの具体的な活用法を見ていきましょう。
小売・飲食業界
小売・飲食業界は、比較的スケールメリットを享受しやすい業界の一つ。
例えば「全店舗の仕入れを一括集中する」「仕入れコストの削減」「販売価格を限界まで引き下げる」などが主な施策になります。
地域住民の好みに特化した品揃え、地産地消の推進、クーポン券(割引券)を発行することも効果的です。
運送業界
運輸業におけるコストはガソリン代、人件費、車両関連費が多くを占めています。
運輸業においてスケールメリットを最大限引き出すには、市場ニーズ・顧客満足度と経営効率化のバランス調整が求められます。
教育業界
学習塾や学習教材など、企業が業績を上げるためには、知名度、実績、目標達成を可能にする学習プログラムがカギです。
広告により知名度向上を図り、利用者の合格者数数を増やすことで実績となります。
良質な学習プログラム作成に必要なデータの収集を行うことができるようになるでしょう。
製造業界
製造業界は数ある業界の中でも多くのスケールメリットを得ることが期待できます。
例えば、製造機械や産業ロボットの追加導入や大規模生産の実施、大量仕入による原材料の仕入れのコスト削減が効果的です。
売上規模が大きくなればなる程、総利益、販管費の増加が見込めるでしょう。
人材業界
人材紹介会社や職業紹介会社は、求職者となる会員からの信頼性が全てで言っても過言ではありません。
企業のブランドイメージが営業収益に直結するため、広告宣伝費を増加させて登録数の増加を目指します。
報酬額の増加などのスケールメリットとのバランスを見極めながら企業規模を拡大させます。
スケールメリットとシナジー効果
ここからは、スケールメリットとシナジー効果(相乗効果)の違いを見ていきましょう。
シナジー効果とは
スケールメリットとは、同一事業の事業規模、同一商品の生産規模の拡大によって得られる様々な効果です。
その一方で、シナジー効果とは、異なる複数の事業や製品を同時に扱うことによって生まれる相乗効果です。
消費者・市場ニーズの多様化により、多くの企業は複数の事業を立ち上げ、収益の拡大を図る経営多角化戦略に取り組んでいます。
では、経営多角化戦略で得られるシナジー効果の事例を見ていきましょう。
事例1:ソフトバンク
2001年にブロードバンド通信に参入したソフトバンクは2004年7月に日本テレコム(JT)を買収。
従来の通信の設備を使ったコスト削減により、法人顧客の取り込みに成功しました。
同年にホークス球団を買収しプロ野球の球団を持ち、知名度をアップ。
2006年には、ボーダフォン日本法人を買収して携帯電話事業に本格的に参入。
ネット回線とのシナジー効果が発揮されて、日本を代表する携帯キャリアに成長しました。
事例2:楽天
インターネットモールの最大手の楽天は、2000年に店頭市場に上場してからM&Aで事業を拡大しています。
2003年に旅行サイトを運営していたマイトリップ・ネット株式会社を完全会社化、2004年にサイトを統合。
同年ディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券株式会社(現 楽天証券株式会社)を子会社化、翌年あおぞらカードを子会社化。
2006年、楽天グループ「楽天経済圏」構想を発表しています。
企業が複数の事業会社をグループ化してユーザーを確保してシナジー効果を享受した成功例です。
事例3:JT
JT(日本たばこ産業)は1996年のピークから2014年には半分までに売上低下。
JTは企業を買収を繰り返し行い経営シナジー効果も発揮しています。
1999年、米国RJRナビスコの米国外たばこ事業を買収、2007年は英国のたばこ大手ギャラハーを買収、その他海外のたばこメーカーを続々と買収しています。
海外の会社を買収した後は経営は好調のため、シナジー効果が現れています。
シナジー効果を最大化するためのポイント
M&Aによるシナジーを最大限発揮させるためには、まずは現時点の会社の価値を把握します。
財務諸表を見ながら全支出を洗い出し、事業の非効率性をなくすことが企業価値を高めることに繋ります。
タイミング
業績が良い時、上向きになると確信できるタイミングは条件を有利に交渉可能です。
システムを統合すれば自動化できるため、経営のスピードアップと業務効率のアップが見込めます。
グループ全体の経営状況を正確に素早く把握できて、連結決算の早期化が実現できるでしょう。
PMI
PMI(post merger integration)とは、M&A後の企業間の融合プロセスのこと。
人事制度と評価制度が統合したことによる従業員のモチベーション低下が、シナジー効果を阻害することもあります。
M&Aによるシナジー効果の恩恵を受けるためには、その後のPMIも意識した交渉を進めることが大切です。
リスクの検討
合併・買収にはメリットだけでなく常にリスクも検討することが不可欠です。
例えば、社風や企業文化、情報システムの統合による従業員のモチベーションの維持、人材流出のリスク。
過剰に市場シェアを取ると独占禁止法に触れる恐れがあるため、法的に許可されるか検討する必要があります。
まとめ
スケールメリットは、企業の経営効率を図るために共通する戦略です。
生産効率を図り、経費を効果的に削減するために視野に入れてみるのが良いでしょう。