企業を成長させるには圧倒的な努力と他者と差別化するほどの能力が求められます。その企業だけのオリジナルがあってこそ、業績も伸びていくでしょう。
コア・コンピタンスは競合他社を上回る能力を示す言葉として使われており、企業でも導入事例が増えています。コア・コンピタンスの意味や使い方を、実際で確立された企業の事例に合わせて紹介します。
コア・コンピタンス / コアコンピタンス経営とは
よそでは真似することができず、独自の価値を提供してくれる技術こそがコア・コンピタンスです。
コア・コンピタンス経営はユーザーに向けて新しい価値を提供するための手法であり、経営学者のゲイリー・ハメル氏と米ミシガン大学ロス経営大学院のC・K・プラハラード教授の二人によって生み出されました。
『コア・コンピタンス経営』という書籍に詳細が書かれていて、その手法はビジネスに新しい可能性を見出しています。
コア・コンピタンスを使った例文
実際にコア・コンピタンスを文章で書くための例文についても紹介します。
コアは核、コンピタンスは能力という意味をそれぞれ持ちます。他では真似できない特徴というニュアンスで使われることが多いので、意味を踏まえた上で使いましょう。
例文1
新しく開発されたシステムは他社では真似できず、弊社のコア・コンピタンスと呼べます。
例文2
会議ではコア・コンピタンスについて振り返りたい。
例文3
コア・コンピタンスについて理解して、実施することで市場競争で勝ち抜くことができる。
コア・コンピタンスを確立するメリット
コア・コンピタンスを確立させることで、企業は大きく進化します。
その企業を支えてくれる強みとなり、社員にとってもやる気を上げる元となってくれます。コア・コンピタンスは他では真似できない唯一無二のものであり、確立させることができれば圧倒的な強みになります。
中核となる技術を獲得できた企業は、業界からも注目されていきます。
コア・コンピタンスの確立は簡単ではない
コア・コンピタンスの確立は企業にとって重要ですが、簡単ではありません。
同業他社には真似できない技術や製品を作る必要があるため、膨大な知識と経験が必要です。また、少しでもタイミングを間違えたら、そのアイディアを誰かが先取りする可能性もあります。
優れた技術であっても、ユーザーの要望に応えられずに価値を提供できないのであれば、コア・コンピタンスになりません。技術と真心、この二つが揃ってこそ、コア・コンピタンスの確立が可能です。
コア・コンピタンスとケイ・パピリティの違い
ケイ・パピリティという企業の強みを意味する言葉があり、コア・コンピタンスと混同して使われることが多いです。
ただし、コア・コンピタンスはその企業だけのオリジナリティであることに対して、ケイ・パピリティは組織全体の能力を意味します。
人やモノ、金や情報などを上手に扱うためのプロセスも含まれており、企業そのものの能力を示したい時にケイ・パピリティを使ってみましょう。
コア・コンピタンスの要素
コア・コンピタンスを見極めるためにはいくつか重要な要素があります。
それぞれのポイントを把握しておくことで、コア・コンピタンスを確立させるための参考にできます。
模倣可能性(Imitability)
模倣可能性(Imitability)とは、他社にとって簡単に模倣しやすいかというポイントです。
この模倣可能性が低いほど、他社に真似をされにくくなるので、ビジネスにおいて大きく優位になります。
移動可能性(Transferability)
移動可能性(Transferability)は一つだけでなく、多くの分野や製品で応用できる技術のことです。
移動可能性(Transferability)が高ければ、企業で展開される多くの製品の質が優れます。
代替可能性(Substitutability)
代替可能性(Substitutability)は他に置き換えることのできない存在のことです。
その企業でしか展開できないビジネスがあれば、独自性が認められるようになり、大きく優位に立つことができます。
コア・コンピタンスを確立した企業の例
実際にコア・コンピタンスを確立した企業の例についても紹介します。
日本を代表する企業の多くがコア・コンピタンスを確立しているため、今日の人気があります。コア・コンピタンスに興味があれば、まずは確立した企業について知ってみましょう。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は日本国内でも人気が高く、優れた業績を出し続けています。
製品の原材料の調達から製造など、一連の流れをスムーズにするサプライチェーンと呼ばれるシステムを意識したことで、多くの製品が支持されるようになりました。
トヨタのサプライチェーンこそがコア・コンピタンスであり、開発設計の時間が世界でもトップクラスで短いため、販売のトヨタと呼ばれています。
ソニー
数多くのサービスを提供しているソニーグループでもコア・コンピタンスを掲げており、HPからチェックすることができます。
電気製品や回路の設計などの技術領域、ソニーグループの特徴と社員のスキル、商品情報など細やかにコア・コンピタンスが書かれています。
社員の90%がエンジニアであるなど、一人一人が高いスキルを誇っているため、ソニーのコア・コンピタンスは高く評価されるようになりました。
ホンダ
自動車の普及と共に排気ガスが社会問題になり、1970年にアメリカのエドムンド・マスキー上院議員によって大気浄化法改正法ことマスキー法が提案され、この法案をクリアした自動車のみが、販売が認められるようになっています。
ホンダでは新しく公害になりにくい高性能エンジンを開発したことで問題解決を果たし、今日の支持を得ています。
エンジンだけでなく、製品デザインやマーケティング戦略も他社では真似しにくいため、ホンダのコア・コンピタンスが注目されるようになりました。ホンダでは自動車やバイクだけでなく、芝刈り機や除雪機でも地球にやさしいエンジンが搭載されています。
富士フィルム
富士フィルムと言えばカメラのメーカーとして有名ですが、自社の強みを伸ばしたことで現在では多数の事業を展開しています。
自社の強みを幅広い商品や業界に応用できることを考えた上で、新しい製品が登場しても強みを生かすことができた上でコア・コンピタンスと定義しました。
富士フィルムはカメラの他にも、化粧品や医療のサポートも行っているため、コア・コンピタンスが確実に成功しています。
味の素
味の素は100年を超える歴史を誇る企業であり、うま味を追求したビジネスがコア・コンピタンスとして確立されました。
うま味の元となるアミノ酸を研究し続けて、先端バイオ・ファイン技術と呼ばれる新しい技術を生み出しています。
調味料はもちろんのこと、医薬品や化粧品、更には電子材料の提供にも成功しています。味の素グループは独自の強みを伸ばしたことで、バイオ・ファイン技術が高く評価されました。
コア・コンピタンスを分析する方法
コア・コンピタンスを確立させたいのであれば、分析する方法についても知ってみましょう。
自社の強みを知ることこそ、コア・コンピタンスを実現するための第一歩になるため、分析についても紹介します。
SWOT分析やコア・コンピタンスシートを活用する
まずは、自社の状況やスキルを整理することができるSWOT分析を行ってみましょう。SWOT分析を利用すれば強みと弱み、そして経営における機会と脅威を分析することができます。
それぞれの分野で詳しい人たちを集めて、内容を出し合っていきます。この時、発言を否定することは厳禁であり、それぞれの課題に対して知恵を出し合っていくことがポイントです。
この時、それぞれの特徴を強みと弱みに分けて分析できるコア・コンピタンスシートも作成し、自社の課題について意見を出し合ってみましょう。
出てきた意見を踏まえた上で、今後の動きを決めてみましょう。
情報を整理し分析する
分析の際には多くの情報が出てくるため、自社の強みと弱みを整理しましょう。
強みをどうすれば伸ばせるか、そして弱みはどのように改善すればいいのか、それぞれが明確になれば、課題をクリアするための案も出てきます。
分析結果をどう活かすのかが重要
コア・コンピタンスの分析が終わった後は、結果を活かすための方法も考えてください。
分析をすれば強みと弱みの両方を客観的に整理できるため、シートに書かれた多くの意見を参考にしましょう。
分析結果を書類またはデータで社員全員に配布して、コア・コンピタンス確立に必要な行動を習慣にさせましょう。結果が出れば終わりではなく、成果に繋ぐことが重要です。
コアコンピタンス経営を自社に取り入れるためのポイント
最後に、コア・コンピタンス経営を取り入れるためのポイントもいくつか紹介します。
コア・コンピタンス経営を取り入れた企業の成功例は多いですが、成果に繋げるまでに数多くの努力を重ねました。必要なポイントも把握しておくことで、コア・コンピタンス経営も取り入れることができます。
中長期的な視点をもつ
自社の強みを見つけることは容易ではなく、短期的に分析を行っても正確な判断は難しいです。焦って業務を行っても、充分なクオリティを保つことは難しく、何よりも社員やユーザーも満足することはできません。
まずは短時間のアンケートでもいいので、分析を始めてください。少しずつ出てきた課題を整理した上で、分析してみることで新しいアイディアも生まれます。
時間をかけて強みと弱みを見つけていき、コア・コンピタンス経営を取り入れていきましょう。
判断力
誤った判断を下しては企業を成長させることはできません。
高い目標を掲げても、実際の実績がかけ離れてはコア・コンピタンスの設立は難しいです。目標達成におけるリスクを抑えて、少しずつ実績を積み重ねていきましょう。
一度立てたプランに何らかの不具合があった場合、何か問題があったのではないか俯瞰しましょう。改善方法を思案して、また業績が下回った場合は早急な原因特定を心がけてください。
コア・コンピタンスを設立させた企業は判断力に優れており、軌道修正も可能とします。
実行力と継続力
分析をした後は、すぐさま実行することが大事です。
上記で述べたリスク削減の判断力と同様に、迅速な実行力も求められます。また、すぐに成果を求めず、長期的な視点を持って継続することも大事です。
業績が低下しても恐れず、軌道修正を行いながら継続しましょう。その途中に出てきた意見も参考にすれば目標達成ができ、コア・コンピタンス経営が取り入られるようになります。
まとめ
コア・コンピタンスとはその企業だけの強みであり、実現には圧倒的な分析と行動が必要です。
長期的な視点で行動し、意見を出し合いましょう。コア・コンプライアンスを確立させた企業も、長年に渡る行動の末に業績を上げています。
技術を磨き、ユーザーを満足させるためのアイディアを出し続けることで、コア・コンプライアンスの確立に近付きます。