労働者名簿とは
労働者名簿とは、労働者の情報を載せた名簿です。労働者を雇用する会社には、例外なく作成・整備が義務づけられています。
労働者名簿を作成することで、社会保険手続きなどの労務や、人事管理にも活用することができます。
労働者名簿の設置義務
労働者を雇っている場合は、全ての会社が作成しないといけないことになっています。したがって、大企業・中小企業などの規模や、業種、労働者人数などに関わらず作成、整備する義務があります。
労働者名簿はどんな時に使うのか
労働者名簿はどんな場面で使うかというと、例えば日常的な人事労務管理に使います。
人事異動があれば労働者名簿を変える必要があります。労働者名簿には氏名・住所、昇進・昇格の履歴など労働者の個人情報を記載しておき、変更があれば更新しなければなりません。ですので、人事管理にも使える訳ですね。
あるいは、労働基準監督署の調査が入った時にも労働者名簿を使います。名簿の提出を求められることがあるからです。
提出を求められた時に、労働者名簿を作っていなかったり、整備していなかったりすると労基署に罰金を請求されることもあります。
労働者名簿の対象になる社員
労働者名簿の対象になる社員は、会社に雇用されている労働者となります。ですので、基本的には全ての労働者が対象になると考えて良いです。
契約社員
契約社員も会社に雇用されている以上は労働者名簿に記載する対象者となります。
パート・アルバイト
パートやアルバイトといっても、フルタイムではなく短時間で働く人もいます。
そういう場合、労働時間が短いから労働者名簿に記載しなくても良いように思うかもしれません。しかし、フルタイムであろうと短時間労働であろうと、あるいはパートやアルバイトの名称に関わらず、労働者名簿に記載する対象になります。
派遣社員
派遣社員は同じ勤務先で働いていますので、労働者名簿に記載する対象者と思うかもしれません。
しかし、派遣労働者は会社に雇用されていませんから対象者に入りません。そもそも、派遣労働者の住所や生年月日などは、人事といえども知らされないことがあります。
このように労働者名簿の対象者は、名称のいかんに関わらず労働者名簿の対象者となるということが分かったと思います。
労働者名簿は法定三帳簿のひとつ
労働者名簿は、法定三帳簿の一つと言われています。法定三帳簿というのは、労働基準法で設置が義務付けられている帳簿のこと。労働者名簿のほか、賃金台帳・出勤簿があります。
1. 労働者名簿
労働者名簿は、雇用されている労働者についての名簿です。氏名・住所・性別・履歴・雇入れ年月日などを記載するものです。保存期間は退職日、解雇日あるいは死亡日から3年間です。また、記載事項に変更があったら遅滞なく変更するようにしましょう。
2. 賃金台帳
賃金台帳は、雇用されている労働者について、賃金に関する労働者の名簿です。賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外労働時間数などを記載するものです。保存期間は最後に記入した日から3年間です。
3. 出勤簿
出勤簿は、氏名・出勤日・始業・終業時刻・休憩時間などに関する労働者の名簿です。保存期間は労働者が最後に出勤した日から3年間となっています。
労働者名簿の書き方や記載すべき事項は?
次に労働者名簿の作成ルール、記載するべき事項などについて確認していきましょう。
作成する際のルールは?
労働者名簿には、次の通り作成する際のルールがあります。作成前にきちんと確認します。
- 記載すべき事項を網羅すること
- 保存期間を守ること
- 労働者名簿の対象者を含めること
ちなみに、記載すべき事項は、性別・氏名・生年月日・住所・従事する業務の種類・雇入れ年月日・履歴などとなります。パソコンで名簿を作ることも可能ですが、すぐにプリントアウトできる状態にしておくことが求められます。
性別、氏名、生年月日
性別、氏名、生年月日などは正確に記載します。氏名はフルネームで書きます。住所も正確に記載しましょう。労働者名簿にある情報は社会保険手続きにも活用できるものですので、正確を期して下さい。
従事する業務の種類
従事する業務の種類は、労働者がどんな仕事をしているかを記載します。例えば、営業、技術、製造、SE、人事などです。ただし、1つの事業所の労働者数が常時30人未満の場合は記載不要の項目です。
雇入れ年月日
雇入れ年月日は、入社日を記載します。内定日ではありません。
退職/死亡年月日と事由
労働者が退職したり死亡したりした場合は、その年月日を記載して下さい。死亡した場合はその事由も書きましょう。なぜ死亡したのかについて具体的に記載することが重要です。自己都合で退職した場合は事由は要りませんが、会社都合で退職した場合はなぜ解雇したのか事由を明記して下さい。
履歴
履歴では、労働者の昇進・昇格、学歴、人事異動の内容などを具体的に書いて下さい。
労働者名簿の履歴はどこまで書くべきなのか
労働者名簿の履歴をどこまで書くべきかは特に定めはありません。最低限、労働者の昇進・昇格、学歴、人事異動は明記します。
労働者名簿は正社員に限らず作成する義務があるので、たとえアルバイトであっても履歴を記載します。
労働者名簿の見本やテンプレート
労働者名簿には、法律で定められた書式はありません。といっても何もないとかえって書きづらいので見本やテンプレートを紹介しましょう。
労働者名簿の見本を紹介
労働者名簿の見本には厚生労働省に様式がある他、エクセル・PDFなどのテンプレートもあります。
エクセル・PDFはインターネットで検索して得られます。注意したいのは記載すべき事項が網羅されているかということですね。うっかり記載すべき欄がなかった!ということがないように、ネットで入手したテンプレートには注意をしておきましょう。
厚生労働省のページに様式19号のテンプレートも
厚生労働省のページから様式19号のテンプレートをダウンロードすることも可能です。厚生労働省のテンプレートなので、記載すべき事項が漏れていることもありません。
エクセル・PDFの労働者名簿のフォーマットも
インターネットで検索すれば、厚生労働省以外にもエクセルやPDFで労働者名簿のフォーマットをダウンロードすうることもできます。PDFですと手書きになるので整備が大変ですので、エクセルのフォーマットを使用すると良いでしょう。
労働者名簿の保存期間などについて
労働者名簿の保存期間・起算日・更新頻度など具体的な運用について見ていきたいと思います。
保存期間
労働者名簿の保存期間は3年間となっています。
起算日
保存期間の起算日は、死亡・退職・解雇日となります。
更新頻度
労働者名簿の更新頻度は、労働基準法施行規則第53条によると遅滞なく行うことになります。
労働者が氏名を変更したとか、住居を引っ越したとか、人事異動があったとか、そういった事態が発生した時は更新する必要があります。まとめて更新しようとすると更新漏れが発生する可能性がありますので、変更があったらその都度更新していくようにしたいものですね。
変更履歴
労働者名簿は、記載すべき事項の変更があったら、遅滞なく更新しないといけません。変更履歴を残しておくことまでは求められていません。労働基準法では最新の状態に整備しておけば良いことになっています。
提出先
労働者名簿は社内に備え付けておけば良く、特に提出する義務はありません。ただ、労働基準監督署の調査が入った時は提出するよう求められることもあるんですね。そして、この時に提出に応じれば良いです。
まとめ
労働者名簿は、労働者を雇用し続ける限り、作成・整備し続けなければならない大切な書類です。
書類のみならず、データで作成しても構いません。記載すべき事項を網羅しておかないといけませんが、変更があれば遅滞なく、整備する必要があります。