心理的安全性とは
まずは、心理的安全性がどのようなものなのか、その概要から確認していきましょう。
心理的安全性の意味
心理的安全性とは、他の人の反応に怯えや羞恥心を感じずに、ありのままの自分をさらけ出せるような環境のことです。心が落ち着いているからこそ、本来の自分が出せるというわけです。ちなみに、心理的安全性は英語だとpsychological safetyとなります。
心理的安全性という言葉は古くからありましたが、Googleが取り組んだ労働改革プロジェクトの結果、心理的安全性を担保できるかどうかが、生産性の向上に関わってくる、とされたことで注目を集めるようになりました。
心理的安全性が不足するとどうなるか
心理的安全性が足りない状態では4つの不安が発生するとされています。
1つめは、周囲の人から無知と思われることに対する不安です。不安から行動に移すことができないため、仕事上でわからないことがあっても十分にコミュニケーションが取れません。
2つめは、周囲の人から無能だと思われることに対する不安です。この不安の場合、自身の欠点を知られる(=無能だと思われる)ことを恐れています。無能だと思われたくないために、ミスが起こっても報告しないといった事態が起こる可能性があります。
3つめは、周囲の人から嫌われているのではないか、邪魔なのではないかといったことに対する不安です。この場合、自分の発言が議論の邪魔にならないように、発言を控えるようになってしまいます。
4つめは、ネガティブだと思われることに対する不安です。この場合、チームの和を乱すことを恐れるため、本来なら相手に指摘するべき場面でも何もしないなど、消極的になってしまいます。
これらの不安が出てくると、個人はもちろん、チームのパフォーマンスも悪くなってしまうので注意が必要です。
心理的安全性の確保は生産性や創造性の向上につながる
心理的安全性が確保されている状態は、不安を感じることがないため、主体的・積極的・協力的に行動できるようになります。
自分らしさを発揮して仕事に取り組めるので、今までになかったようなアイデアやチーム内での建設的なディスカッションなどもできるようになります。
その結果、チームの生産性や創造性も向上していくはずです。
心理的安全性を確保するメリットや作り方
ここで、改めてなぜ心理的安全性を確保することのメリットとどのようにして作ればいいのか、という点について解説します。
心理的安全性を確保するメリット
心理的安全性を確保するメリットとしてあげられるのが、メンバーに余計なストレスがかからない点です。周囲に対する不安を感じないため、それに対するストレスがなく、仕事にも取り組みやすい状況になります。
また、不安がないということは、心に余裕があるということなので、仕事のパフォーマンスも向上するでしょう。
心理的安全性の作り方(個人にできる簡単な取り組み)
心理的安全性を作るためには、リラックスした状態で、仕事に取り組むことが大切です。あまり緊張感を持ちすぎることなく仕事に向き合うようにしましょう。ただし、リラックスを履き違えてしまい、楽をしようとする人が出てくる恐れがあるので注意してください。
また、ポジティブに考えることも重要な要素です。課題や問題に直面した時、ネガティブな感情ばかりを抱いていては、前向きになれません。そのため、普段から口にする言葉をできるだけポジティブなものにするようにしましょう。
心理的安全性を高めるためにマネージャーができること
心理的安全性を高めたい時、マネージャーの立場からでもいくつかのことができます。どのようなことができるのか、確認していきましょう。
積極的な姿勢を示す
チームのメンバーに対してマネージャー自身が積極的な姿勢を示すことは非常に重要です。
具体的には、以下のようなことが挙げられます。
・目の前の会話のみに集中する
・部下であってもチームのメンバーから何かを学ぼうと質問をする
・メンバーの話を傾聴する
・相手と目を合わせる
・話を聞く時に少し体を前のめりにする
など
理解していることを示す
マネージャーは、メンバーのことを理解していることを示すことで、メンバーは安心感を得ることができるでしょう。具体的には、以下のようなことが挙げられます。
・相手が言ったことを要約する
・同意できる点とできない点を示す
・意見を率直に交わす
・理解している旨を言葉で表す(なるほど)
・話を聞いているときは頷く
など
対人関係において相手を受け入れる姿勢を示す
人によっては、マネージャーは恐れ多い存在と思っているかもしれませんが、マネージャーから受け入れられている姿勢を見せられれば、安心感を作ることができます。具体的には、以下のようなことが挙げられます。
・自分の好みややり方を伝えて、メンバーの好みややり方を周囲に伝えるようにする
・1対1の会話をするなどメンバーのために時間を割く
・メンバーに感謝の気持ちを示す
・仕事以外のことも話をするなど親密な関係を築く
など
意識決定において相手を受け入れる姿勢を示す
相手を受け入れる姿勢は、意思決定の場面でも示すことができます。具体的には、以下のようなものが挙げられます。
・メンバーの意見やフィードバックを求める
・相手の話を妨げない
・妨げる人がいたらたしなめる
・メンバーの貢献を認める
など
強情にならない範囲で自信や信念を持つ
マネージャーが強情すぎると、メンバーからは関わりにくくなってしまいます。しかし、適度な自信・信念を持っているマネージャーであれば、魅力的に感じることができるでしょう。具体的には、以下のようなことが挙げられます。
・チーム内での議論をコントロールする
・チーム全員が話を聞けるように明瞭な声で発言する
・チームのサポートに取り組む
・自分の意見に対する異論や反論を唱えることを促す
・弱みを見せる
など
Googleが発見した成功するチームをつくりあげるための5つのポイント
心理的安全性はGoogleによって注目を集めるようになりましたが、Googleでは、チーム作りの際に重要な5つのポイントというものを明らかにしています。どういったものなのか、確認していきましょう。
1. 心理的安全性
1つめは、心理的安全性です。すでに解説しているように、他人からの反応に怯えや羞恥心を感じることなく、自分らしさを発揮していけるような環境が心理的安全性です。この環境下であれば、あらゆる不安を感じなくなるでしょう。
2. 信頼性
2つめは信頼性です。お互いを信頼しあっているチームは、質の高い仕事を遅れることなく仕上げることができるとされています。一方で、信頼し会えてないチームのメンバーは責任転嫁を行います。
3. 構造と明瞭さ
3つめは構造と明確さです。チームとして成功を収めるためには、仕事で求められること、具体的なプロス、メンバーの行動が持つ意味などの構造を理解していることが重要です。また、個人のレベルで設定する目標は、具体性があって、各自が取り組みやすいものとなっているため、やるべきことが明瞭になります。
4. 仕事の意味
4つめは仕事の意味を考えることです。仕事の意味は人それぞれですが、その意味に対して目的意識を持つことができれば、より質の高い仕事をすることができるでしょう。
5. 仕事のインパクト
5つめは仕事のインパクトです。これは、自分の取り組んでいる仕事には意義があるとメンバー自身が思えるかということです。個人の取り組みが組織にどのように貢献しているかを可視化することができれば、仕事に対する意義を感じることができるでしょう。
まとめ
心理的安全性を確保することは、仕事をする上で非常に重要なことです。これが確保されていれば、自信を持って、周囲の仲間を信頼して、やりがいを感じながら仕事に取り組むことができるでしょう。心理的安全性を作るには、自分でできることもありますが、マネージャーなど周囲の人間が行うべきこともあります。