会社の成長を考えるときに重要になるのが全体最適の考え方です。これは、全体、が最適かされた状態であれば組織は生産性や効率性が向上するというものです。この記事では、全体最適の概要からメリット・デメリット、さらには全体最適に対する部分最適に関しても解説しています。
全体最適について
まずは、全体最適がどのようなものなのかその概要を解説します。
全体最適とは
全体最適とは、会社やチーム、あるいはシステムなどの全体が最適化された状態であることを示す経営用語です。簡単に言うと、組織全体が最適な状態にあるということになります。
全体最適は主に、生産性の向上やコストの削減といった経営課題を解決する際に活用されます。
全体最適が注目される理由
全体最適が注目されている背景にあるのが、労働人口の減少に伴う人材不足です。人手が足りない分、効率化を図り、コストを抑えるといったことが必要になります。そういったときに、生産性の向上やコストの削減などの経営課題の解決が図れる全体最適が求められるのです。
全体最適と部分最適との違い
全体最適に対になる考え方に部分最適があります。部分最適はその名の通り、組織全体ではなく、組織内の一部あるいは個人が最適な状態であることを示します。全体最適に関する議論をするとかなりの確率で、部分最適が話題に上がるでしょう。
部分最適の問題点
部分最適によって部分的に生産性や作業効率が向上しても、それが組織全体に好影響を与えるわけではありません。例えば、工場の生産キャパ以上の注文を営業部が取ってきたとしましょう。営業部からしてみれば、たくさんの注文を獲得しているため、最適な状態だと言えますが、工場からしてみればキャパオーバーとなってしまうため、業務に支障が出てしまいます。
このように一部の組織の最適は、他の組織や組織全体においては最適ではない可能性があるというわけです。
部分最適が起こる理由
先ほどの例で挙げたように、部分最適は組織にとって問題になる可能性があります。では、そもそもなぜ部分最適が起こるのでしょうか。
この背景にあると考えられるのが、部署やチームなどのリーダーや責任者が組織の方針や方向性を理解できていないことです。リーダーや責任者は、目の前の仕事やメンバーもことで手一杯であることが多く、その中で会社全体のことも考えるというのは非常に難しいと言えます。そのため、部分最適が起こるのです。
部分最適のデメリット
部分最適は、あくまでも表面的にいい状態が保てているだけであり、根本的には問題をはらんだままです。一見するとメリとのように思えることでも、大きな視点で捉えると組織全体にマイナスの影響を与える可能性があります。
部分最適から脱却する方法
部署やチームのリーダーは現場のことで手一杯であるため、部分最適から抜け出すには経営陣の力を借りることになります。
部分最適が起こる状態は、会社の方向性や方針を現場が理解できていないために起こるため、まずは、会社の方向性や方針を定めて、会社にとっての全体最適がどのようなものなのかを決める必要があります。
また、方向性や方針を具体的な戦略・戦術に落とし込んでいきます。この落とし込みの段階で誤って部分最適に陥る可能性があるので注意しなければいけません。
具体的な戦略・戦術が決まったらそれを組織全体に周知していきます。
一度だけでは周知ができない可能性もあるので、繰り返し行うことが大切です。
全体最適のメリットやデメリット
全体最適には、メリットはもちろんデメリットも存在します。どういったものなのか確認していきましょう。
全体最適のメリット
全体最適のメリットとしてあげられるのが、役割が明確になる点です。全体最適を実現するための方向性を示すことで各組織が何をすればいいのかがはっきりとしてきます。
また、全体最適を意識した人が現場を管理することでミスを減らすこともできます。例えば、営業の過剰な受注に伴う工場のキャパオーバーは、管理する人が工場のキャパを営業に伝えておけば防ぐことができます。
そのほかにも、部分最適では見えてこなかった部署間での業務内容の重複も、全体最適の中では見えてくる可能性があります。重複箇所を正常にすれば生産性の向上が期待できるでしょう。
全体最適を行う際の注意点
一方で、全体最適のデメリットや注意点としてあげられるのが、組織内における対立が生まれる可能性がある点です。
例えば、営業部に契約の獲得件数に応じた給料が支払われているとしましょう。全体最適として正しいのは工場のキャパを超えないように契約件数を抑えるという子です。しかし、営業部の人間からしてみれば、契約を抑えると自身の給料が減ってしまうため、反発が起こることが予想されます。
全体最適を作り上げていく過程で、このような組織内での対立が起こることがある、ということを覚えておきましょう。
また、仮に経営陣が全体最適のための判断を下したとしても、現場では対応しきれないケースもあります。
全体最適を行なった事例
最後に、全体最適を行なった具体的な事例を3つ紹介します。
1. 人事異動が全体最適のきっかけに
1つめは、大胆な人事異動を行なったことで、組織全体に変革をもたらすことができたという事例です。
もともと部分最適が発生していたこの会社では、全体最適を実現するために、現場のキーマンを経営企画部門に異動させました。この移動した人たちは各組織の壁を超えたネットワークを広げていき、会社の上層部も巻き込んで変革へと取り組んだそうです。
組織のキーマンを移動させることは部分最適の観点から見ると、望ましいことではありません。しかし、全体最適の観点から見ると、キーマンが集結したことでスピーディーな変革ができ、部分最適からの脱却を促進することができており、正解だったと言えます。
2. 資生堂の事例
資生堂のある社員は会社が抱えるブランドが多い、という思いを持っていました。これは全体最適の視点です。
しかし、各ブランドの担当者からは「ブランドを廃止するとファンが困る」、「技術が受け継がれなくなると」いった意見が出てきたそうです。これは、ブランドの都合による意見であり、部分最適の視点です。
組織や社員、クライアント、消費者全体のことを考えれば全体最適を優先する方が重要だと言えます。資生堂では結果的に、100以上あったブランドが4年間の間で35まで減少しました。この減少こそ全体最適なのです。
3. HOMESの事例
「HOME’S」」は、株式会社ネクストが運営している不動産サイトです。このサイトにおける最終的な成果はサイトを訪問した人が、掲載されている物件に問い合わせをすることです。
同社では、サイトのアクセス解析を行い、解析結果からPDCAサイクルを回してサイトを最適化するという取り組みを行ってまいりました。しかし、最適化が進んでいくと、これまでの方法では成果があげられなくなってしまったのです。これは、サイトの最適化という部分最適の視点から物事を考えてしまったためだと言えるでしょう。
最終的には、新たなアクセス解析のツールを導入することで、PDCAを回す体制構築に取り組み、全体最適を図るという方針が決まりました。
まとめ
全体最適は、組織の生産性や効率を向上させるためには必要不可欠なものです。現場で働いていると全体を見ることができずに部分最適に陥ることがあるので注意しなければいけません。組織のトップが組織として何が全体最適なのかを明確に示し、周知することで部分最適から抜け出すことができるでしょう。