ワークシェアリングは、オランダやドイツをはじめとするヨーロッパ地域で主流です。
日本でも最近、ワークシェアリングという言葉を聞くようになりましたが、どんな働き方なのでしょうか?
今回は、ワークシェアリングの意味やメリット・デメリット、海外の事例を含めて解説していきます。
ワーク・シェアリングとは
ワークシェアリングとは、日本語で「仕事の分かち合い」という意味があります。
労働者一人当たりの労働時間を短縮し、社会全体の雇用者数を増やすための政策です。
オランダ、ドイツ、フランスなどヨーロッパ圏で導入されており、実際に上昇する失業率を改善させています。
ワーク・シェアリングの意味や定義について
ワークシェアリングの誕生は、労働者の働き過ぎによる過労死、失業による自殺といった社会問題が背景です。
ワークシェアリングの意味・定義は、労働者一人当たりの労働時間を短縮して、仕事を多くの人で分かち合うことです。
ワークシェアリング導入により、労働者が増えるので雇用問題の改善策となります。
社会全体の雇用の安定化、解雇規制緩和に繋がります。
ワークシェアリングとオランダ
1980年代、オランダは深刻な経済の危機にあり、1982年には労働法の改正が行われました。
労働時間調整法の制定により、ワークシェアリングを導入し、多くの企業は雇用を確保するために労働時間短縮に注力しました。
政府は雇用者所得の減少を抑えるために、減税と社会保障の負担削減を実施。
1996年の労働法改正により、「同一労働同一労働条件」が決定し、フルタイムとパートタイムの時給・社会保険などの労働条件の格差を禁じました。
2000年、労働時間制定法により、労働者がフルタイムとパートタイムを自由に変えられる権利、週当たりの労働時間を自分で決定できる権利も制定。
その結果、1983年にはオランダの失業率11.9%から、2001年には2.7%までに低下しました。
雇用安定化の要因はワークシェアリングが鍵となった「オランダ・モデル」と言われるようになりました。
ワークシェアリングは大きく4種類
ワークシェアリングには4つのパターンに分けられます。
1. 雇用維持型(緊急避難型)
急な経営悪化により仕事量が減ってしまい、過剰人員になった場合の緊急的な措置として行う「緊急対応型」です。
人員は削減せずに、雇用を維持することで仕事が急に増えた時にはすぐに対応ができます。
リストラは行わずに雇用を維持するため、従業員との信頼関係が強くなります。
2. 雇用維持型(中高年対策型)
一人当たりの労働時間を時短することで、人件費を削減し、企業全体で雇用を維持する「雇用維持型」です。
3. 雇用創出型
「雇用創出型」は、多様な働き方を実現するために、パートタイムなどの短時間労働を採用すること。
フルタイムではなく、短時間労働者を多く採用することで雇用機会を増やしていきます。
4. 多様就業対応型
「多様就業型」は企業と労働者の双方によるニーズに応える多様な働き方を実現します。
フレックスタイム、副業、在宅ワーク、週休3日以上など、社員が働きやすい環境を提供して、雇用機会を増やします。
ワーク・シェアリングのメリット・デメリット
ワーク・シェアリングにはメリットだけでなくデメリットもありますのでチェックしておきましょう。
ワーク・シェアリングのメリット
ワーク・シェアリング最大のメリットは、一人当たりの労働時間が削減されるので、プライベートの時間は長くなること。
過労によるストレスを防いで、余暇時間を充実すれば、離職率の低下に繋がり、失業対策に役立ちます。
労働者のプライベートの時間が増えると個人消費が高まり、経済効果も期待できます。
ワーク・シェアリングのデメリット
ワーク・シェアリングを導入すると、一人当たりの労働時間が減り、多くの労働者によって仕事をシェアするため、生産性が低下するリスクがあります。
業務の引き継ぎが上手く行かない場合は、無駄な時間が増えて、生産性の低下になるでしょう。
また、労働者の給料の手取り額が減ってしまうため反対派が多くなるかもしれません。
ワークシェアリングは日本に導入可能か?
日本ではまだ導入が少ないワークシェアリングですが、今後は普及されるのでしょうか?
ワークシェアリングの現状と課題
日本はもっとワークシェアリングを導入して、雇用形態多様化を推進すべきとの声が多く聞かれます。
日本でワークシェアリングの浸透が進まない理由は
パートタイマーの扱いが難しいことが挙げられます。
先程例に上げたオランダでは、フルタイマーとパートタイマーの賃金格差は7%程度しかありませんが、
日本は約44%も差が開いています。
さらには、日本は男女賃金格差も大きく、女性パートタイマーは男性正社員の3分の1程度です。
賃金格差を是正しないまま多様化した場合は、低賃金労働者が増加する可能性があります。
ワークシェアリングの日本での導入事例
日本企業では、トヨタ自動車が率先してワークシェアリングを導入しています。
目的は不況による業績悪化を受けて、雇用維持をしながら労働状況の改善を図ることです。
アメリカにある6つの工場に勤める12,000人を対象にワークシェアリングを導入。
労働者一人当たりの労働時間を10%減らし、給料も10%減給、固定費の圧縮を実施しました。
結果的に、不況を乗り切り会社の存続に成功しています。
海外におけるワークシェアリングの事例を紹介
ヨーロッパ圏ではワークシェアリングの成功事例が多くあります。
オランダ
1980年の前半に、オランダでは、オランダ病と呼ばれる大不況に陥りました。
多くの企業はワークシェアリングを導入し、1996年にはフルタイムとパートタイムの労働条件に格差を禁止する同一労働条件を取り決めました。
労働者はフルタイムとパートタイムを自由に決めて
労働時間も自分で決定できるように。
働きやすさの多様化により雇用が安定して、失業率の悪化を改善することに成功しました。
ドイツ
1980年代、ドイツでは、不況による失業者の増加を防ぐために、労働時間の短縮によるワークシェアリングを実施。
一時的な業績悪化による緊急対応型として自動車メーカー、金属産業により導入されました。
2001年には、パートタイム労働および有期労働契約法が定められ、同一労働同一賃金やパートへの差別の禁止を規定しています。
フランス
フランスでは1982年の労働法改正により、法定労働時間は週40時間から39時間へ短縮されましたが、たった1時間の短縮に変化はありませんでした。
雇用情勢の長引く悪化に対して、1998年には労働時間の短縮に関する指導・奨励法(通称オブリ法)が成立され、2000年にはオブリ法・第二次法が成立。
法定労働時間は週35時間と定めて、早期に実施した企業には社会保障負担の軽減措置を実施しました。
政府主導の労働時間の時短を取り入れた雇用創出策に成功しています。
まとめ
ワークシェアリングは不況による失業率を抑えて雇用数を確保するために役立つ対策法です。
目的に合わせて4つのパターンがあるので、上手に取り入れると経済効果に役立つでしょう。