出戻り社員とは?
出戻り社員とは、一度退職した後に企業に戻ってくる出戻り社員のことを言います。他の企業への転職や独立といった経験を経て、再び元の会社に戻ってくるのが出戻り社員です。出戻り社員にはいくつかのケースがあります。転職・独立・出産・育児等のために辞めた社員が企業に戻ってくるケースが一般的。尚、定年後の人材を再雇用した場合は出戻り社員とは呼びませんので、注意が必要です。
転職のために辞めた社員
出戻り社員は、転職や独立のために一度会社を辞めています。しかし、辞めた本人と会社との合意の上、再び会社に就職するのが出戻り社員です。出戻り社員を呼び戻す手段は様々。転職メディアを通じて選考して入社させるやり方、会社から声をかけて面談を経て入社させるやり方等があります。
出産・育児等のために辞めた社員
出産・育児等のために辞めた社員が元の会社に戻ってくるケースも、出戻り社員として考えられます。出産・育児と仕事を両立できないために離職した社員。それが、出産・育児をしながら働ける環境が整備されたので、再び元の会社に就職するという出戻り社員の一例です。
出戻り社員が注目される理由
出戻り社員が注目される理由として、どんなことが考えられるか解説します。
優秀な人材を採用することが難しくなったため
日本の生産年齢人口は減少の一途を辿り、総務省によると8,000万人台だった生産年齢人口は、2013年には8,000万人を割り込みました。更に同省によれば2013年に7,883万人だった生産年齢人口が、2060年には4,418万人まで大きく減少することが予測されています。企業が労働力を確保することが難しくなっているのです。
特に優秀な人材の確保は難しくなります。どこの企業でも優秀な人材を欲しがるのですが、そういった人材は、大手企業やコンサルティング会社、官公庁等に集中しがちです。出戻り社員が注目されるのは、このように優秀な人材を確保しにくい採用事情によります。能力や成果達成力がどれだけあるか分からない人材を労働市場から獲得するより、出戻り社員を採用する方が企業にとってはリスクが小さいと言えるのです。企業が出戻り社員に注目するゆえんです。
労働生産性を高めたいため
出戻り社員はかつて自社に在籍していたことから、即戦力となる人材です。そのため、労働市場から人材を1から採用するより、出戻り社員を採用した方が少ない労働投入量で付加価値を生み出してくれるでしょう。つまり、出戻り社員は労働生産性が高いと見込まれるので、企業は出戻り社員に注目するのです。
出戻り社員の割合
出戻り社員の割合はどのくらいでしょうか。データに基づいて説明します。
出戻り社員を雇用した企業の割合
エン・ジャパン社『人事のミカタ』の調査によると、出戻り社員を採用した企業の割合は72%に達しました。出戻り社員を採用した企業の反応は、「とても良い」19%、「まあまあ良い」64%と80%以上の割合で好印象となっています。
出戻り社員を雇用した理由
エン・ジャパン社『人事のミカタ』の調査によると出戻り社員を採用したきっかけは「本人からの直接応募」が多く、59%に達しています。「即戦力を求めていたから」「人となりがわかっており安心だから」という理由で出戻り社員を採用した企業が多かったようです。
出戻り社員を採用するメリット
出戻り社員を採用するとどんなメリットがあるか説明していきます。
他社で得た経験を活かしてもらえる
一度、会社を辞めて転職した出戻り社員を再雇用した場合、他社で得た経験を活かしてもらえることが大きなメリットです。職種や業界が同じ場合は、自社に在籍しているだけでは培えない経験や知見を得ていることもあるでしょう。経験や知見はお金では買えませんから、出戻り社員を採用しただけで組織力が活性化されることに繋がります。
人物像がよく分かる
出戻り社員は自社に在籍していた社員ですから、人物像がよく分かります。従って採用のミスマッチが起こりにくいです。
採用コストが低くなる
出戻り社員なら採用コストが低くなることもメリットの1つ。転職メディアや転職エージェントを使用すれば広告費用や成功報酬等がかかります。しかし出戻り社員の採用は、本人からの直接応募・上司による声掛けによる採用が多くなりますので、採用コストを抑えて人材を雇用できるメリットがあるのです。
会社のことをよく分かっている
出戻り社員は、会社の良い部分も悪い部分も含めて、会社のことをよく分かっています。組織風土や文化について説明しなくても分かってもらえるので、出戻り社員は職場に馴染みやすいです。
即戦力になる
出戻り社員は即戦力になります。自社に在籍し、会社のことをよく分かり、他社で経験・知見を得ているので、入社後直ぐに戦力となる訳です。エン・ジャパン社の調査から、出戻り社員を採用した企業の反応が80%の高い割合で好印象であることから即戦力として活躍していることが推測されます。
エンゲージメントが高くなりやすい
出戻り社員は、転職・独立・育児等で会社を辞めた社員ですから、再び戻ってくるだけの魅力が自社にあるということ。会社への帰属意識が高まり、出戻り社員のエンゲージメントが高くなりやすくなります。出戻り社員のエンゲージメントが向上すれば、既存社員の定着率にも影響するでしょう。
出戻り社員を採用するデメリット
出戻り社員を採用することにもデメリットがありますので、説明していきます。
組織内に不公平感を生む
出戻り社員が会社に戻ってきて、退職前よりも役職に就いたり昇格したりすると組織内に不公平感を生むことになりかねません。会社としては出戻り社員に活躍してもらいたいので好待遇で迎えたいと思っても、既存社員とのバランスを考えるとできず、リスクを考えて出戻り社員を採用できないことになるかもしれません。
組織内に不公平感を生まないためには、年功序列的な賃金制度ではなく、成果や成果達成のためのプロセス、または顕在化された能力やジョブによって評価する賃金制度に改める等の抜本的な制度改定が必要になることもあります。制度改定を行うことで、出戻り社員のように、能力や成果を生み出すことができるのであれば、既存社員も昇進・昇格できる機会が生まれることが分かり、不満を解消することに繋がるでしょう。
人間関係の悪化を招く可能性がある
出戻り社員が退職している期間、既に人間関係が変容している可能性があります。そこに出戻り社員が入ってくると人間関係がうまくいかなくなることも。また、組織内に不公平感を生みやすいリスクがありえますから、出戻り社員を採用すると人間関係の悪化を招く可能性があります。
出戻り社員を迎え入れる人事制度や受け入れ態勢が未整備
出戻り社員を採用しても、人事制度や受け入れ態勢が未整備だと出戻り社員をうまく活用できません。出戻り社員は他社で経験を積んでいますから、在籍していた時代よりも好待遇で迎え入れた方が人材の能力や成果達成力に見合っている場合があります。しかし、制度が整っていないと在籍時代と同じような待遇を出戻り社員に提示してしまい、結果的に採用できなかったり採用できても再び離職されたりします。そうなれば、出戻り社員に期待される即戦力を活用できずに機会を失うことになるでしょう。
出戻り社員を採用する時の注意点
最後に、出戻り社員を採用する時の注意点を説明します。
期待した成果を上げてくれるとは限らない
出戻り社員を採用するメリットを説明した際、即戦力となることを述べました。しかし、必ずしも出戻り社員が期待した成果を上げてくれるとは限らないことは、注意点として想定しておく必要があります。他社で経験したことが自社にとってプラスになるとも限らないし、転職・独立後に成果達成力が落ちている可能性も考えられる訳です。従って、いくら出戻り社員の人物像がよく分かるといっても、自社を辞めた後、どういう人材になっているかを把握しておくべきです。そのために選考は慎重に行う必要があるでしょう。
既存の社員の離職を促しかねない
出戻り社員を採用することにより、既存の社員の離職を促しかねないことも注意点の1つ。出戻り社員が採用されると、「辞めても戻ってくる術がある」ことを既存社員に伝えるメッセージとなります。従って、既存社員の離職を促してしまうことになりかねないのです。
まとめ
出戻り社員を採用することで、即戦力となったりエンゲージメントが向上したりと、メリットがあります。一方で、人間関係の悪化や不公平感等のデメリットもあります。メリット・デメリットをしっかりと認識し、既存社員とのバランスも踏まえた上で、出戻り社員の採用を実行する必要があるでしょう。