配置転換とは?
配置転換とは、企業内で社員の職務内容・勤務地等を変更することです。
配置転換の意味
配置転換は企業内で職務内容・勤務地を変更することですが、社外に出向させることも含めて配置転換と言います。配置転換は、社員の人材開発、組織の活性化のための人事異動等、様々な意味を持ちます。
社内の人事異動
配置転換は社内の人事異動が基本です。技術部から人事部への職務内容変更、支社の技術部から本社の技術部への勤務地変更等があります。
出向、転籍
配置転換にはグループ会社への出向、転籍等もあります。これは社外の人事異動です。出向の場合は元の会社の社員のままグループ会社で働くこと。あくまでも籍は元の会社にあるのです。出向は会社に復職することができますが、転籍は元の会社を退職してグループ会社の社員になるという違いがあります。ただ、転籍をいきなり行うケースは多くなく、出向させて何年か経験させることで転籍させます。
基本的に正社員は配置転換を拒否できない
正社員は長期雇用を前提としており、勤務地や職務内容を限定せずに採用されています。そのため、基本的に正社員は配置転換を拒否できません。
人材開発に活用できる配置転換
配置転換は単なる人事異動ではありません。ジェネラリストに育てたい日本企業だからこそ、人材開発に活かすことができます。
期待する人材に育てるための配置転換
会社には目標があります。会社はその目標を達成すべく社員を育成します。配置転換は人材開発に繋がり、会社目標の達成のための手段となります。それは各部署にとっても同様で、部署の目標を達成するために配置転換を活用しています。
例えば、本社経理部の社員だったAさんが営業部に異動してきたことで、数字の読める営業パーソンへと成長するとしましょう。営業部は企業の財務体質をしっかり把握した上で営業アプローチができる営業パーソンを獲得したことになります。また、Aさんにとっても自らの成長に繋がります。
目的なき配置転換では人材開発に繋がらない
配置転換には人材開発に活用できる効果がありますが、配置転換を実施したことをもって、即座に人材開発に繋がる訳ではありません。経営者や人事側が配置転換を通じて人材を育てたいという目的が必要。例えば、X事業所で欠員が生じたとします。そこにY事業所から人を異動させて補充する。これも配置転換ですが、ここに人を育てたいという経営者や人事の意思は読み取れません。配置転換を通じて人材開発するという目的が必要となります。
配置転換がパワハラとなるケース
配置転換は人材開発に活用できます。また、正社員は基本的に配置転換を拒否できません。しかし、配置転換も場合によっては社員にパワーハラスメントだと感じらせることがあります。事例を元に説明します。
パワハラの基準
パワーハラスメント(パワハラ)とは、厚生労働省の定義によると、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為のことです。ちなみにパワハラの基準には、身体的侵害・精神的侵害・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害の6類型に分けられると言われます。配置転換も、やりようによっては、会社の人事権の優位性に基づいて社員にパワハラと感じさせることになります。
妊娠した女性社員を配置転換させる
妊娠した女性社員を既存の職務から外し、本人の希望がないのに軽易な業務に配置転換させることは、相手にパワハラと感じさせることになりかねません。労働基準法では、女性社員から希望がある場合にのみ、軽易な業務に配置転換させることができると規定しています。一方的に軽易な業務に配置転換することは違法です。
配置転換を拒否した社員への執拗な嫌がらせ
正社員は基本的には配置転換を拒否できません。だからといって、配置転換を拒否したことをもって、執拗な嫌がらせをすることはパワハラに繋がります。配置転換拒否のために追い出し部屋に閉じ込めたり、人事評価で低い評価を付けたりすることは、社員に嫌がらせと感じさせます。
社員の事情を無視した配置転換の命令
社員の事情を無視した配置転換の命令も、社員にパワハラと感じさせることになりがちです。地方在住の社員に対して、子どもが病気で転院が困難であるにもかかわらず、事情を無視して東京本社に異動させるようなケースがこれに該当します。
配置転換が無効になるケース
配置転換がパワハラと感じさせるケースを説明してきました。次は、配置転換が無効になるケースについて解説します。
配置転換が無効となる要件とは
配置転換が無効となる時は権利の濫用と捉えられる場合です。配置転換が無効となる要件には、いくつかの要件があります。
業務上必要ではない
業務上必要ではない場合に、配置転換が無効とされます。例えば、リストラが行われている事業所や閉鎖が決定している事業所への配置転換です。業務上の必要が明確でないため、無効となります。
配置転換の動機が不当である
配置転換の動機が不当である場合にも、配置転換が無効とされます。例えば、内部通報を行った社員に対して、閑職に追いやるような配置転換は動機が不当なので無効となります。
人員の選択が合理的でない
配置転換の有効性には人員の選択の合理性も必要な要件として求められます。明らかに配置転換後の仕事が社員にとって難易度が高過ぎたり、あるいは人員が充実していて配置転換の必要がなかったりする場合、人員の選択が合理的でないとして無効となり得ます。
そもそも就業規則に明記がない
配置転換については就業規則に明記する必要があります。しかし、就業規則に明記がないと配置転換が無効であり、社員も配置転換を拒否することができるのです。会社は、配置転換を行う前に、就業規則を確認しておく必要があります。
次は、無効になるケース事例を解説します。
無効になるケース事例【採用後すぐに別の職種に異動になった】
企業の中途採用に応募し、ITエンジニア職として採用された山口さん。前職も8年間の経験があるので、エンジニアとして専門性を活かしたいと思っていました。しかし、採用後、人材が不足しているからという理由で直ぐに営業部に異動となってしまいました。正社員は配置転換を拒否できないとはいえ、採用後直ぐに、専門性とは全く無関係の部署に異動させるのは会社の配置転換の権利を濫用したものとして無効です。
無効になるケース事例【退職勧奨を意図した配置転換】
それなりに努力を重ねているものの、営業成績があがらない山川さん。会社は山川さんに辞めてもらおうと、退職勧奨を意図して経理部に配置転換。このように退職勧奨を意図した配置転換は、会社の配置転換の権利を濫用したものとして無効です。
まとめ
配置転換は、ジェネラリストを育てる人材開発をしている日本企業にとっては必要な人事異動です。多くの職場や仕事を経験することで、企業が求めるビジネスパーソンになります。一方で、退職勧奨はやり方を誤ると会社の権利の濫用に繋がる恐れがあります。社員にパワハラと感じさせる場合もあります。配置転換の運用ルールについて社内で押さえておき、適切に運用しましょう。