会社を設立する際には、定款(ていかん)の作成が必要です。定款を正しく作成しなければ、認証の手続きに通らず、時間や金銭的なコストが大きく増えるでしょう。会社を設立する際には、事前に定款の意味や必要性、記載事項などを確認しておくことが大切です。ここでは、定款の記載事項や事業目的の書き方、内容の変更について詳しく解説します。
会社設立に必要な定款とは?
まずは、会社設立に必要な定款の役割や作成する理由などから詳しくみていきましょう。
定款は会社の憲法である
定款は、いわば会社の憲法のことです。会社運営における基本的な規則を定めます。会社の名称や事業内容、本店の所在地から株式に関することまで、さまざま項目を規定する必要があります。
設立登記と共に法務局に提出する
定款は、設立登記と共に法務局へ提出し、認証の手続きを受けなければなりません。認証の手続きとは、定款が作成され、その内容に問題がないことを公証人に証明してもらうことです。定款は会社における憲法のため、設立登記後は定款の内容に沿った運営を求められます。
定款に記載する4つの事項
それでは、定款に記載する4つの必須事項を詳しくみていきましょう。
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款への記載が義務づけられている次の事項のことです。
・商号
・目的
・本店の所在地
・設立時に出資する財産の価額もしくはその最低額
・発起人の氏名もしくは名称と住所
・発行可能株式総数
目的の重要性
絶対的記載事項のうち、目的を記載する必要性について疑問を感じた方は多いのではないでしょうか。「事業の目的」を記載することは、取引の安定性を確保することに繋がります。事業の目的が定められていない会社は、実態が不透明なことを理由に取引を断られる恐れがあるのです。
相対的記載事項
相対的記載事項とは、定款への記載は任意ですが、記載しなければ効力が認められない事項のことです。例えば、株券発行の定めがあります。これは、株券を発行することを表明する事項であり、これが記載されていない場合は株券を発行する義務がありません。
そのほか、相対的記載事項には、次のようなものがあります。
・株主名簿管理人
・相続人等に対する売渡請求
・単元株式数
・取締役、会計参与、監査役、執行役及び会計監査人の責任免除
・取締役会設置会社における中間配当の定め
任意的記載事項
任意的記載事項とは、定款に掲載する必要はなく、他の文書で明確にすれば効力が認められる事項です。例えば、株主総会の招集時期や取締役の人数などがあります。定款に記載しておくことで、決定事項を明確にできます。
定款の事業目的の書き方のポイント
定款の中でも書き方に悩むは事業目的ではないでしょうか。どのような事業目的を書けばいいのか詳しくみていきましょう。
事業主のビジョンを事業目的に落とし込むことが大切
事業目的には、事業主のビジョンを落とし込む必要があります。そのために、まずはビジョンを明確化することが大切です。ビジョンが不透明なまま事業目的を定めると、途中で目的が頻繁に変わる恐れがあります。
事業のイメージを整理する
どのような事業を行いたいのかイメージしましょう。イメージがまとまらないと、目的を定められません。事業目的を不必要に挙げることになり、まとまりが悪くなるでしょう。
事業目的を具体的に記載する
事業目的は具体的かつ明確に記載しましょう。雑貨の販売などではなく、生活雑貨、インテリア雑貨など具体的に記載することが大切です。
事業目的を8~10に絞る
事業目的の数は、どれだけ多くても8~10個に絞りましょう。それ以上の事業目的を掲げると、最も重要な目的がボヤけてしまいます。また、取引先から見ても、手広く事業を展開している企業は怪しく見えるため、おすすめできません。
設立したばかりの企業が手広く事業を展開しても、全ての事業で大きな利益は得られないでしょう。取引先にとって、どの事業に力を入れているのか、十分に利益を得ているのかどうか判断できないのです。
将来に展開する予定の事業を記載しておく
将来的に展開する予定の事業も記載しておきましょう。定款に記載されていない新事業を展開するときには、定款の変更が必要です。手続きにコストがかかるうえに、定款の変更を忘れていた場合に取引先から不信感を抱かれる可能性があります。
定款の認証について
それでは、定款の認証に必要な書類や手続きについて詳しくみていきましょう。
定款認証に必要な書類
定款認証に必要な書類は、定款と発起人の印鑑証明書、収入印紙の3点です。定款は3部用意して、そのうち1部が公証役場用の控えです。控えに収入印紙を貼り、原本として課税されます。残りの2部の定款は、発起人が保管する原本とそのコピーの扱いです。
収入印紙の金額は一律で4万円ですが、電子定款には収入印紙が必要ありません。
定款認証方法
定款の認証は、本店所在地を管轄する公証役場で行います。書面もしくは電子定款で手続きをしましょう。電子定款認証を行う場合は、発起人全員が電子証明書を取得し、必要なソフトをやシステムをインストールする必要があります。また、代理人が電子定款認証を行う場合は、代理人による電子署名を行います。その際には、印鑑登録証明書が必要です。
定款変更
定款の内容は、手続きをすれば変更が可能です。定款の変更について詳しくみていきましょう。
原始定款は変更できない
定款は変更できますが、認証に用いた原始定款そのものを書き換えることはできません。定款の変更とは、必要な手続きを行い、変更の内容を議事録に残すことを指します。そのため、定款を認証するときは、内容に問題がないか十分に確認する必要があります。
株主総会を開催する
定款の変更には、株主総会を開く必要があります。議決権の過半数を持つ株主が出席し、3分の2以上の賛成がなければ定款は変更できません。また、株主総会では定款の変更に関する議事録を作成する必要があります。具体的な変更内容を明記し、誰が確認しても齟齬が起こらない形で記録に残しましょう。
定款で変更できる事項は、事業目的の他に商号や本店の所在地、役員の人数、役員の任期、機関構成、発行可能株式総数などです。
登記申請を行い、株主総会議事録と共に保管する
株主総会の議事録を管轄の法務局へ持っていき、定款の変更手続きをしましょう。また、株主総会議事録は原始定款とともに保管が必要です。定款変更の登記申請が必要な事項は、商号や事業目的、本店の所在地、株主関連、公告方法、取締役会の設置や廃止、監査役の設置や廃止などです。
登記が不要な事項もあるため、定款変更の際には法務局に確認しておきましょう。例えば、決算月の変更は定期変更したうえで、管轄の税務署に異動届出書を提出するだけで済みます。また、役員や資本金の変更は、定期変更は必要ありませんが登記が必要です。
まとめ
定款は、会社の憲法とも呼ばれており、登記の際に内容を熟考して記載する必要があります。登記変更は可能ですが、原始定款は変更できません。株主総会を開催して議事録を残し、必要に応じて法務局へ登記申請をしましょう。定款においては、事業目的の決定に時間的なコストがかかります。必要に応じて行政書士やコンサルタントに相談することをおすすめします。