持株会社(ホールディングス)とは?
持株会社(ホールディングス)とは、1997年に独占禁止法が改正されたことによって国内で解禁された会社形態をいいます。他の会社の株を保有することで、経営と事業を分離し、持株会社が会社の事業活動を支配するのが持株会社を設立する目的です。そのため、基本的に持株会社は事業活動を行いません。
例えば、Xホールディングスが持株会社として、A・B・Cの3つの会社の株を保有します。Xホールディングスは事業活動を行いませんが、3つの会社がそれぞれ事業活動を行うというイメージです。
持株会社の種類
持株会社には以下の3つの種類があります。
2.事業持株会社
3.金融持株会社
純粋持株会社は、持株会社自体は事業活動を行わず、他の会社の事業活動を支配することを目的とします。単に持株会社といった時は純粋持株会社を指します。
事業持株会社は、持株会社自体も事業活動を行い、他者の株を保有し事業活動を支配することを目的とします。
金融持株会社は、保有する会社の多くが金融機関である場合をいいます。金融持株会社は1998年に設立が解禁されました。金融持株会社は純粋持株会社と同様に、持株会社自体は事業活動を行いません。
金融機関に持株会社が増えた背景
1998年の解禁以降、金融持株会社が増えました。金融持株会社が増えた背景として、同じ金融機関であることから相乗効果を狙えること、機動的な経営戦略を図れることなどが挙げられます。
持株会社が解禁された理由
持株会社は1997年まで解禁されませんでした。その背景として、戦後の財閥が復活しないようにするためでした。それが1997年に解禁されたのは、日本企業が国際競争力を高める必要があったからです。
持株会社を設立してグループ傘下に事業会社を保有することで、企業再編がやりやすくなります。事業部門を独立させたり、会社同士を統合させたりすることも、持株会社ならやりやすくなります。スピード感をもってグループとしての意思決定を行い、国際競争力を高めるためには、企業再編しやすい持株会社が適しています。
持ち株会社を設立する方法
持株会社を設立するには3つの方法があります。
2.株式交換方式
3.抜殻方式
株式移転方式は、持株会社に子会社の株を全て移転する方法です。新たに設立する持株会社に、発行済み株式を移転することで持株会社体制が完成します。既存の会社はこれまで通りの事業活動を続けることができるため、スムーズに持株会社を設立することができるでしょう。
株式交換方式は、親会社と子会社の株式を交換する方法です。新規に持株会社を設立するのではなく、既に親会社が法人である時に使える設立方法といえます。
抜殻方式は、親会社の全ての事業を子会社に移してから持株会社とする方法です。事業を運営してきた親会社が純粋持株会社となる時に使われる設立方法です。
持株会社のメリット
持株会社を設立するメリットを解説します。
事業会社の責任や権限が明確になる
持株会社を設立すると、持株会社は事業を運営せず、グループの子会社が事業活動を行うようになります。したがって、個々の事業会社の責任や権限が明確になります。
迅速にグループの意思決定ができる
持株会社は事業活動を行いません。そのため、事業活動にあてる部分を子会社に移譲することができるので、グループ全体を見通して、経営戦略に必要な意思決定を迅速に行うことができるのです。
事業ごとに人材を育成できる
持株会社体制にすると、事業ごとに別々の子会社を作ることができます。テレビやカメラなどのエレクトロニクス事業、医療事業、金融事業などといった多様な事業を展開する持株会社を設立した場合、求められる人材像は違いますよね。持株会社なら、子会社それぞれに人材育成制度を作れるので、事業ごとに求められる人材を育成できるのです。
グループ会社ごとに労働条件を設定できる
事業ごとに別々の子会社を作っている持株会社体制では、労働条件もグループ会社ごとに設定することが可能です。子会社の経営方針や事業に合わせて、A社では変形労働時間制、B社ではフレックスタイム制、C社ではテレワークなどを導入することができます。
リスクが分散される
持株会社体制では経営と事業を分離するため、リスクが分散されるメリットがあります。事業が一体となっていると、最悪の場合、どこかの子会社で不正が生じても、早期にクライシスマネジメントを講じておけば、他のグループ会社への影響を抑えることができます。
企業の買収(M&A)がスムーズに行える
持株会社体制では、各事業の採算が見えるようになります。そのため、不採算事業を他社に売却したり、既存事業と相性の良い事業を買収しやすくなったり、あるいは新しい市場に新規参入しやすくなったりと、 M&Aがスムーズに行えるようになるのです。
買収を防衛できる
持株会社体制では株式が2重構造となっているため、事業活動を行っている子会社の株式は持株会社が全て持っています。したがって、持株会社を買収しない限り事業会社を買収することはできないので、敵対的買収を防ぐことができます。つまり、持株会社体制にすれば買収を防衛できるのです。
持株会社のデメリット
持株会社のデメリットを解説します。
持株会社とグループ企業との連携は難しい
持株会社体制では、子会社がそれぞれ独立して事業活動を行っています。それぞれの独立性が高いのはメリットである反面、持株会社の統制が効きにくくなり、持株会社と子会社間の連携が難しくなることがデメリットといえます。
持株会社がきちんと統制しないと、子会社との関係が悪くなったり、持株会社の経営戦略に見合った事業活動をしてくれなかったりします。したがって、持株会社はしっかりとリーダーシップを発揮し、子会社をコントロールしていく必要があるのです。
ただ、統制が効きにくくなるとはいえ、あまり厳格に子会社をコントロールしてしまうと独立性がなくなってしまいます。統制と独立性のバランスを保ちながら持株会社体制を維持していくように努めたいところです。
親会社へ情報を隠蔽するリスク
持株会社が子会社を統制しにくくなることと関連して、持株会社に情報を隠蔽するリスクがあります。持株会社がリーダーシップを発揮できなければ、子会社は自身の利益に固執するようになります。そうなれば、必要な情報を持株会社に伝えなくなることも考えられますね。
必要な情報が企業倫理に関するものだったり、法律に触れるものだったりした場合は、将来の事業活動が危うくなり、持株会社も管理責任を問われてしまいます。そうならないためにも、持株会社と子会社とは、不必要な上下関係を強調することなく、密なコミュニケーションを取るようにします。
人件費や会社維持のコストが増える
持株会社体制では全ての子会社が独立して事業を行っています。そのため、子会社にはバックオフィス部門の人件費がそれぞれかかるようになります。グループ一体となるバックオフィス部門を設立し、人件費を削減させることができないのです。また、会社を維持するための固定費も会社ごとに必要となります。そのため、持株会社体制ではグループ全体として人件費、固定費などを抑制する仕組みが必要です。
まとめ
持株会社は、1997年に独占禁止法が改正されることで生まれた会社形態です。持株会社は経営に専念し、子会社は事業活動に専念していくため、子会社は独立しているので権限と責任が明確になります。また、持株会社はスピード感をもって意思決定することもできます。一方で子会社に独立性があることで生じるデメリットもありました。