「コーポレート」とは実際に何を指しているのか、またコーポレートの複合語についてはよくわからない場面に出くわすことがあると思います。
今回は、コーポレートを含むいくつかの言葉について、それぞれ詳しく解説していきます。
コーポレートとは
コーポレートとは「企業の」「団体の」「法人の」「共同の」という意味の形容詞です。
そのため「コーポレートサイト」「コーポレートブランド」「コーポレートカラー」など、別の言葉とくっついて使われています。ちなみに、「企業」を表す名詞はコーポレーションです。
コーポレートとカンパニーの違い
コーポレートとカンパニー、どちらも「会社・企業」を表す言葉ですが、違いは規模やニュアンスにあります。
コーポレートは子会社を持つような大企業にしか使われないのに対して、カンパニーは仲間という意味からイメージできるようなフランクなニュアンスで、中小企業を表しています。
コーポレート部門とは?
コーポレート部門は、企業の事務系部門をまとめて指している言葉です。
人事・総務・経理・秘書・経営企画・広報・法務などを指しています。営業のビジネス部門、開発のクリエイティブ部門と対比するなら、会社を回していくのがコーポレート部門といえるでしょう。
コーポレートアイデンティティとは
アイデンティティとは自己認識・同一性・主体性を表す言葉です。個人のアイデンティティについて説明すると、変化する環境や社会の中で様々な役を演じていると見失ってしまうこともある本当の自分、変わらない自分、その自分の価値観や考え方のことを指しています。
これに対して、コーポレートアイデンティティ(CI)は、企業の独自性を指し、具体的には企業独自の価値観や理念のことを言います。
その価値観や理念をどのように伝えるかについてはいろんな方法があるように、CIを構成するものにも社名・ブランド名・ロゴマーク・キャッチコピー・スローガン・コンセプトメッセージ・コーポレートステートメント・コーポレートフィロソフィー(企業哲学)・ユニフォーム・ブランドカラーなど様々な要素があります。
コーポレートアイデンティティの意味
このように、企業の価値観・理念、企業の独自性をコーポレートアイデンティティ(CI)と言いますが、CIはシンボルマークなどの使用を通して、企業を世間一般に浸透させる企業戦略を意味することもあります。
社会から企業がどう見られているか、という部分と、企業がどうありたいかという部分が近ければ近いほどCIが確立していると言えるのです。
ロゴマークを見るだけで企業を想起する、企業が伝えたいイメージも伝わっているなら、十分に確立されていると言えるでしょう。
コーポレートアイデンティティの重要性
情報が多く、拡散スピードの速い現代では、企業が消費者に届けたいメッセージも届きにくいというのが現状です。企業の姿勢や考え方をロゴやイメージカラーだけで素早く伝えられれば大きな特権となります。
また、コーポレートアイデンティティの確立は、マーケティング戦略であるブランディングにも通じます。企業イメージの向上や競合との差別化にもなるため、CIは重要とされているのです。
コーポレートアイデンティティやブランドにまつわる事例
では次に、コーポレートアイデンティティ確立の成功事例について紹介いたします。
NIKE
スポーツ界のトップブランドNIKEのロゴマークは、勝利の女神「ニケ」の彫像がモデルで、社名もニケを語源としています。1971年に制定されたこのマークはスポーツブランドにふさわしいスピード感・躍動感を表現しており、「JUST DO IT」というタグラインもスポーツ文化を牽引する役割を果たすなど、コーポレートアイデンティティの優良事例とされています。
KIRIN
麒麟麦酒株式会社は、ビール市場の成熟を機に「ビールを核として生活の質的向上(豊かでゆとりのある生活)」を目指しながらも、事業多角化に取り組み始めました。その後医薬分野での成功をきっかけとして、1983年従来の「品質重視」「堅実経営」に「価値の創造」を加えたコーポレートアイデンティティを導入。多角化・国際化を達成し、社会に貢献し続ける会社として成功し続けています。
伊藤忠商事
総合商社の理念とは最終的に何かという議論の中で、経済的・社会的・個人的利益の中でも量的利益「プロフィット」ではなく質的利益「ベネフィット」であるという点をコーポレートアイデンティティとして掲げた例です。個人の質的で精神的な意味を含むベネフィットの提供という考えは1992年当時新しく、企業価値の向上に大いに役立ちました。
NIVEA
スキンケアクリームの代表企業であるNIVEAの社名は「nix(雪)」「nivis(雪の)」というラテン語が由来です。ブランドカラーは、信頼感・親しみやすさを表現するミッドナイトブルーに雪をイメージさせるホワイトで、肌同士が触れ合うような深い愛情を守り続けることをブランドアイデンティティとしています。幼少期にお母さんに塗ってもらったという体験・思い出から想起されるブランドとしてコーポレートアイデンティティの成功事例にふさわしいものです。
RedBull
エナジードリンクを打ち出したオーストリアのレッドブルは、スタイリッシュなビジュアルと、「レッドブル、翼をさずける。」というキャッチコピーで有名です。疲れたから飲む、マイナス要素を補うという従来の疲労回復ドリンクとは違い、プラス要素のみに目を付けた点でまったく新しいものというイメージ・ポジションを鮮明に植え付けました。単なる飲料ではなく、「エキサイティングな体験」「スリルや冒険そのもの」として、その製品特徴にも触れない姿勢は、CI事例としてもマーケティング手法としても参考になります。
コーポレートガバナンスとは
コーポレートガバナンスとは、直訳すると「企業の統治」という意味になり、企業をどのように支配・管理するかを扱っています。
「企業内の不正を防ぐ仕組み」や、「企業が効率的に経営していくための仕組み」のことを言います。具体的には、監査役や社外取締役、委員会などの導入、社内行動規範や倫理規定の作成・周知、違法行為防止のための仕組みづくり、内部通報の窓口設置などです。
株式会社では、株主のための経営ができているかを監視する仕組みがコーポレートガバナンスです。
コーポレートガバナンスと内部統制の違い
内部統制はコーポレートガバナンスと似ていますが、対象先が違います。内部統制が会社資産や従業者といった「社内の」仕組みであるのに対して、コーポレートガバナンスは株主や債権者といったステークホルダーを対象としています。
内部統制は「業務の有効性と効率性」「財務報告の信頼性」「法令遵守」「資産保全」を達成するために行われますが、透明性の高い情報開示や適切な財務状況の報告など、コーポレートガバナンスの目的と重なる部分もあります。
コーポレートガバナンス報告書とは
コーポレートガバナンス報告書は証券取引所の定める適時開示制度に基づき、上場企業が提出すべき報告書のことです。
投資者がコーポレートガバナンス体制に関する情報を独自で比較・判断することが難しいという背景から、義務付けられるようになりました。
コーポレートガバナンスコードとは
コーポレートガバナンスコードは、2015年6月に金融庁・東京証券取引所が中心となって策定したもので、コーポレートガバナンスを実現するためのガイドラインや基準となっています。
順守の義務はないガイドラインで、ステークホルダーが企業を統治・監視するための厳しいルールがまとめられていますが、8割以上の企業が原則の90%以上を開示(東証の調査結果より)するなど成果を上げています。
コーポレートガバナンスコードは何のためのもの?
このように、コーポレートガバナンスコードは海外ほど浸透していないコーポレートガバナンスについて、企業ごとに制定していくための基準となるために非常に役立っています。
また、グローバル化していきたい企業にとって、企業内部業務及び財務状況の可視化は企業価値の向上につながる重要事項。
そのためのコーポレートガバナンスの強化も真っ先に取り組むべきタスクです。海外企業並みの競争力をつけるための一助ともなります。
コーポレートファイナンスとは
コーポレートファイナンスは直訳すると「企業財務」となり、企業の資金調達や事業投資活動のことを指しています。
コーポレートファイナンスの目的
コーポレートファイナンスの目的は、「企業価値を最大化」することです。そのためにいかに効率的に資金を調達し、どのような投資に利用すれば最も利益が得られるかを分析したうえで投資を実行するのがコーポレートファイナンスです。
企業価値とは
そして、コーポレートファイナンスの目的に出てきた「企業価値」とは金融の視点から見た企業の魅力のことを言います。株価算定・M&A・リストラ時に基準となる企業の全体的価値を指しますが、企業側や買収側によって価値基準が異なると公正さに欠けるため、複数のアプローチを併用して算出するのが一般的とされています。アプローチにはコストアプローチ・インカムアプローチ(DCF法)・マーケットアプローチなどがあります。
コーポレートファイナンスにまつわる本
最後にコーポレーションファイナンスに関する初心者向けの本をいくつか紹介します。
- コーポレート・ファイナンス第10版 リチャード・A・ブリーリー他著
- コーポレート・ファイナンス 岩村充著
- コーポレートファイナンス実践講座 堀内勉著
- MBAバリュエーション 森生明著
- ざっくり分かるファイナンス~経営センスを磨くための財務~ 石野雄一著
まとめ
コーポレートに関する言葉の解説からコーポレートアイデンティティの成功事例までを紹介しました。
特にコーポレートアイデンティティの確立やコーポレートガバナンスの制定は企業価値の向上にとっても重要視したい点です。
成功事例を参考にしながら、現状で取り入れられそうなポイントを精査して企業価値を生み出していきましょう。