ランニングコストとは会社経営や機材・システムなどを維持するために必要な費用のこと。維持していく間にずっとかかる費用なので、長期的に見ればできる限り費用を抑えたいところです。この記事では、ランニングコストとイニシャルコストとの違い、削減方法について解説します。
ランニングコストとは?
ランニングコストとは、会社を経営し続ける上で必要な費用です。また、ランニングコストは、機材やシステムなどを運用し続けるのに必要な維持費と言うことができます。
稼働後にかかる費用
ランニングコストは、会社を設立した後、あるいは機材・システムなどが稼働した後にかかる費用です。例えば、会社で新たに営業車を購入したとしましょう。営業車を維持するにはガソリン代や修理代、車検代、自動車税、損害保険料などの維持費がかかりますよね。このように何かを導入し、稼働後にかかる維持費をランニングコストと言うのです。
ランニングコストの類語
ランニングコストの類語には、「維持費」「管理費」などが挙げられます。
例えばシステム導入後のランニングコストとして、ソフトウェア保守費用・ハードウェア保守費用・通信費などがかかります。この場合のランニングコストは、維持費・管理費と言い換えることが可能です。
ランニングコストとイニシャルコストの違い
ランニングコストと比較して考えるべきなのがイニシャルコストです。イニシャルコストは初期費用と言います。初期費用なので、導入したときに限って発生する費用です。
つまり費用を考えるときは、稼働後にかかるランニングコストがどの程度かかるかを考える必要があるのです。極端な例ですが、イニシャルコストが1円でも毎月のランニングコストが10万円かかるとすると、長期的にはコストがかかり過ぎるというわけです。
システムの例で言えば、システムのイニシャルコストとランニングコストを比べると、長期的にランニングコストの方が多くかかると言われます。
一般には2:8の割合でランニングコストの費用が高くつきます。導入後のコストメリットはどのくらいか、予めシミュレーションしておく必要があります。
ランニングコストの事例
ランニングコストには様々な例がありますが、代表的な事例を3つ紹介します。イニシャルコストとの比較をしながら解説します。
プリンターのインク代
ランニングコストの分かりやすい例としてプリンターのインク代があります。プリンターは、安いものであれば数千円で購入できる商品もありますよね。購入費用がイニシャルコストになります。
プリンターのインクは消耗品で、使用していればいつかはなくなってしまいます。インク代の使用頻度と合わせてプリンターを購入する必要があります。
プリンターには、インクが長持ちするものとすぐになくなるものがあります。すぐになくなるインクを使うプリンターは、イニシャルコストが安いことがあります。
インクの使用頻度が多いのであれば、安いプリンターを買っても長期的にはコストがかさむ結果に。イニシャルコストが高くかかったとしても、使用頻度に合わせてランニングコストを抑えることを検討します。
人件費
人件費は、イニシャルコストとランニングコストに分けて考えます。人を採用するときには、イニシャルコストとして採用活動費がかかりますね。
採用した人材を雇用するために毎月の給料、社会保険料、所得税、住民税、そして賞与などがかかります。経営者の観点からすれば、できる限りランニングコストとしての人件費は抑えたいところですが、下手に人件費を下げると社員のモチベーションを下げる結果になりかねません。
また、年功序列的な賃金制度を導入していると、毎年、必ず昇給させることになります。社員の成果に関わらず昇給させると、ランニングコストがかさむ一方となります。社員のモチベーションとコストメリットを考えつつ、人件費の運営方法を考える必要があります。
広告費
広告費もランニングコストの1つです。会社を宣伝するためにテレビや新聞、インターネットなどに広告費を投資します。広告費を投資するだけ会社の知名度は高まることでしょう。
一方、広告費を選別しないと、売上に繋がらない広告費に投資し続ける結果にもなり得ます。
ランニングコストの例文
事例を確認したことで、ランニングコストのイメージは付いたことと思います。続いてランニングコストの例文を2つ紹介します。ビジネスと生活場面での例文です。
ビジネスにおけるランニングコストの例文
ビジネスにおけるランニングコストの例文です。
- イニシャルコストが安い機械を購入した。しかし、機械の保守費用が予想以上にかかり、毎年のランニングコストが高くつきそうである。
- お見積りの中で、毎月のランニングコストのシミュレーションを載せています。
1つ目の例文では、安い機械を購入したものの、ランニングコストの見通しが甘く長期的には費用が高くつきそうだという事例ですね。イニシャルコストが安くてもランニングコストが高くつくことがあるので、事前のシミュレーションを入念にしたいところです。
2つ目の例文では、営業担当者が顧客に対してランニングコストのシミュレーションを説明しています。毎月のランニングコストを予測しておくことで、稟議決裁のときにも顧客が上司に説明しやすくなります。
生活におけるランニングコストの例文
生活におけるランニングコストの例文としては「高いエアコンだったけれど、毎月の電気代が安くランニングコストを抑えられた」が挙げられます。
エアコンの電気代は高くなりがちですが、メーカーの開発力の向上で節電できるエアコンもあります。イニシャルコストが高いエアコンも、ランニングコストが安くなることでコストメリットが得られるという例文です。
ランニングコストの削減方法
一時的に発生するイニシャルコストが安くても、ランニングコストが高いと長期的には財務状態を圧迫します。
ランニングコストが高いと思ったときは削減を検討する必要があります。3つの具体例を元に削減方法を解説します。
サーバーの仮想化によるシステム費用削減
業務のIT化が当たり前となっている昨今では、システム費用がいくら高くても廃止することは難しいです。システム費用を抑えることでコスト削減を図っていきましょう。
システム費用削減としてはサーバーの仮想化により台数削減をすることが挙げられます。複数のサーバーを使っていると維持費がかかりますよね。しかしサーバーを仮想化して台数を1つに集約すればランニングコストを抑えることができるのです。
社員のシフトの見直しや業務効率化
ランニングコストの1つである人件費は、闇雲に削減すると社員のモチベーションを下げる結果となります。しかし人件費が高騰して会社の財務状態を圧迫すると、将来的には倒産や社員の解雇を招いてしまうでしょう。モチベーションを維持しつつ、人件費を削減する経営が求められます。
人件費削減方法の1つとして、社員のシフトの見直しや業務効率化があります。例えばカラオケ店を経営している会社は、人件費削減のためシフトの見直しを考えます。カラオケ店の稼働率が高いのは夕方から夜間にかけて。午前中にバイトをたくさん割り当てても人件費を持て余してしまいますね。忙しい時間にバイトを割り当て、暇な時間にはバイトを割り当てなければ人件費削減となります。
また、業務効率化も人件費削減となります。例えば給与計算や社会保険に多くの労働時間をかけている労務部門にペイロールを導入してみましょう。ペイロールを導入すると業務効率化となり、人材を他の業務に割り当てることができます。
本来、給与計算や社会保険などのルーチンワークには、多くの工数をかけるべきではないのです。より付加価値の高い仕事に人材を割り当てることで、パフォーマンスの向上も見込めます。
まとめ
ランニングコストは会社経営や機材、システムなどを維持するために必要な費用のことです。イニシャルコストが安くても、ランニングコストが高いと長期的にはコストがかさんでしまいます。機材やシステムを一度導入したらすぐにはリプレースできません。導入前にコストの予測を行い、コストメリットを考えて導入したいところです。