2020年1月頃から爆発的なスピードで拡大を続けるコロナウィルスは、日本経済に大打撃を与え続けています。
感染拡大に伴って、時差通勤の推奨・海外出張の禁止・イベントの延期・小中学校等の休校など、各所でさまざまな対策が講じられています。
日本国内における爆発的なパンデミックを想定した場合、企業の労務担当者としてどのような対策を講じるのがベストなのでしょうか。
今回はそんな疑問にお答えするべく、労務・人事担当者として知っておきたいコロナウィルスの基本対策方針をご紹介します。
コロナウィルス対策の目的
企業として必要なコロナウィルス対策を説明する前に、「そもそもなぜコロナウィルス対策が重要視されるのか」を改めて整理しておきます。
企業がコロナウィルス対策をする理由は、主に下記の4つの理由が挙げられます。
- 従業員とその家族の安全確保
- 事業・運営サービスの安定的な継続
- ウィルス拡散の防止
- 企業としての社会的責任を果たす
まず第一に考えたいのが、会社で働く全従業員と家族の安全を守ることです。
オフィス内で爆発的なパンデミックが起きてしまえば、個人・部署・サービス領域ごとに多大なダメージを負うのは確実です。
まずは従業員が安心して働ける環境・制度を整備するのが、労務担当者に必要な役割の一つといえるでしょう。適切な環境整備をすることが、非常事態の中でも事業を円滑に進め、リスクを回避することに繋がるのです。
またコロナウィルス対策は、企業としての施策だけではなく、社会的な責任を全うするという側面でも重要な意味を持ちます。
ウィルスの感染防止・予防はもはや日本全体の問題となっており、一つの企業だけが自由に行動することはもはや不可能な現状。企業として適切な対策を取らなければ、国や世論からバッシングされるリスクも少なくありません。
コロナウィルス対策の基本方針
コロナウィルス対策を考えるうえで、特に重視したいポイントは下記の3つになります。
人との接触を避ける
コロナウィルスの感染は、主に飛沫感染・接触感染によって起こります。
これを防ぐためには、オフィスで働く人たちの接触を少なくすることが最も大切です。
「オフィス勤務の人を減らす」「勤務時間帯をずらす」「リモートワークを推奨する」など、多くの人が一度に同じ場所で作業をする機会を可能な限り減らしましょう。
また、オフィス内の換気はいつも以上に徹底しておこなってください。
通勤による感染リスクの回避
コロナウィルスにおいて、現状最も感染のリスクが大きいのが「通勤ラッシュ」です。
多くの人が至近距離で長時間密集することが多い通勤電車・バスなどは、感染のリスクを飛躍的に高めてしまいます。
飛沫感染・接触感染であれば、マスクで完全防備していても意味がありません。
時差通勤で通勤ラッシュを緩和したり、テレワークで出勤の機会を減らしてみるなど、通勤自体を限りなく少なくできないかを念頭に置いて対策を考えてみましょう。
個人への予防を呼びかける
個人への注意喚起を行うことも、会社として注力したい施策の一つです。
いくら会社として対策を強化していても、オフィスで働く社員の意識が低いままでは、感染拡大を防止することはできません。
海外旅行の自粛・イベントの中止・飲み会を避ける…など、プライベートにおいても人が密集する場所へ行くのは控えるように、根気強く周知していく必要があるでしょう。
会社として行える施策は、あくまでも通勤・勤務時ルール変更のみです。社員のプライベートまで強制する力はないので、自粛を呼びかける程度にとどめておきましょう。
採用率の高いコロナウィルス対策
ここからは現時点(2020年3/20日時点)において、各企業で採用率の高いコロナウィルス対策を紹介します。
会社として取り組むべき施策に迷ったときは、下記の制度・環境整備を参考にしてみましょう。
時差通勤の推奨
時差通勤とは、満員電車の時間帯をずらして通勤する施策のことです。
人が密集しやすい都市部であれば、7〜9時台のピーク時間帯を意図的に避けることで、満員電車による感染のリスクを下げることができます。
期間限定で出社時間帯に幅を設けるなど、時差通勤がきちんと機能するように施策を打つことが大切になります。
テレワークの推奨
テレワークで自宅勤務を可能にするのも有効な施策の一つです。
通勤・外出を極限まで減らすことができるので、コミュニケーションに支障がなければ積極的に活用したい施策です。
「チームごとに特定の曜日をテレワーク可能日にする」「週に2〜3回程度テレワークをできる日を設ける」など、在宅勤務をしやすい制度作りを進める必要があるでしょう。
一方で、「コミュニケーションがしにくくなる」「事業の進捗が可視化しにくくなる」などのデメリットもあるので、上手く導入できるかは会社の事業形態次第です。
一時的にフレックスタイムを導入
フレックスタイムとは、コアタイムのみを決め、それ以外の時間帯は出社・退勤時間を自由にする施策のことです。
こちらは時差通勤と似ていますが、出勤・退勤時間を自由に決められるぶん、時差通勤よりも個人の裁量が大きい施策になります。
時差通勤のように会社全体の制度を変更・周知する手間が少なくなるので、一時的に導入するには有効な施策になります。
ミーティングの自粛
部屋に複数人が集まって議論することが多いミーティングも、感染リスクを高める行動の一つです。
ミーティングを禁止する必要はありませんが、「不必要なミーティングは避ける」「オンラインミーティングに切り替える」など、なるべく人が集まらないようにする工夫は必要になるでしょう。
アルコール消毒液の追加設置
オフィス内にアルコール消毒液を追加設置するのも有効な施策です。
出入り口付近や会議室など、オフィスを出入りするときにこまめに消毒できるような環境を整備しておくのが重要になります。
社内で働く従業員はもちろん、来客用にも一つ準備しておくと良いでしょう。
現在品薄状態が続いていますが、社員の安全確保の観点から可能な限り設置をするべきです。
マスク着用の推奨・義務化
飛沫感染を防ぐマスクは、最も基本的な感染予防の一つです。
普段からマスクの着用を徹底するように周知するのはもちろん、オフィス内では原則マスクの着用を義務付けるなどの施策も有効です。
ただしこちらも現在品薄状態が続いているので、あくまでも推奨程度にとどめておくのが良いでしょう。
あまりにもルールを厳格化しすぎると、社員の間にいらぬ軋轢を生んでしまう可能性があります。
体調不良時の出社禁止
体調不良時はオフィスへの出社を禁止にするのも有効な対策です。
特に発熱・せき・喉の痛み・鼻水など呼吸器症状の場合は、出社可能な体調であっても控えるべきです。
また、体調に問題がない場合でも、せき・くしゃみなどの症状が悪化している場合はテレワークに切り替えるのも一つの手。仮に感染していなくても、周囲に不安や嫌悪感を与えてしまう可能性があります。
海外渡航の原則禁止・自粛
現在爆発的なパンデミックが起こっている韓国・イタリアを含む感染危険レベルが高い国への渡航は原則禁止にしましょう。
海外だけでなく、日本国内でも感染者の多い地域・街へ出張に行くのは避けるべきです。
万が一避けられない出張がある場合、コロナウィルスの潜伏期間を踏まえて、出張後2週間はテレワークにするなどの施策も有効です。
上場企業のコロナウィルス対策例
上場企業はコロナウィルスの猛威にどのように対応しているのでしょうか。
今回は電通・オリエンタルランドの対策を例に挙げて紹介します。
電通|社員約5000人を在宅勤務に
東京・汐留にある電通本社ビルでは、50代の男性従業員がコロナウィルスの感染が確認されました。
それに伴い、電通は本社ビルで働く約5000人の従業員を在宅勤務にする対応を発表しました。
オフィスにて感染者が確認されることは、もはや他人事ではなくなってきている状況です。
緊急時のリスクに備えて、会社全体で在宅勤務などの多様な働き方に慣れておくことが大切です。
dentsu|業務の安全かつ円滑な遂行に向けた取り組みについて
オリエンタルランド|期間限定で休園
東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドも、2020年2月29日〜4月上旬までの休園を余儀なくされています。
それに伴い、商業施設イクスピアリの休園、季節グッズの販売中止、ホテルやシーズンチケットの払い戻し…などの対応に追われているそうです。
感染リスクの高いテーマパーク事業なので仕方のないことですが、全ての事業を停止するのは経営的にも影響が大きそうです。
最悪の事態を想定して、事業継続を最大化できる対策を考えることが重要です。
千葉日報|【新型コロナ】ディズニー2パーク休園延長 4月上旬まで、新エリアも
コロナウィルスの猛威から会社を守ろう
今回はコロナウィルス対策として、人事・労務担当者が行うべき施策について解説しました。
感染拡大が続くコロナウィルスの猛威は、いつ終息するのか現状では検討もつきません。
可能な限り感染拡大を防ぎ、緊急時でも事業継続を行えるような体制を作るのが、人事・労務担当者に求められる責務といえます。