利益率とは?
利益率の意味を確認します。
売上高に対する利益の割合
利益率とは売上高に対してどれくらいの割合の利益があるかを表す会計用語です。企業の収益性を知るために利益率が使われます。
利益率が高い企業とは?
会社の規模が大きくなればなるほど売上高も利益も高くなります。しかし、いくら売上高と利益が高い企業であっても、必ずしも儲かっているとはいえません。利益率が高い企業について具体例を元に説明します。
例えば売上高1,000億円の企業Xが10億円の利益をあげているとしましょう。一方、売上高100億円の企業Yも同じく10億円の利益をあげているとします。利益額はいずれも10億円なのですがどちらが儲かっているでしょうか?企業Xの利益率は1%しかありませんが、Yの利益率は10%です。規模は小さくても企業Yの方が儲かっているといえますね。企業規模にこだわらず利益率を見ることが収益性を図る上で必要です。
利益の種類
利益と一口にいっても5つの種類があります。5つの利益は、企業の財務状態を表す損益計算書に載っています。損益計算書の記載順に見ていきましょう。
売上総利益
売上総利益は売上高から売上原価を引いた利益です。売上原価とは商品を仕入れ、また製造するときに必要な費用をいいます。例えば100円で売った商品の売上原価が70円とすると、売上総利益は30円となります。売上総利益は以下の計算式で求められます。
売上総利益は粗利とも呼ばれます。
営業利益
営業利益は売上総利益から販売費及び一般管理費(販管費)を引いた利益です。営業利益は本業で稼いだ儲けを表します。企業が事業を営むには、売上原価だけでなく広告宣伝費、人件費、減価償却費などの費用がかかり、それらの費用を引いて求められるのが営業利益です。営業利益は以下の計算式で求められます。
経常利益
経常利益は営業利益に営業外損益をプラス・マイナスして求められる利益です。営業外損益というのは、本業以外の活動により発生した収益および費用を指します。
例えばスーパーマーケットなら小売りが本業です。スーパーがサイドビジネスとしてマンションを貸し出して賃料を得ていたとしたら、賃料収入が営業外損益となります。営業外収益には受取利息、受取配当金など、営業外費用には支払利息などがあります。
経常利益は以下の計算式で求められます。
税引前当期純利益
税引前当期純利益は経常利益に特別利益を足し、特別損失を差し引くことで求められる利益です。「税引前」という言葉があることから分かるように、法人税などの税金を支払う前の利益をいいます。
特別利益は当期だけ特別な原因によって発生した利益のことです。同様に特別損失は当期だけ特別な原因によって発生した損失です。特別利益と特別損失は、通常の経営活動であれば発生しない利益であり損失をいいます。特別利益の例として固定資産売却益、投資有価証券売却益などが挙げられます。特別損失の例としては固定資産売却損、投資有価証券売却損、災害損失などが挙げられます。
税引前当期純利益は以下の計算式で求められます。
当期純利益
当期純利益は税引前当期純利益から法人税などの税金を引いた利益です。当期純利益は最終的に企業が稼いだ利益となります。当期純利益は以下の計算式で求められます。
当期純利益は、後に説明する総資産利益率や自己資本利益率などの利益率の計算でも使われます。
利益率の計算方法
利益率は「利益÷売上高×100=利益率」によって求められます。ただ、企業の財務状態を分析するには利益率だけでは足りません。利益率というと一般的には5種類の利益率をいいますので説明します。
5種類の利益率
5種類の利益率とは、以下の利益率のことです。
- 売上総利益率
- 営業利益率
- 経常利益率
- 総資本利益率
- 自己資本利益率
売上総利益率
売上総利益率は売上高に占める売上総利益の割合を示しています。売上総利益率は粗利率とも呼ばれます。計算式は「売上総利益÷売上高×100=売上総利益率」です。
営業利益率
営業利益率は売上高に占める営業利益の割合を示しています。営業利益は本業で稼いだ儲けですから、企業の実力を示す重要な指標といえます。計算式は「営業利益÷売上高×100=営業利益率」です。
売上経常利益率
売上経常利益率は売上高に占める経常利益の割合を示しています。経常利益は営業利益に対して営業外損益をプラス・マイナスして求められる利益のことでした。営業外損益は継続的な利益と費用ですから、売上経常利益率が高いということは、本業と本業以外の収入源によって経常的に稼ぐ力があることを示します。計算式は「経常利益÷売上高×100=経常利益率」です。
総資産利益率(ROA)
総資産利益率(ROA)は総資産に占める利益の割合を示しています。ROAで考える利益は当期純利益です。企業が持っている総資産を使い、どのくらい当期純利益をあげているかを示す指標です。計算式は「当期純利益÷総資産×100=総資産利益率」です。
自己資本利益率(ROE)
自己資本利益率(ROE)は自己資本に占める利益の割合を示しています。ROEで考える利益は当期純利益です。自己資本を使い、どのくらい当期純利益をあげているかが分かります。自己資本利益率は株主から見た投資効率がどの程度かを示す指標です。計算式は「当期純利益÷自己資本×100=自己資本利益率」です。
利益率の目安
5種類の利益率にはそれぞれ目安があります。
売上総利益率の目安
業界別の平均値から、売上総利益率の目安を見てみましょう。
- 製造業:22.3%
- 卸売業:11.8%
- 小売業:27.6%
- 飲食業:55.9%
売上総利益は売上高から売上原価を引いた利益です。人件費や広告宣伝費、営業外損益なども差し引いていないので、業界別にバラツキのある割合となっています。
売上営業利益率の目安
業界別の平均値から、売上営業利益率の目安を見てみましょう。なお売上営業利益率からROEまでは同じ統計データを使っています。
- 製造業:4.8%
- 卸売業:1.9%
- 小売業:2.8%
- 飲食業:3.7%
営業利益は企業の実力を示す重要な指標です。売上営業利益率は10%あると「高い」といわれます。どの業界も売上営業利益率は1~4%台で推移しているので、10%を獲得するのは難しいことが分かります。
売上経常利益率の目安
業界別の平均値から、売上経常利益率の目安を見てみましょう。
- 製造業:7.3%
- 卸売業:3.2%
- 小売業:3.1%
- 飲食業:4.1%
売上営業利益率と売上経常利益率を比較するとどの業界も割合が高くなっています。本業と本業以外の収入源によって、稼ぐ力があることが分かります。売上経常利益率で扱う本業以外の収入源は一時的なものではありません。つまり、売上営業利益率が低くても、本業以外の収入源が確保されていれば、経常的な利益が見込めるというわけです。
ROAの目安
業界別の平均値から、ROA(総資産利益率)の目安を見てみましょう。対象となる利益は当期純利益です。
- 製造業:4.3%
- 卸売業:4.1%
- 小売業:3.2%
- 飲食業:3.8%
ROAは総資産を使って、企業がどれだけの当期純利益をあげることができたかを示す指標です。
ちなみに、2018年度における日本と欧米の上場企業のROAの比較を見てみると、日本企業は欧米よりも比率が低いことが分かります。
- 日本:3.9%
- 米国:6.2%
- 欧州:4.2%
ROEの目安
業界別の平均値から、ROEの目安を見てみましょう。
- 製造業:8.4%
- 卸売業:10.7%
- 小売業:7.6%
- 飲食業:8.5%
ROEは自己資本を使って、企業がどれだけの当期純利益をあげることができたかを示す指標です。
ROA同様に、2018年度における日本と欧米の上場企業のROEの比較を見てみます。欧米よりも日本企業のROEは低い割合です。
- 日本:9.4%
- 米国:18.4%
- 欧州:11.9%
利益率が高くてもリスクになるとき
利益率は高ければ高いほど良いと思われがちです。しかし、利益率が高くてもリスクになるときがあるので説明します。
必要な経営資源にお金を使っていないとき
営業利益率を高めることを目的として、販管費を削減することがあります。営業利益の計算式を見れば一目瞭然ですね。
ただ、販管費には人件費もあります。営業利益率が高くても、人件費を下げ過ぎたことによって高くなった場合、社員のモチベーション低下、エンゲージメント低下に繋がるリスクがあります。
会社は人材で成り立っていますから、人件費のような経営資源については無暗に削減しないようにしましょう。
営業利益率と売上総利益率がリンクしているとき
営業利益率と売上総利益率がリンクしているときは、利益率の高さがリスクになることがあります。
一見、売上高が高いときは問題にならないように見えます。理由は、売上総利益率も営業利益率も共に向上するからですね。
しかし、売上高が下がったときは、売上総利益率も営業利益率も共に低下してしまうから危険です。「利益率が高いから良い」と考えるのではなく、利益率の関係性を見極めることが大切です。
まとめ
利益率は、売上総利益率・営業利益率・経常利益率・総資本利益率・自己資本利益率の5つの種類がありました。種類ごとに指標の意味も異なり、利益率の目安もあります。利益率の目安は業界別で見ると参考になりますから、自社の利益率が業界別で見るとどの程度になるか確認しておきたいところです。