近年注目されている「リファラル採用」は、企業運営における採用コストを大幅に抑えられる新しい採用方式の一つ。
中小企業やベンチャーのみならず、大企業も積極的に取り入れている採用方法です。
今回はリファラル採用の特徴や制度の仕組み、導入するメリットや問題点などについて解説します。
リファラル採用とは?
リファラル採用とは、企業の社員が自分の友人や知人をその企業に紹介して採用するというものです。
アメリカなどではリファラル採用は一般社会に浸透していますが、新卒一括採用を軸として社員を採用する日本ではあまり馴染みがなかった採用方法です。
近年注目され始めた背景
日本では2016年に「働き方改革」が政府から発表されました。この案の目的は、労働力人口が急速に減少している日本において将来的な国力低下を避けることです。
労働力人口が減るということは、企業を成長させる人材の枯渇を意味します。そうした社会的背景で企業は「いかに優秀な人材を集めるか」「いかに離職率を低下させるか」という課題に取り組むことになりました。
その2つの解決策として注目を集めることになったのがリファラル採用です。
紹介者に支払う報酬額の相場
企業の社員が知人を紹介して採用となった場合には、紹介した社員に紹介料を支払うのが一般的です。
しかしこの報酬額は企業によって様々であり、高ければ効果が実証されるということにはならないそうです。全く報酬を支払わない企業もありますが、その相場は3~10万円位の設定となっています。
リファラル採用の注意点と違法性
人材紹介業を行う場合には資格が必要となります。そのために社員がリファラル採用を行い「リファラル採用に対する報酬」を受け取る場合には違法性があります。
そのため、企業では知人を紹介してくれた社員に対しては「会社業務の一評価」として給与に反映させて支給することになります。
新卒募集にも有効なリファラル採用
リファラル採用の大きなメリットは、「企業定着率が高くなる」ということです。
学校を卒業して社会に出ると、誰しも壁にぶつかることがあるでしょう。そんな時に壁を乗り越える勇気を与えてくれる「友人の存在」は非常に大きいもの。それが同じ立場、同じ環境であればなおさら効果的になります。
リファラル採用のメリット
リファラル採用の概要が理解できたところで、そのメリットについて考えてみましょう。リファラル採用には大きく4つのメリットがあります。
- 採用コストの大幅な削減
- 内定後辞退率の減少
- 優秀な人材を発掘できる
- 企業文化にマッチした人材を集めやすい
という4点です。それぞれについて考えてみたいと思います。
採用コストの大幅な削減
優秀な人材を採用するには、高額なコストがかかるものです。リファラル採用の大きなメリットの一つにこのコストを大幅に削減できることがあります。紹介を行った社員に対してその評価として給与に組み込んだ報酬を支払うのみであるため、企業にとっては非常に大きいメリットです。
内定後辞退率の減少
会社と社員が一体となり、お互いの成長に貢献し合う関係性を「エンゲージメント」といいます。リファラル採用という言葉とともに最近注目を集めるようになりました。
自分の企業を友人や知人に紹介する社員はこのエンゲージメントを持っている社員で、その企業で働くことに対して満足感が高いのです。
当然のことながら、その企業で新しく働く社員に企業の良さや働き甲斐が伝わりやすいでしょう。その結果、採用内定を受けた人材が辞退する可能性は低くなります。
優秀な人材を発掘できる
前述したように、日本では労働力人口は下がっていく一方です。そのため優秀な人材の確保というものはどの企業でも大きな課題です。
リファラル採用では、社員が知人や友人を紹介するシステムであるため、今まで企業が出会えていない人材を発掘できるもあるのです。
企業文化にマッチした人材を集めやすい
企業で働く人間であれば、その内部で働くのにふさわしい人材の特徴がよくわかるものです。
どんなスキルを持っていて、どんな性格の人間が企業で活躍できるのかということは人事より現場の社員がより的確に判断できることもあるでしょう。そのため、現場で働く社員が紹介する人材はその企業において活躍できる可能性は非常に高いといえるでしょう。
リファラル採用のデメリット
では次に、リファラル採用のデメリットを考えてみましょう。
認識不足によるミスマッチ
リファラル採用では、知識不足や伝達不足によるミスマッチが起こる可能性があります。
紹介を行う社員が、知人や友人に対して採用の条件などで伝えるべきことをしっかりと伝達できなかったり、逆に紹介を行う社員が、知人の全てを知っているわけではないため、双方向でこのミスマッチが起こる可能性はあるでしょう。
採用した人材の同質化
「類は友を呼ぶ」という言葉もありますが、基本的に紹介する社員と似たような人材が集まりやすいのがリファラル採用の特徴でもあります。
もちろん、同じように活躍できる可能性が高い反面、派閥などの形成にもつながりやすいのです。
人間関係の悪化
リファラル採用では、紹介する社員と紹介を受けた社員との信頼関係が基盤となって成り立つものです。そのため、何か社内で問題があった場合には双方的に影響を受けることもあり、最悪の場合にはその人間関係に悪い影響が出てしまう可能性があるでしょう。
リファラル採用には多くのメリットがありますが、それが日本で浸透させる取り組みが重要だといえます。では、実際にリファラル採用を行い成功したメルカリとピクスタの例を具体的にみていきたいと思います。
メルカリのリファラル採用事例
メルカリは入社する社員の60%程はリファラル採用で入社しているという日本では極めて珍しい採用を行っています。メルカリこの採用方法を「裏切らない採用」として位置づけを行うとともに、自社の社員が知人や友人心から紹介したいと思う会社で在ることを目指しています。
ピクスタのリファラル採用事例
ピクスタは、画像や動画素材を販売するサイトを運営する会社です。2014年からそれまでの人材採用方式に限界を感じ、リファラル採用を導入しました。ピクスタのリファラル採用の特徴は、まず役員クラスの社員が紹介を行い、その波を広げていったことでしょう。その結果、リファラル採用が社内に浸透したのです。
リファラル採用向けのツールを紹介
人事の世界では「HRテック」という言葉も日本で言われるようになりました。テクノロジーを導入し、より効果的に人事業務を行うものです。ここではリファラル採用向けのツールを3つ紹介したいと思います。
誰でも簡単に運用できる「Refcome」
「Refcome」はシンプルなフローで社員にリファラル採用を行ってもらうためのツールです。スマートフォンからLINEやFacebookを通じてリファラル採用を行ってもらうことができるため、社内にこの採用システムが認知されやすい特徴があります。またツールとしてデータ分析やグループごとのエンゲージメントの可視化をすることが可能です。
テンプレート機能が便利な「Glover Refer」
「Glover Refer」はリクルートキャリアが開発したプラットフォームであり、テンプレート機能が便利なことで評価を上げているツールです。150社以上の企業で導入され、10万人以上の従業員に利用されています。
多彩な機能を有する「MyRefer」
「MyRefer」はリファラル採用を社内で活性化させ、「全社員採用を実現する」ことを目指すツールです。社員が楽しみながら紹介を行えるようにランキング機能を設けたり、退職社員の再雇用も促進させるなど多彩な機能を持っています。
まとめ
日本ではかつて製造業が主な産業でした。そんな時代には「新卒一括採用」「終身雇用」「年功序列制度」というものは、極めて効率的な人事でしたが、サービス業が産業の比率を高めていく中で、人事の有り方は過去の成功例から捉われ続けてしまったのです。
リファラル採用が日本で浸透しなかったのは、こういった背景が大きく影響していました。働き方が多様化する今の時代では、リファラル採用による成功事例がより精度を増し、一般化していくことでしょう。