若年無業者を意味するニートは、放置すると社会問題となります。ひきこもりやフリーターとニートはどう違うのでしょうか?この記事では、ニートの意味や概要、企業がニートを採用するときのポイントを解説します。
ニートとは?
ニートとは若年無業者を指す言葉。ニートは、英語の(Not in Education,Employment or Training)の頭文字を取ってNEETと名付けられました。
NEETを直訳すると「就学、就業、職業訓練のいずれもしていない人」です。日本でもNEETの語感をそのまま使ってニートと呼んでいます。
なお内閣府ではニートを若年無業者と呼び、「15~34歳の非労働力人口のうち,家事も通学もしていない者」と定義します。つまり日本においてニートと呼ばれるのは、34歳までの人に限られるのです。
ニートはどれくらいいるのか
内閣府の「令和2年版 子供・若者白書」によると、2019年のニートの数は74万人でした。
2017年・2018年ともにニートの数は71万人でしたが、3万人増加したことになります。15~19歳、20~24歳、30~34歳の若年無業者がいずれも増加しています。
専業主婦はニートではない
ニートの意味には「就学、就業、職業訓練のいずれもしていない人」ですが、この意味に当てはまっていても、ニートと呼ばれない人の代表例に専業主婦(夫)がいます。
内閣府は若年無業者を「15~34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者」と定義しています。つまり専業主婦(夫)は就学も就業も職業訓練も受けていませんが、家事に従事しているためニートから除外されるのです。
また、ニートと間違いやすいのは学生です。学生は就業していますからニートではありません。
35歳以上のニートの呼び方
ニートは34歳まで。35歳以上になるとニートではなく中年ニートやSNEPと呼ばれます。
SNEP(スネップ)は、2012年に経済学者の玄田有史が提唱した言葉で、20歳以上59歳以下の未婚で就学していない無業者を指します。SNEPはニートよりも年齢層が幅広く、普段1人か家族以外の他者と接点がない人です。
日本語では孤立無業者と訳されます。ニートとSNEPとの違いは年齢の他に社会性があります。SNEPは社会性に乏しいことが強調されるのです。
ニート率の国際比較
ここまで日本のニートについて説明してきました。日本のニートは多いか少ないか、ニート率の国際比較を見てみましょう。
2018年に行ったOECDの調査(Education at a glance)によると、ニート率は、OECD平均13.4%に対して日本は9.8%と平均を下回る結果となりました。
最もニート率が高かった国はトルコで27.2%です。次に25.1%のイタリアが続きます。最もニート率が低かった国はアイスランドで、4.9%でした。
ニートと社会問題
ニートが増えるとどんな社会問題が起きるのでしょうか?
ニートが増えるとどうなるか
日本の人口は2008年をピークに減少に転じています。また、生産年齢人口は2015年に7,728万人いたのが、2040年では6,000万人を割り込むと予測されています。
生産年齢人口は生産活動の中核をなす人口のことで、15歳から65歳未満の人口です。
ただでさえ生産年齢人口が減っているのにニートが増えると、労働力がさらに減少してしまいます。労働力の減少は国の経済力を低下させるだけでなく、年金や健康保険にも影響を及ぼします。
ニートでは正社員になれない
ニートを減らすために社会復帰してもらおうと思っても、ニートはなかなか正社員になることができません。企業の採用担当者は、働いていないニートを採用するよりは社会人経験がある人を採用したいと考えるからです。
ニートにはどれほどの職務遂行能力があるか分かりません。入社させてみたら教えることが多過ぎて教育コストがかさんでしまうかもしれません。ですから、企業はニートを正社員にしたがらないのです。
正社員になれないと雇用が安定しませんから、例えば非正規社員として契約が更新されなかったとき、再びニートに戻る人も出てくるのです。
厚生労働省によるニートの支援内容
厚生労働省によるニートの支援内容を紹介します。紹介するのは地域若者サポートステーションとジョブカフェの2つです。
地域若者サポートステーション(サポステ)は、支援対象者として「働きたいけれどどうしたら良いか分からない」「働きたいが一歩を踏み出せない」といった、働くことに悩みを抱える15~49歳までの人に対して、以下のような支援を行っています。
- キャリアコンサルタントによる労働相談
- コミュニケーション訓練
- 職場体験
- 集中訓練プログラム
- 保護者向けセミナー
全都道府県にサポステは設定されています。
サポステの支援対象者の年齢は幅広いですが、就労に自信がない人を支援しているため、若年無業者であるニートもサポートを受けることができます。
次にジョブカフェです。ジョブカフェは46の都道府県に設置されている若年者のための就職サポートセンターです。就職セミナー、職場体験のほか、保護者向けのセミナーなどがあります。
ジョブカフェにはハローワークを併設していることが多いので、ハローワークを利用しやすくなります。
ニートの特徴
厚生労働省は「ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調査研究報告書」の中でニートの特徴を紹介しています。ニートの特徴を確認しましょう。
ニートの状態にある若年者の実態および支援策に関する調査研究報告書
対人コミュニケーションを苦手とする
報告書は、就職に必要なスキルについて苦手意識があるかを尋ねました。その結果、人に話すのが不得意と回答した人が64.4%にのぼることが明らかに。ニートは対人コミュニケーションを苦手とすることが分かりました。
就職に必要な生活行動でも「面接に通る」「面接で質問に答える」などが苦手意識の上位にきています。
熟練を要しない仕事に就いていた人が多い
報告書は、ニートの就労経験を尋ねました。その結果、雇用形態はアルバイトが多く、のべ雇用経験の64.4%を占めます。ニートは正社員経験がある人が少ないため、熟練を要しない仕事に就いていた人が多いといえます。
サポステやジョブカフェのような支援機関を利用し、ニートが社会復帰できる道筋を作ることが重要です。
ニートとひきこもり、フリーターとの違いとは?
ニートとひきこもり、フリーターは似たような概念に思うかもしれませんが、それぞれの意味が違います。
働いている若者がフリーター
ニートは若年無業者ですが、フリーターは働いている若者です。フリーターは、総務省の労働力調査によって以下のように定義されています。
- 年齢15歳~34歳
- 男性は卒業者、助成は卒業者で未婚
- 雇用形態の名称がパート、アルバイトである者
フリーターの年齢は15歳~34歳ということで、ニートと重なりますが、フリーターはパートやアルバイトという形で働いています。
ひきこもりに年齢制限はない
厚生労働省によるひきこもりの定義は、仕事や学校に行かず、かつ家族以外の人との交流をほとんどせずに、6か月以上続けて自宅にひきこもっている状態です。
働いていないことから、ひきこもりとニートは近いです。違いは、ニートは15~34歳までの若年無業者であることをいいますが、一方でひきこもりには年齢制限はないのです。
企業がニートを採用するときのポイント
ニートの特徴から、ニートは対人コミュニケーションが苦手で非熟練の仕事に就いていた人が多いことが分かっています。
企業にとってニート採用はハードルが高いです。ニートを採用するためのポイントを紹介しますので、採用の参考にして下さい。
最初から正社員にしない
ニートは職務経験が少ないです。経験していたとしても非熟練の仕事に就いていた人が多いのです。企業としても、ハローワークから紹介された応募者がニートだと採用に二の足を踏むかもしれません。
最初から正社員にせず、アルバイトや契約社員といった非正規雇用からニート採用をスタートしましょう。 最初から正社員にしなければ、もしミスマッチが起きたときも企業は調整することができ、次の応募者を待つことができるからです。
トライアル雇用を利用する
正社員としての適性を見極める国の制度としてトライアル雇用もあります。トライアル雇用は原則3か月の試用期間を設定し、採用する流れです。
トライアル雇用を利用すると、企業はトライアル雇用助成金制度という助成金をもらうことができます。経験が浅く、対人コミュニケーションに苦手意識を持つニートを採用するときは、適性を見極めるトライアル雇用を検討してみましょう。
まとめ
社会問題化しているニート。ニートは年齢15~34歳までの若年無業者です。35歳以上の無業者は中年ニートやSNEPなどと呼ばれます。
ニートではなかなか正社員になれませんが、厚生労働省の支援機関であるサポステやジョブカフェで就職サポートを受けられます。
ニートを採用するときは、トライアル雇用やアルバイトからスタートし、企業とニートの雇用のミスマッチを防ぐことができます。