マーケティング用語の「エンゲージメント」とは企業と顧客のつながりを強める意味合いがあります。
では、人事の領域で用いられる「エンゲージメント」にはどういった意味があるのでしょうか?
今回は、「エンゲージメント」の意味や重要視される理由、企業の事例をご紹介しましょう。
エンゲージメントとは
「エンゲージメント」とはシチュエーションによって様々な意味があります。
マーケティングにおいては「企業と顧客のつながりを強固にする」意味があります。
ブログやSNSなどのマーケティング手段によって顧客の関心や興味を引きつけていく手法です。
人事の観点からみる「エンゲージメント」とは従業員の会社に対する「企業へのの愛着心」や「思い入れ」をいいます。
エンゲージメントの意味(人事領域)
人事の領域で用いられる「エンゲージメント」は社員と企業がお互い信頼を寄せる関係。
従業員一人ひとりが組織に愛着心、愛社精神、思い入れがあることを意味しています。
従業員エンゲージメントとワークエンゲージメントの違い
従業員エンゲージメントとは、企業と従業員が共に必要な存在として、絆を深めながら成長できる関係を築いていくことです。
従業員エンゲージメントが高い企業は、企業経営に良い影響があることが分かっています。
従業員エンゲージメントは組織と個人の関係性を高めることといえます。
一方で、ワークエンゲージメントとは個人の状態に注目しているのが特徴です。
ワークエンゲージメントが高い人は、活力・熱意・没頭の3つの要素を持っています。
従業員エンゲージメントは重要
従業員エンゲージメントを高めることは、優秀な人材を確保するために重要だと考えられています。
ここからは、従業員エンゲージメントが重視される背景と意識するメリットを見ていきましょう。
従業員エンゲージメントが重視される理由や背景
近年は、日本独特の終身雇用制度が衰退し始めて、成果主義の報酬体系が増えてきています。
優秀な従業員は自身のキャリアアップのため、より良い待遇を求めて転職をするのは当たり前の時代となっています。
従業員エンゲージメントを高めることで、待遇以外の面でも従業員と強い絆が築かれると注目されています。
エンゲージメントを高めることの効果
従業員エンゲージメントを高めることで、優秀な人材の流出を抑えることができるのがメリット。
エンゲージメントの高い企業は、生産性と収益性が約20%高くなり、顧客評価も10%高いことが分かっています。
従業員エンゲージメントを高める方法
では、実際に従業員エンゲージメントを高めるため
にどうすれば良いのかやり方を見ていきましょう。
評価制度の見直しと整備
従業員が主体的に行動をして、組織に貢献しようと努力していても、適切にに評価されない仕組みでは
モチベーションを低下させてしまいます。
エンゲージメントを高めるには、人事担当者が部署毎に評価制度を見直し、正当な評価が与えられる人事評価の制度を整備することが重要です。
ワークライフバランスをととのえる
従業員それぞれが組織に貢献しようと主体的に動きたいと思っていても、主体性を発揮できない環境の場合は能力を発揮することができません。
人事担当者としてはそれぞれ従業員が能力を発揮できる環境を整えて、報連相を徹底する環境を整えることが大切です。
人材育成やキャリアアップの支援
近年は、自分に合った職場を見つけるために転職することが当たり前の時代になっています。
キャリアアップできる環境が整っていない場合、離職する従業員が増えてしまうでしょう。
人事としては、キャリアアップできる職場環境を整えて、人材育成や新入社員のサポートをすることが大切です。
従業員の理想のキャリアが現在の職場で現実可能かどうかによって、従業員エンゲージメントは大きく変わります。
従業員にステップアップを魅力的に分かりやすく示すことも大切です。
働き方の自由度を高める
社会の多様化、働き方の自由化が進む中で、人事担当者が働き方の選択肢を増やすことも大切です。
人よってライフスタイルは様々あり、時間の使い方や集中できる時間帯は違います。
そのような状況の中で、企業が柔軟な働き方の選択肢を与えることで、従業員エンゲージメントを高めることに繋がります。
社内のコミュニケーションを活性化させる
社内の人間関係は、労働環境と深く関係があり、社内のコミュニケーションを活性化させると、従業員エンゲージメントを高めることができます。
社内コミュニケーションを見直し・改善し、従業員それぞれが主体性に発言できる良好な人間関係がある職場づくりを目指しましょう。
従業員エンゲージメントが高い企業の例
ここからは、従業員エンゲージメントが高い企業の例を見ていきましょう。
1. ヒルトン成田
成田空港近くの「ヒルトン成田」と「インターナショナルガーデンホテル成田」はタイムライン上でコミュニケーションを取る試みをしています。
ヒルトン成田人事部長のは十数年働いてきたのに顔と名前が一致しないことに課題を感じていました。
同じホテルで働く従業員全員で、参画意識を持って意見を出し合える横のつながりを強化することに。
従業員全員に説明会を実施し、リアルでのイベント参加希望者が増えたことで、社内研修や情報交換に役立っています。
2. 小松製作所
「小松製作所」は人事制度改革を行い、従業員エンゲージメントを半年で33%から70%アップさせた成功例です。
長く働ける環境づくりを整えるため、労働組合を新設、事業分野別にカスタマイズした評価・昇格・賃金制度の導入、研修制度を充実させました。
労働時間や勤務場所について裁量を持たせる柔軟な働き方を推奨し、現場の従業員に権限を与えています。
人財を大切に育てることが会社の成長に繋がると考えて実施したところ、工場のパフォーマンスは9.4%アップに成功しました。
3. スターバックス
「スターバックス」では、定期的にストアマネージャーが集まり、各店舗の現状について共有・相談し合う機会が設けられています。
ストアマネージャーは1年後に達成するべき「パフォーマンスゴール」と呼ばれる目標を設定。
ストアマネージャー同士でサポートし合う「ギャラリーウォークアクティビティ」により、ストアマネージャーの働きやすさに繋がっています。
孤立しがちなストアマネージャーの立場ですが、お店全体のことを相談したり共有する相手がいることで、上手くフォローし合っているのです。
まとめ
近年は、働き方の多様化、人材の確保が難しくなる中で、従業員エンゲージメントを高めることの重要性が増しています。
優秀な人材の流出を防いで、生き残れる組織を創るためにも従業員エンゲージメントを高める対策は必要です。
人事担当者として、今の組織にどのくらいの従業員エンゲージメントがあるのか明確にしてみてはいかがでしょうか?
良い点と改善点が見えてくると、どうやって施策を打っていくか考えるヒントになるはずです。