競業避止義務とは?転職した際の効力や過去の判例などを紹介

競業避止の記事

企業のリスク管理の一つとして、従業員に競業避止義務を課して、競業行為を制限することがあります。従業員が転職した場合、企業の都合で競業避止義務を課すことは、職業選択の自由に反するため要注意です。今回は、競業避止義務の意味や効力について詳細に解説していきます。
目次

競業避止について

競業避止について
競業避止義務とは、会社の利益を不当に侵害してはならない義務のことをいいます。

例えば、従業員が競合他社に雇用されたり、独立して会社と競合する業務を行うことが挙げられます。

会社側は、退職した従業員に競業避止義務を課すために、就業規則を制定したり、誓約書や雇用契約書を従業員から取得する必要があります。

競業避止義務とは

競業避止義務とは、従業員が競合他社の取締役を務めたり、競合する事業を立ち上げる行為を制限することです。

競業避止義務の法律の規定は対象者によって異なり、取締役や支配人などに対する競業避止義務は会社法や商法によって規定されています。

ただし、一般社員の競業避止義務を直接、規定するものはなく、在職中の社員は労働契約の締結によって信義則上、「誠実義務を負う」とされているだけです。

「誠実義務」とは企業の名誉、信用、財産上の利益などを害する行為をしないという義務です。

労働基準法・労働契約法には競業行為を直接禁止する定めはなく、競業避止義務や秘密保持義務は誠実義務に含まれています。

そのため、企業側は競業避止義務に関する特約の締結や就業規則への規定などが必要です。

取締役の競業避止義務について

会社の経営戦略や技術など、重要な情報を知る取締役が競業行為した場合は、会社の損失は大きくなります。

そのため、取締役にとおいては、会社法356条1項1号「事業の部類に属する取引」により競業行為が制限されています。

競業避止義務を就業規則で課すことは可能か?

競業避止義務を就業規則に定める方法は、従業員ごとに競業避止義務について誓約書を提出させるよりも効率的です。

ただし、注意点としては就業規則により競業避止義務を課すことは不利益変更に該当する可能性があります。
  
これまで競業避止義務を就業規則で定めていなかった企業が新しく就業規則により競業避止義務を定める場合、「就業規則の不利益変更」に該当します。

就業規則により、退職後の競業避止義務・競業禁止を定めたとしても、労働契約法第9条に違反に該当してしまい無効と判断される可能性があるのです。

そのため、従業員個人に対して誓約書に競業避止義務を定めて、個別に提出させておけば、不利益変更
にはならず安心です。

在職中と退職後の競業避止義務について

在職中と退職後の競業避止義務について
ここからは、在職中と退職後の競業避止義務について就業規則で定めることができるか見ていきましょう。

在職中の競業避止義務

在職中の競業避止義務については、法律上、明文の定めはありません。

従業員は労働契約を会社と締結し、指揮命令下で労務をするため、強い信頼関係が必要です。

そのため、従業員は会社の事業と競合するようなことを行わず、会社に不利益を与えない誠実義務を負います。

会社側としては、競業避止義務について就業規則で定めて、義務違反した者に対しては、懲戒処分や賠償請求をする対策があります。

実際に日本コンベンションサービス(損害賠償)事件やキング商事事件では、競業避止義務に違反した社員に対する懲戒処分の効力が認められています。

退職後の競業避止義務。転職は可能か?

退職後の元従業員は、憲法22条・職業選択の自由により、今後はどの仕事をするか、原則的には自由です。

会社側は、元従業員が競争関係にある仕事をすることで不測の損害を被る可能性は十分にあります。

有効な対策方法としては、就業規則で退職後の対応を規定したり、入社時・退職時に競業関係の事業を行わない誓約に個別合意してもらうことが考えられます。
 
職業選択の自由に踏み込みすぎないように、期間や場所など制限を限定する必要があります。

競業避止義務契約の有効性を判断するための6つの基準

競業避止義務契約の有効性を判断するための6つの基準
ここからは、従業員と秘密保持契約を締結する「競業避止義務についての有効性」の6つのポイントをチェックしましょう。

1.守るべき企業の利益があるかどうか

競業避止義務契約は守るべき企業側の利益があるかが問われます。

例えば、不正競争防止法によって法的保護の対象とされ「営業秘密」、妥当な情報やノウハウは企業側の利益の判断とされます。

2.従業員の地位

企業が守るべき利益を保護するために、そもそも競業避止義務を課すことが必要な従業員であったかどうか問われます。

3.地理的な限定があるかどうか

営業地域(都道府県)、その隣接地域(都道府県)に在する同業他社(支店、営業所)という限定された区域があるか問われます。

地域的限定について判断を行なった判例は多くはありませんが、「地理的な制限がない」ことにより競業避止義務契約の有効性が認められた判例があります。

4.競業避止義務の存続期間

近年の判例によれば、競業避止義務の存続期間は1年以内の期間は肯定的に判断され、2年の競業避止義務期間については否定的に捉えている判例が多いです。

5.禁止される競業行為の範囲

禁止される競業行為の範囲は企業側の守るべき利益との整合性が問われています。

在職中担当した顧客への営業活動、従事する職種が限定されている場合は、有効性判断において肯定的
に判断されます。

ただし、競業企業へ転職を禁止する規定は合理性が認められないことが多いようです。

6.代償措置が講じられているか

競業避止義務を課すことの対価として、明確に定義された代償措置が講じられている例は少ないです。

代償措置として、業務進捗の奨励金の支給を理由の一つに挙げて、競業避止義務を負うことを認められた判例があります。

競業避止義務に関する判例

 
競業避止義務に関する判例
ここからは、競業避止義務に関するモデル判例を見ていきましょう。

1.フォセコジャパン事件

フォセコ・ジャパン・リミティッド事件 
奈良地判昭45.10.23 判時624-78

原告の元使用者は、冶金用副資材を製造・販売する企業です。

元労働者達は工場で製品管理を担当し、鋳造本部で販売業務に従事してから退職。

退職後に2年間の秘密漏洩禁止と競業避止の特約を結んでいましたが、退社後にすぐ同業他社に就職し
取締役に就任しました。

元使用者は各特約に違反したとして、競業行為の差止めを要求。

判決は会社の差止申請が認容され、労働者側敗訴となりました。

2.リンクスタッフ元従業員事件

リンクスタッフ元従業員事件
大阪地判平28・7・14

病院への職業紹介会社が、新入社員に入社1年で同業他社へ転職され、誓約書違反と賠償求めた事件。

競業禁止の誓約書に反して、同業他社に転職した元従業員に対して、100万円の損害賠償を要求。

大阪地裁は、在籍約1年の社員に対して3年間も地域の制限なく同業への転職を禁じ、代償措置とされる手当は月2200円に過ぎないとして、誓約書自体を無効としました。

3.成学社事件

株式会社成学社事件
大阪地裁平成27年3月12日判決

学習塾の非常勤講師が前職の塾から約430メートルの場所で学習塾を会開業し、前職の学習塾運営会社が訴訟を起こした事件。

競業避止義務の内容は、競業避止義務の範囲は教室から半径2キロ以内、競業禁止の期間は退職後2年間でした。

裁判所はこの競業避止義務条項を有効と判断し、約1000万円の支払い命令、退職後2年間は半径2キロ以内で学習塾を営業しないことを命じました。

4.デジタルパワーステーション事件

 

デジタルパワーステーション事件
東京地裁 平成28年12月19日

ゲームのパッケージやキャラクターグッズの企画販売会社は従業員に秘密保持、退職後3年間は競合他社に就職しない誓約書を提出させていました。

しかし、課長、係長らの元従業員は競合他社に転職し、商品の写真等を無断で使用したため提訴。

会社は競合他社との雇用契約の取り消しと損害賠償を求めて提訴しましたが、裁判所は会社の要求を退けました。

5.三晃社事件

三晃社事件
最高裁 昭和52年8月9日

広告代理店の会社の就業規則には、社員が同業他社に転職する場合は、通常よりも退職金が半分に減額されると定めていました。

会社は元社員が同業他社へ転職していたことが後から発覚し、退職金の半額を返還するよう訴訟。

地裁では会社の主張が認められず、高裁で一転認められましたが、最高裁で敗訴が確定しました。

まとめ

競業避止のまとめ
企業側は、競業避止義務に関する特約の締結や就業規則への規定などを検討する必要があります。

裁判においては、競業避止義務の特約を締結していても無効となったケースもあるので注意しましょう。

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