通年採用とは?求められる背景や企業が取り組むべき対策を解説

通年採用の記事
企業が年間を通じて採用活動を行うことを通年採用と言います。通年採用は欧米で浸透している採用方法。日本企業は、従来、新卒採用において時期を限定して採用活動が行われてきましたが、企業が優秀な人材を確保するためには、通年採用のような選択肢を広げた採用活動も必要になってきているのです。通年採用のメリット、取り組むべき対策を解説します。
目次

通年採用とは?

通年採用とは、企業が年間を通じて採用活動を行うことです。中途採用・新卒採用を問わず、企業のニーズに応じて採用活動を行います。

一括採用との違い

通年採用に対比されるのが一括採用です。一括採用は日本の新卒採用において行われ、毎年、春に採用活動をスタートして新卒を採用してきました。しかし、一括採用だけでは、企業が求める優秀な人材を確保できません。そのため通年採用が求められているのですね。

欧米で浸透している採用方法

日本企業において通年採用は新たな採用方法ですが、欧米では既に浸透している採用方法でした。欧米の外資系企業が日本で採用活動を行う際、一括採用に縛られずに採用していきますので、日本企業は外資系企業に優秀な人材を取られてしまう可能性があります。

経団連による新卒採用への制限

一括採用が日本企業で行われてきた理由があります。それは、経団連が学生の学業の妨げにならないよう、新卒採用時期を限定したためです。しかし、2018年に、新卒採用活動における協定への疑問提起がありました。その中で経団連は、採用に関する指針を廃止する方針を提示しました。企業が通年採用を進めるための素地が出来上がってきたのです。

通年採用が求められる背景

通年採用が求められる背景として、どんなものがあるでしょうか?4つの観点で解説します。新卒採用に比重を置いて説明します。

売り手市場で人材確保が難しい

日本の新卒市場においては学生の売り手市場となっています。例えば2020年3月卒業予定の大学・大学院生の求人倍率は1.83倍と高水準です。売り手市場の現状は、企業が内定を出しても学生に承諾してもらえず、人材確保が難しくなっていることを示します。人材確保が難しいといっても企業は優秀な人材を確保したいことに変わりありません。従って、通年採用が求められる背景として、一括採用から通年採用にシフトしたい企業のニーズがあります。

海外大卒の人材を採用できない

日本の大学と海外の大学の卒業年は違うことがあります。日本の大学は3月卒業が一般的ですが、海外の大学は12月だったり5月だったりします。そうなると、一括採用から通年採用にシフトしないことには、海外大卒の人材を採用できないことになる訳です。海外の大学で経験してきた人材を重視する企業にとっては、通年採用が求められます。

企業環境を取り巻く環境の変化

企業環境を取り巻く環境は日々変化を遂げています。グローバル化や他社によるイノベーションの脅威等、これまでの会社方針や事業展開の変更を迫られる環境で、企業は意思決定を行い、人事管理を進めているのです。そうした中で優秀な人材を確保することは企業の至上命題となります。こうした環境変化も、一括採用に拘らない通年採用が必要とされている背景です。

人材開発への比重の高まり

企業が優秀な人材を確保することは、会社方針に即して企業戦略を遂行するための手段の1つ。人材を確保し、企業は期待する人材へと育成していく必要があります。人材開発を見越した通年採用が必要とされています。

通年採用のメリット

通年採用のメリットについて、企業側・学生側それぞれについて解説します。

企業側のメリット

企業側のメリットを紹介します。

時間をかけて優秀な人材を採用できる

企業が通年採用にかける期間は通年です。一方で一括採用にかける期間は4~5か月程度と短くなっています。一括採用は短期決戦できますが、それだけに時間が少ないので学生の話をよく聞けないまま内定を出すことにもなりかねません。その点、通年採用ならじっくり時間をかけて優秀な人材を採用することができます。学生を丁寧にヒアリングして、期待する人材像とマッチする学生を採用できるのです。

留学生や外国人を採用できる

通年採用なら留学生や外国人を採用できます。ここで挙げた外国人とは、海外大学で学んでいる外国人を指します。海外大学の卒業年は違うことを説明しましたが、多様な人材に働いてもらい組織の活性化を目指す企業にとっては、留学生や外国人を採用することはインパクトになり得ます。一括採用は短期決戦なので留学生や外国人の採用は容易ではありませんが、通年採用なら可能になります。

採用予定数を確保しやすい

採用予定数を確保しやすいこともメリットの1つです。短期決戦の通年採用はライバルが多く、特に知名度が低い企業は大手企業に学生を取られてしまい、採用予定数に満たない可能性があります。しかし通年採用であれば長期間に渡って採用活動を行うことができますから、採用アプローチを駆使することで予定数を確保しやすくなるのです。

学生側のメリット

通年採用の学生側のメリットを紹介します。

学業に専念できる

通年採用なら、学生は学業に専念できます。経団連は学業に専念するために、期間を区切って採用活動を行うように企業に指針を出していました。しかし、短期決戦で企業が採用活動を行いますから、学生の就職活動を行う3~7月までの間は学業より就職活動を優先せざるを得ません。ある程度、ゆとりを持って就職活動ができる通年採用なら、学業を行いつつ企業への選考に参加することができるでしょう。

余裕を持った就職活動ができる

通年採用は企業の採用活動が長いため、学生は余裕を持って就職活動に当たることができます。一括採用は期間が短いため、企業の説明会・筆記試験・面接等の予定のスケジュール調整が難航します。通年採用なら、学生は日程調整がやりやすくなります。

通年採用のデメリット

通年採用のデメリットについても、企業側・学生側それぞれについて解説します。

企業側のデメリット

企業側のデメリットを紹介します。

採用コストが増える

通年採用は年間を通じて採用活動を行っています。そのため、トータル的な採用コストが増加します。メディアへの広告や合同説明会の回数が増えたり、自社ホームページやSNSを通じた採用活動の負担が増したりします。採用担当者は採用だけに専念していない場合がありますから、その場合は人件費の増加にも繋がります。

有名企業に勝てるとは限らない

一括採用は採用時期が集中するために、有名企業に学生を取られてしまうリスクがあります。その点、通年採用は時間をかけられますから一括採用よりは、学生からの知名度が低い企業にも採用しやすくなっています。ただ、通年採用は無敵のツールではないので、ロクに戦略も練らずに通年採用をやっても、有名企業に学生を取られる可能性があります。しっかりと採用戦略を練らないで通年採用に飛びつくと、有名企業に勝てるとは限らないということはデメリットとして考えておく必要があります。

学生側のデメリット

学生側のデメリットを紹介します。

就職活動の難易度が上がる

学生側のデメリットは多くありませんが、通年採用は就職活動の難易度が上がることが言えます。企業が時間をかけて選考しますから、短期決戦の一括採用と違って採用基準に適合するか否かをしっかりと見られてしまう訳です。学生のライバルもそれを見越して就活に励みます。従って、通年採用の企業に挑む学生は、企業研究は元より、志望動機や業界研究等に時間を割いて取り組む必要があります。

通年採用で成功するための対策

企業が通年採用で成功するための対策を解説します。

採用戦略を見直す

採用活動の時期が限定されていた一括採用と異なり、通年採用は通年で採用活動をし続けます。従って、これまでの新卒採用における採用戦略を変える必要があります。採用のKGIはどのように設定するのか、またそれを達成するためのKPIをどうするか等、通年採用に変わったことで既存の採用戦略で見直せる余地は多くあります。

新卒採用の他社の動向に注意する

新卒採用の他社の動向に注意することも大切なポイントです。一括採用では有利に立てていた大企業が、通年採用ではベンチャーやスタートアップ等の思わぬ相手に苦しめられることがありますし、その逆もあり得るのです。

優秀な人材を確保するためのITツールの活用

優秀な人材を確保するためのITツールの活用も必要です。通年採用は採用担当者にとって期間が長いですから、ITツールを使ってPDCAを回しきることが求められます。また、面接官の人間的な観点ではなかなか知り得ない学生の能力を見抜くAI面接も、通年採用では有効になってきます。

まとめ

通年採用は、売り手市場による人材確保の難しさ、企業を取り巻く環境の変化等により、優秀な人材を確保したい企業にとって、必要な採用手法となっています。経団連が通年採用を後押ししたこともあり、日本企業においては、新卒・中途を問わない通年採用が増加していく可能性を秘めています。

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