完全失業率とは?
完全失業率労働力人口に占める完全失業者が占める割合のことです。労働力人口とは15歳以上で労働意欲がある人の数です。また、完全失業者とは仕事がなく就職活動をしている失業者のことを言います。仕事がなくても就職活動をしていなければ、完全失業率には含まれません。
総務省が毎月発表
完全失業率は総務省が労働力調査によって毎月発表しています。ニュースで耳にするのは、総務省の発表に基づくものです。完全失業率の調査方法としては、全国で無作為に抽出された40,000世帯のうち労働力人口の対象となる15歳以上の人に対して、就業の可否を尋ねています。総務省は、調査票を世帯に配布・回収することで完全失業率を把握しているのです。
完全失業率の意味合い
完全失業者とは仕事がなく就職活動をしている失業者のことでした。つまり完全失業率が高いと、職探しをしている失業者が多いということを意味します。
完全失業率と有効求人倍率の違い
完全失業率と似た用語に有効求人倍率もあります。どんな違いがあるかを解説します。
完全失業率は失業に関する経済指標
完全失業率は失業に関する経済指標です。完全失業率が高いと就職活動中の失業者が多いことを表します。仕事を探しているのに職に就けない失業者がいるのですから、景気が悪いことを示すと言えますね。また、完全失業率が高いことで、企業も人件費に経営資源を割けないため、採用活動を控えていることも読み取れます。完全失業率を見ることで、失業に関して、景気動向が分かる経済指標となります。
有効求人倍率は求職に関する経済指標
有効求人倍率は求職に関する経済指標です。有効求人倍率は、求職者1人に対して企業からの求人がどれくらいあるかを示します。有効求人倍率の基準は1です。1よりも有効求人倍率が大きいか、あるいは小さいかによって求職者1人あたりの求人の量が分かります。1より小さければ求人が少なく、1より大きければ求人が多いことになります。有効求人倍率は求職に関して、景気動向が分かる経済指標ということです。
完全失業率と有効求人倍率の違いは、定義や目的とするところも違いますが、いずれも景気動向を示す経済指標となることは同じですね。
日本の完全失業率の推移
日本の完全失業率の推移をたどってみましょう。最近10年間の推移、そして推移から読み取れることを解説します。
最近10年間の推移
日本の完全失業率の最近10年間の推移を紹介します。2008年の完全失業率は4.0%でしたが、リーマンショックによる不景気で2009~2010年の完全失業率は5.1%と大きく上昇しました。
2011年以降の完全失業率は低下傾向を示し、2014年には3%台まで下がりました。更に、2017年には2.8%、2018年には2.4%まで完全失業率は大きく低下したのでした。2012年から景気回復期間が続いたことから完全失業率の低下に繋がったのです。
完全失業率の推移から読み取れること
日本の完全失業率の推移から読み取れることは、景気の動向と共に完全失業率は推移していくということです。不景気になれば完全失業率が5%台まで上昇しますし、逆に景気回復に移れば完全失業率は低下傾向を示していくのです。完全失業率が経済指標ということがよく理解できますね。
完全失業率が高いとどうなるか
完全失業率が高いと景気が悪くなっていることを示します。具体的に失業者にどんな影響を及ぼすか、事例を元に解説します。
就職活動で内定がもらえない
完全失業率が高いと、失業者が就職活動を行っても内定を得ることができません。1人の採用枠に多くの失業者が集まれば内定を得られる確率は低下します。不景気になると能力が高い人材が失業することもあります。能力が高い人材と採用枠を争えば、それだけ採用される確率は下がってしまう訳です。
希望する就職先で働けない
完全失業率が高いと、希望する就職先で働けない可能性があります。完全失業率が高いということは企業の業績も悪いので、採用を抑制します。例えば、法務として実務経験を重ねてきた人が就職しようと思っても、法務職の求人が少ないのです。
さらに、法務の求人が出てくるのを待っている間も失業中なら無収入。ハローワークや人材紹介サービスから「求人枠が広い職種」を紹介され、生活のために希望しない就職先で働かざるを得ないこともありますね。
また、せっかく法務経験を積んできたのに畑違いの職種で働いたとしても、肌に合わなくて短期間で離職し失業することもあるでしょう。そうなると、短期間で離職したことを理由に、次に法務職の求人があっても採用されません。完全失業率が高いのですからライバルにも能力が高い人材が出てくる可能性もあります。結果的に、完全失業率が高いことで、ますます希望する就職先で働けなくなっていくのです。
正社員として働けない
完全失業率が高いと企業は採用を抑制します。業績が悪い企業は人件費を削減しようとするため、人手不足に陥っても簡単に解雇できない正社員を雇うことにリスクを感じてしまうのです。そのため仕事を探しても正社員としての就職先が限られます。希望する職種はあるけれど、雇用形態が非正規社員ということも。
非正規社員は正社員に比べて雇用が不安定であり、賞与の支給額が少なく昇給や昇格も容易には見込めません。景気が良ければ失業者も雇用形態を選ぶことができます。しかし、完全失業率が高いと、失業しているよりは良いので非正規社員として就業する選択する人も出てきます。雇用の不安定さ、処遇の悪さがあっても非正規社員として就業せざるを得ないのです。
デフレーションになる
マクロ経済学では、フィリップス曲線により物価が下がると失業率が上がると説明します。つまり完全失業率が高い状態は、デフレーションを招いているということなのです。デフレーションだと企業の製品・サービスも高い価格で売れませんから、人件費の抑制に繋がり完全失業率の上昇を抑えきれないのですね。
完全失業率を見る時の注意点
総務省が発表している完全失業率。完全失業率を見る時の注意点を説明します。
就職活動をしなかった人は含まれない
完全失業率の定義をおさらいしましょう。完全失業率とは、働力人口に占める完全失業者が占める割合のことでした。そして完全失業者とは、仕事がなく就職活動をしている失業者を言います。ということは、完全失業率には就職活動をしなかった人は含まれないということです。
例えば、学生や専業主婦とは違い、就職する気持ちはあるのに企業の選考に落ち続けて就職活動を諦めてしまった人がいるとしましょう。完全失業率の定義からすれば、就職活動を諦めた人は完全失業率に含まれない訳です。しかし、就職活動を諦めた人も失業者であることに変わりないので、完全失業率には、潜在的な失業者を除外しているとことに注意が必要です。
少しでも仕事をした人は含まれない
完全失業率の計算には、少しでも仕事をした人は含まれません。つまり、労働力調査の期間中にたまたま日雇いのバイトが入った失業者は、完全失業率の計算からは除外されるのです。たまたまバイトが入った失業者も、潜在的な失業者なのですが完全失業率の計算から除かれていることにも注意が必要です。
まとめ
完全失業率とは、労働力人口に占める失業者の割合です。完全失業率は失業に関する経済指標で、完全失業率が高いと企業の業績が悪くなり、採用を抑制していることが分かるのです。完全失業率の推移からは、日本の景気の動向と完全失業率の推移とのトレンドが読み取れました。