近年、若手人材を新卒採用しても、早期退職してしまうケースが急増しています。
ゆとり教育で育った若手人材は、辛い労働環境を我慢するくらいならば転職すれば良いという思考を持つ傾向にあります。
企業にとっては、勤勤続平均年数の低下は企業のイメージダウンやコスト増にも繋がるので避けたいところです。
そんな若手社員・新人の早期離職率の高さに頭を悩まされる企業が取り入れたいのが「メンター・メンティー制度」です。
今回は、入社後の定着率を上げるための「メンター・メンティー制度」の導入メリットやデメリットをご紹介します。
メンターとは
メンターとは、英語のMentorが語源であり、仕事や人生をより良く導くための指導者・支援者・助言者を指しています。
ビジネスにおける「メンター制度」とは、先輩社員が新入社員や部下に対して、日々の業務や精神的なサポートをする意味があります。
近年のグローバル化や少子高齢化など、働く環境が変わりつつあり、社会人経験が浅い若手社員は、ゴールや目標が見えないことが多いのです。
そこで、人材育成手法として先輩社員かメンターとなって指導や助言をする「メンター制度」が注目されています。
新入社員や若手社員に関わらず、起業など新たなことにチャレンジする人たちにとって「メンター制度」が大いに役立ちます。
メンターとメンティー
「メンター」とは、指導や助言をする人のことを指し、一方でメンターから指導や助言を受ける人のことを「メンティー」と言います。
ビジネスにおけるメンター制度においては、先輩社員がメンターであり、新入社員・部下がメンティーとなります。
メンターの役割
メンターの役割は、メンティ一が抱えるそれぞれの課題に対して支援をして、状況に応じて解決することです。
▼メンターの主な役割
目標やゴールを明確化する
目標やゴールに対して現状を把握する
今後必要な行動計画を立案する
行動に対する行動支援、アドバイスをする
メンティのロールモデルとなる
課題や問題に直面した時のモチベーション維持、メンタル面のサポート
コーチ・チューターとメンターとの違い
メンターは若手社員や新入社員の指導者的な存在になると分かりましたが、コーチ・チューターとは何が違うのでしょうか?
▼コーチの特徴
対象者が自発的に行動できるような支援をする
付きっきりのアドバイスはせず必要なときのみ助言する
業務やプロジェクトなど短期的な支援をする
対象者は目標が明確である
目標に対する行動を支援をする
▼チューターとは
社員が会社で業務する上での身近なアドバイザー
一般的に同じ職場の人が担当する
業務に関わる指導やサポートする
▼メンターとの違い
メンターは対象者の目標設定も含めて支援する
メンターは仕事や人生など中長期的な支援をする
メンターは行動、価値観、精神面、使命感、悩みを支援する
メンターとは目標やゴール設定から指導して、業務だけでなく精神的なサポートまで、幅広い役割を果たしています。
メンターは社内外にこだわず、豊かなビジネス知見に基づいて、より広い視野から導く存在となります。
メンター・メンティー制度のメリット
ここからは、企業がメンター・メンティー制度を導入するメリットを見ていきましょう。
メンターは、メンティの話を聞いて状況を把握し、自発的な行動を促すため、リーダーとしての指導力が身に付きます。
ロールモデルとして自身の考え方や行動を示し、コミュニケーション能力の向上、チームの重要性も理解が深まるでしょう。
メンティが育つとチーム全体が成長して、最終的に業務の成果を出しやすくなるのがメリットです。
メンター・メンティー制度導入にあたっての課題
社内でメンター・メンティー制度を取り入れる場合、メンターの選定には注意が必要です。
メンターには、メンティーにとって話しやすい性格、親しみやすい性格、尊敬できる性格、実務経験が豊富、優れたコミュニケーション能力が求められます。
実務経験が豊富でスキルがあれば、誰でもメンターになれる訳ではなく、豊富な人生経験を積んでいる人が適しています。
人の気持ちがわかり、新人時代には同じ思いをして苦労し、それを乗り越えた経験があり、失敗や苦悩を乗り越えて成功した人物です。
企業におけるメンター制度は、身近な存在である必要もあるため、多くの場合は職場の上司、業務経験を積んだ若手社員、もしくは社外の専門家が担当します。
メンターの育成
メンターとなる人物は、若手社員の育成と定着率アップを目的に指導を行います。
メンターとなる先輩社員は、若手社員のメンティーにビジネスの成功体験談を語ることで、「自分もきっと成功できる」「近づける」とイメージが形成できるようになるのです。
メンターのリーダーシップ力が向上できる環境が求められるため、人事担当者はメンター育成も注力していきましょう。
メンターのフォロー
企業でメンター制度を取り入れる際は、人事担当者もメンターをフォローする姿勢が求められます。
メンターとメンティーとの信頼関係が浅い状態でメンターに認定された場合、プレッシャーと業務の負担になることも。
メンティー側としても、仕事の悩みや将来のキャリア設定といった深刻な話をすぐに語るのも難しいでしょう。
特に仕事内容や人間関係に対して悩みがあり、転職を考えている社員にとっては、メンターそのものが不要な場合もあります。
メンター制度の導入にあたり、人事担当者ができることは、メンター向けに研修を実施してフォローすることです。
メンター制度の意義・目的・役割を伝えて、コミュニケーションスキルを習得する研修を実施すると効果的です。
メンターとメンティーの相性の問題
上司と部下の信頼関係が築かれていない場合、メンター制度は双方にとってストレスを感じるでしょう。
メンターとメンティーの相性が悪い場合は、目標やゴールに向かって努力する気持ちになれず、業務に悪影響が出ることも。
メンターとメンティーをペアリングする際は、人事担当者が日頃の人間関係が円滑かどうか把握して、個性を見極めることが大切です。
メンターの業務が忙しすぎる場合は、面談日を設定するなど対応して、人事部のサポートや環境を整えることも重要です。
メンター選定について
企業がメンター制度を導入して、メンターを選定する場合は、
新入社員の近い部署に在籍している先輩社員が選ばれることが多いです。
年齢や社歴の近いと新人社員の身近なメンターとして、上手く機能しやすいのでおすすめです。
メンターに向いている人
メンターに向いている人は、部署の上司、業務経験を積んだ若手社員、社外の専門家が適しています。
上司がメンターとなる場合は、チーム全体の団結が強まり結果を出しやすくなるのがメリットです。
ただし、上から目線の指示や命令が多くなるとメンティの自発性を損ねる結果となるので注意が必要です。
業務経験を積んだ若手社員がメンターになる場合は、指導力やメンタリティを養えるメリットがあります。
メンティーとの年齢が近いため、上下関係に甘さが出て上手く機能しない場合があるので注意しましょう。
社外の専門家をメンターに設定した場合は、客観的な立場からの専門的な支援を受けられるメリットがあります。
デメリットとしては、コストや機密保持などの課題もあるので対策が必要です。
メンターの資格
メンターになるために特別な資格はありませんが、民間団体が発行している認定資格はいくつかあります。
例えば、国際メンターシップ協会のメンター認定資格、日本メンター協会のメンター認定などが挙げられます。
メンターになるには、幅広い経験や能力が求められ、有益な助言を与える存在にならなければなりません。
メンター制度においての人事担当者の役割
人を育てる企業風土がない環境の場合、メンター制度を導入しても上手く機能しない可能性があります。
人事担当者は、まずはメンター制度の意義や必要性を社内で共有していくことから始めましょう。
メンター制度を導入後も効果的に実施できているか、随時チェックすることが大切です。
まとめ
メンター制度を導入すると、新入社員の定着率アップ、早期退職を防ぐことができます。
メンターはリーダーとしての指導力、客観的に観察する能力が身に付き、チーム全体が上手く作用するようになるのです。
メンターがストレスなくメンタリングできるようにするためも
人事部のフォローが求められます。