生産年齢人口について
まずは、生産年齢人口がどのようなものなのか、その概要から確認していきましょう。
生産年齢人口とは
生産年齢人口とは、15歳以上65歳未満の人口のことです。年齢別人口の中でも、生産活動の中心を担う年齢を指します。
生産年齢人口と労働力人口の違い
生産年齢人口と似た言葉に「労働力人口」というものがあります。労働力人口とは、生産年齢人口の中でも働く意思とスキルを持っている人口のことです。逆に働く意思やスキルのない人は「非労働力人口」と呼ばれます。
労働力人口の中には、すでに就業して働いている人もいますが、完全失業者もいます。労働力人口は就業者と完全失業者の合計ということです。
ちなみに、2018年度の調査では、労働力人口は就業者6,681万人、完全失業者166万人の計6,847万人となっており、非労働力人口は4,243万人となっています。
生産年齢人口の推移や予測
生産年齢人口は毎年変化しており、これから先もさらにその推移が大きく変わっていくことが予想されています。これまでの推移とこれからの予測について解説します。
生産年齢人口は減少している
日本の生産年齢人口は、戦後以来増加を続けてきました。ピークを迎えたのは1995年で8,726万人でした。しかし1996年以降は減少に転じ、2015年には7,728万人となり、20年で約1,000万人が減少していることになります。1990年台半ばまでは生産年齢人口は日本の総人口の7割近くを占めていましたが、2015年時点では、約6割となっています。
この減少はこれから先も続くと予想されており、出生率や死亡率に特段変化がなければ2036年には生産年齢人口が6,200万人になり、2050年ごろには5,000万人を下回り、2065年には4,500万人になるとされています。
日本と海外の違い
世界的に見ても生産年齢人口が減少傾向にあるのは同じです。日本だけの問題ではありません。しかし、日本の減少ぶりは他の国と比べてかなり深刻であると言えるでしょう。
日本をはじめ、主要国でも高齢化が進み、生産年齢人口は減少していますが、人口に対する高齢層の割合が2016年時点で世界の主要国は約13%であるのに対して、日本はすでに21%となっています。また2040年でも、世界はまだ15%ほどなのに、日本は27%と世界との差がどんどん広がってしまっています。
生産年齢人口の減少による影響
では、生産年齢人口が減少すると、どのような影響があるのでしょうか。1つは働き手となる年齢層が少なくなるため、その国の経済や労働市場の縮小につながる可能性がある点です。また、高齢者が増えることによる社会保険の負担も増加するでしょう。
現在日本にある年金や健康保険制度は人口が増加している社会の中で作られたもので、経済や人口がこれから発展・増加していくことを前提としています。しかし、現在はその逆の状態にあるため、これらの制度の見直しも必要になってくるでしょう。
生産年齢人口が減少することへの対策
生産年齢人口はすでに何年も前から減少しはじめていることもあって、減少に対する対策なども考えられています。どういったものがあるのか、解説していきます。
女性や高齢者の活躍
生産年齢人口の減少に対する対策として盛んに議論されているのは、女性や高齢者の活用です。女性の場合、出産や育児で職場を離れることになる30代や40代の女性が働けるように環境を整備することで労働力を補うことができます。
実際に女性の活用に関する対策はすでに行われており、労働力は高まっているそうです。ただし、これから先女性の活用を進めることで一気に労働力人口を増やすことができるかというと必ずしもそうではありません。
そこで、活躍を期待したいのが高齢者の存在です。高齢者はこれからますます増えていくことが予想されるため、活用することで労働力不足解消の手助けになると考えられます。
外国人の採用
女性や高齢者の他にも外国人の活用も生産年齢人口減少の対策となります。日本では移民の受け入れはあまり行われていませんが、移民や外国人留学生などを積極的に活用することで労働力不足をカバーすることができるでしょう。
生産性の改善(ITの活用など)
生産年齢人口の減少対策は何も労働力を増やすことだけではありません。少ない労働力でも生産性を向上させることができれば、労働力不足を補うことができます。例えば、近年では簡単な業務を自動化することができるRPAやAIといった新しい技術が注目を集め、すでに少しずつ実際の業務に導入されはじめています。また、インターネットやテレビを活用した会議を行えば移動時間やそれにかかる経費などをカットすることができますし、チャットツールを活用すればかしこまったメールを作成する時間をなくすことができます。そのほかにもリモートワークやフリーアドレスなど働く環境の最適化を図ることでより従業員の生産性を向上させることもできるでしょう。
他にもまだまだある。生産年齢人口減少への様々な対策
ここまで紹介したもの以外にも生産年齢人口減少への対策はたくさんあります。引き続きどのようなものがあるのか解説していきます。
雇用形態による格差の是正
雇用形態の違いによって待遇差があるケースはこれまで多く見られました。現在では、それを改善しようと同一労働同一賃金の考えが徹底されようとしています。同一労働同一賃金とは、同じ仕事に従事する労働者は雇用形態に関係なく同じ賃金を支給するという考えです。現在では、非正規雇用で働く人も少なくありませんが、正規雇用との間で不合理な待遇格差を解消しようとしているのです。これが実現できれば、自分のライフスタイルにあった働き方が可能となるほか、現在働いていない人でも働きやすくなるでしょう。また、非正規雇用労働者のモチベーションがアップし、仕事のパフォーマンスが向上することも期待できます。
潜在的労働力にも目を向ける
女性や高齢や外国人以外にも潜在的な労働力はたくさんあります。例えば、完全失業者や非労働力人口の中で就業希望の人、さらにすでに就業している人の中でも仕事を今よりも増やしたいと考えている人などが挙げられます。近年では副業を解禁する企業も増えてきているため、ジレまでよりも労働力がさらに増やせる可能性があります。
仕事の内容や労働条件の改善など
基本的な部分ですが、従業員が楽しみながら働ける、やりがいを感じながら働ける環境を用意することも非常に重要なポイントです。当然ですが、激務で薄給な仕事で働きたいと思う人は、特別な理由がない限りほとんどいないはずです。そのため、仕事内容や待遇面を改善するだけでも、労働力を確保することができるはずです。
まとめ
今回は、生産年齢人口の概要と推移、減少することに伴う影響やその対策などについて解説しました。日本をはじめとして世界各国で生産年齢人口は減少しています。中でも日本はその傾向が顕著であり、労働力の確保などは大きな課題だと言えるでしょう。こういった事態を解決するためには、女性や高齢者、外国人、さらには潜在的な労働力をもった人などを積極的に活用していくことが重要です。